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皇后クラリティア

カレンには2人の母親がいた。

産みの親セーラと育ての親クラリティアの2人だ。

セーラはいわゆる産後の肥立ちが悪いというやつでカレンを出産後、ずっと体調を崩しており、快方に向かう事は無かった。

宮廷にいる優秀な医術士や回復士が手を尽くしたが、その甲斐なくカレンが産まれてから1か月程で亡くなった。だからセーラの事は覚えていない。


普段から人望が厚く、人気の高かった事もあってセーラを失った国民の悲しみは大きかった。

特に愛妻を失ったオーライン皇国王の落ち込みは酷いものだった。とても仲の良い夫婦だっただけに誰もが無理のない事と受け止めた。

そんな皇国王を支え続けたのがセーラの側近で、上級回復術士でもあったクラリティアだ。

皇国王はクラリティアの献身的な態度のおかげもあって少し時間はかかったが立ち直った。

そして喪が明けた1年後に後妻に迎えられた事で、クラリティアは正式にカレンの2人目の母親になった。


クラリティアは娘となったカレンに厳しく接した。

性格の不一致やいじめといった低レベルの話とは違う。

セーラが亡くなる直前にクラリティアへ残した遺言が「カレンを皇女として恥ずかしくないよう厳しく育てるように」だった。

クラリティアが後妻に入る事までセーラは想定していなかっただろう。クラリティア自身も同じだ。

頼むに()るのがたまたま側近の中で最も信頼している彼女だけだったのだが、とにかくクラリティアはこれを非常に重く受け止めた。

カレンより3歳下のアコーダが産まれた事で、余計にカレンを実の娘と思って厳しく、遠慮などしてはいけないと考えるようになる。


クラリティアにしてみれば、偽りのない愛情だったのだが、カレンに上手く伝わらなかった。

継母だから自分に厳しいのだ。自分の事が好きでないのだ。そんな風に受け止めてしまっていた。

逆に、身籠ったセーラがどれだけカレンを愛おしく想い、誕生をとても楽しみにしていた事を周囲から聞かされる。

決して他意はなかったが結果として、物心の付く前に亡くなった実母への情念と懐古が、カレンのクラリティアに対する反発の感情を一層強めてしまう。


双方の心情を理解していた皇国王は関係修復に力を尽くすのだが、残念ながら改善には至らなかった。

1度掛け違えたボタンを直すきっかけをつかめないまま2人の関係は(いびつ)なまま時は過ぎていった。

皇国王の事をカレンは「父様(とうさま)」と呼ぶが、クラリティアの事を「母様(かあさま)」とは呼んだ事がない。

もっぱら皇后様もしくはクラリティア様と呼んでいた。


前皇后のセーラがカレンの仲で唯一の母親といえる存在だった。

それを口に出した事は無く胸に秘めていたが、周りの者は皆気付いていた。

そのくらいカレンにとってセーラの存在は大きかった。

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