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準備

4日後にパレードと即位戴冠式が行われるがそれまでの3日間、町中は喪に服して静かだった。

店舗は休業にこそしなかったものの店内BGMを始め、流れてくる音楽は皆無。夜になっても派手なライトアップは自粛して最低限の照明で営業していた。


(俺には無茶を言われたという思い出しかないが、皆が素直に喪に服しているところをみると、結構先代の皇国王は慕われてたんだな)

ギルバード的にはドラゴニック討伐を無茶振りされた結果、パーティーの仲間が壊滅の憂き目にあった為、良い印象はなかった。


喪中のカレンとアコーダはというと目が廻りそうなくらい多忙を極めていた。

戴冠式のリハーサルを(おこな)いながら、衣装のサイズ合わせ。(新たに仕立てるには3日間では間に合わない為、元からある儀典用の衣装を仕立て直した。それでも仮縫いには時間が取られる)

時間がもったいないので祝詞(のりと)の暗唱も並行して実施した。


宮廷の方でも準備は進む。

検討の結果、パレードの御料車にはアコーダとカレンに加えて、バラキューダスとハイウエ・グランディエルの重臣2人も同乗する事に決まった。

理由を平たく言うと貫目の不足。アコーダとカレンについて、名前を知っていても、顔は見たことがない国民が大多数である。(カレンは勇者候補でもあるので、まだマシ)


なによりカレンは14歳、アコーダは11歳。正統な後継者である事に疑う余地はないものの、国の舵取りをする指導者として不安に感じられてしまう可能性がある。

名の知れた重臣2人を土台に据える事で安定感と重みをつけるのを狙ったのである。


グリフォンとアルジョン、それにギルバードたちも準備を進める。

パレード時のシフトやフォーメーションの検討や確認。装備品の補充やメンテナンスなど、こちらも3日間では十分とは言えないが、出来る限り準備に努めた。

 

新皇国王誕生に向けて忙しなく前進を始めた一団だったが、未解決で停滞したままの事案も1つ残っていた。

依然としてクレストルが眠ったまま目覚めていないのだ。

安静にしていれば、そのうち目覚めるだろうと当初はどっしり構えていたギルバードもさすがに焦りを感じていた。

 

<護衛に関する作戦会議>


グリフォンの7人、アルジョンの6人、それにギルバード、カーク、カローラン、プレセア、ソアラの計22人が集まってパレードの護衛に関する作戦会議を(おこな)っていた。

 ※ アコーダとカレンは基本的に馬車に乗って手を振るだけなのと、とにかくリハーサル他で忙しいので会議には不参加

 ※ グリフォンのメンバー:チェロック・ジーフス(リーダー)、ゲード・レネ、イプス・ネオン、ピーテ・カプリ、クロスファー・アクレイ、グラディエ・グランド、コンパス・ラング

 ※ アルジョンのメンバー:アスカ・イース(リーダー)、ミュウウィ・ザライブ、ジェイミ・クーパス、ベレル・フィリ、ラミオ・ガークロス、アン・フォーリア


コンパ「やっぱ条件が悪すぎるだろ、これ」

整理する為、どこからか持って来た黒板にチェロックが状況を書き込んでいくのをみて、コンパスが口を挟んだ。

御料車(ごりょうしゃ)(パレードを行う馬車)は(ほろ)無しのフルオープン

・アコーダとカレンは顔が分かるように兜は無し

・馬車を見下ろせる建物がいくらでもあって狙撃のし放題

・護衛の宮廷騎士たちの中にも敵がいる可能性アリ


ゲード「ブックメーカーの倍率が酷い事になりそうだな。これ賭けが成立するかな?」

アン「2階建て以上の民家は全て御料車より高所になるサ。パレードを窓から観る人たちも多いだろうから、それに紛れて狙撃されるとつらいサ」

ベレル「間者(かんじゃ)が紛れ込むんだったら、いっそ宮廷騎士の護衛は無い方がマシなんじゃね?」

クロス「同意見だが、しかし護衛から騎士を外すのは不可能だろうな」

イプス「うーん、大勢に移動しながら見せびらかすのと守り抜くっていうのが、相反する事なんだよなー」

イプスの性格が小心翼々(しょうしんよくよく)な事もあるが、他も総じてネガティブな意見が多いのは否めない。


アスカ「良い事もあるわ。宮廷序列1位のプレセア・シャロンが馬車に同乗して魔法シールドを展開してくれる」

ミュウ「ほえー、つまりプレセアが敵の魔法攻撃をカットしてくれるのか。対魔法は考えなくて良いの?それはデカいわね」

ほえーというのはミュウウィの口癖だ。元々は驚いた時に自然と出ていた癖だが、何度も言っているうちにそれ以外でも出てしまうようになった。


チェロ「愚痴っていても始まらん。フォーメーションを考えてみようや」

アスカ「そうね。馬車に乗るのは、アコーダにカレン。対魔法としてプレセアとソアラ。対物理はカークとカローランってとこかしら」

プレセ&ソアラ「分かりました」 カーク「分かった」 カロ「分かったぞい」


ギル「狙撃手が……そうだな、4人は欲しい。弓の上手い奴には馬車から少し離れたところで、周囲の動向に気を配りつつ、敵の射手を出来るだけ防いでほしい。理想は『射たれる前に射つ』だが、それはかなり難しい。だから、せめて第1波の攻撃で射角等から敵の位置を割り出して、第2波以降を射たせないようにしたい」

アスカ「敵に好き勝手をさせるなって事ね。弓の名手というならウチはジェイミとミュウウィね」

ジェイミ「オッケー!」 ミュウウィ「ほえー、弓なら任せてください」

チェロ「ウチはゲードとクロスファーだ」

ゲード&クロスファー「おう!」


ギル「他のメンバーは、俺を含めて御料車の付近をぐるっと取り囲む形で護衛してくれ。近接戦闘も()事乍(ことなが)ら、さっき言ったように対弓矢の防衛が重要になってくると思う。やむなく戦闘になった場合は1人で戦うのは避けてくれ。本当なら4マンセルか3マンセルと言いたいところだが、人が足りない。どうしてもの場合でも、2マンセルのチームで臨んで欲しい」

チェロ「チームについては分かった。……なあ、ギルバードは御料車の護衛に限定しない方がいいんじゃないか?」

アスカ「私も同じ意見。ギルバードはフリーに立ち回って全体を見ながらバランスを取る側に廻った方が良いと思うわ」

ギルバードは少し考えてから「……遊軍ってやつか。分かった、そうさせて貰う」と答えた。


チェロ「そうすると、近接護衛については、ウチからはチェロック、イプス、ピーテ、グラディエ、コンパスの5人。 アルジョンからは、アスカ、ベレル、ラミオ、アンの4人で合計9人だな」

グラデ「分かった」 アン「了解サー」 それ以外のメンバーは無言で頷いた。

 

ギル「近接護衛9人と狙撃手4人のそれぞれ取り纏めというか、司令塔を決めといた方がいいんじゃないか?」

アスカ「そうね。じゃあ狙撃班はミュウィ、近接班はチェロックにお願いしたいけど、どうかしら?」

チェロ「了解した」 ミュウ「ほえー、任されましたー」

アスカ「これでフォーメーションは固まったわね。但し、敵がどういう形で攻めてくる分からない以上、臨機応変に対応するしかないわ。場合によっては現場での変更もあり得るのでそのつもりでいてね。あとはギルバード、他に何か言っておく事はあるかしら?」

アスカがそう言うと、その場にいた全員がギルバードの方へ顔を向けた。


ギル「もし敵を見つけた時の対応なんだが……。可能な限り不殺でお願いしたい。理由は2つ、1つは慶祝の日に殺伐とした事件は好ましくない。もう1つは生かして捕えて背後関係を吐かせたい。但し、全員の安全が最優先なのは言うまでも無い。だから、あくまで可能ならでいい。もし迷ったら遠慮せずにやってくれ。警告もいらない。一瞬の躊躇が命取りになりかねないからな」


アスカ「難しい事を簡単に言ってくれるわね」

ギル「うん、不殺と躊躇せずという、ある意味で矛盾を(はら)んでいるのは承知している。

なんとかよろしく頼む」

そう言い終えるとギルバードは深々と頭を下げた。

間を置かず、プレセアとソアラも一緒に「お願いします」といって頭を下げた。


少しの沈黙の後、チェロックとアスカが口を開いた。

チェロ「しゃーねーな」

アスカ「可愛い弟弟子兼恩人と、そして仲間の依頼だしね。頼まれてあげるわ。いいよね?みんな」

「おう!」 「何とかなるわよ!」「頼まれてやる!」 皆が同時に大きな声で応えた。


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