密談 その2
男A「父上にはもう報告したのかね?」
男B「いえ、まだです。城に戻ってすぐにこちらに参りました。最初に卿へ報告に参ると約束していたでしょう」
男A「君は相手の機嫌を取るのが上手だな」
男B「世辞ではありませんよ、グランディエル卿」
男A「ファミリーネームはよしてくれ。親父と混同して良い気がしない。アクロムと呼んで呉れ給え」
男B「これは失礼しました、アクロム卿」
アコーダたちとの会談(密談)を終えて城に戻ってきたバラカーン(男B)は父バラキューダスと会う前に別の密談に臨んでいた。
密談の相手はアクロム・グランディエル(男A)。
アクロムの父はハイウエ・グランディエルでバラキューダスに次ぐ実力者。フロンテ・ネガスが討たれ、カレンとアコーダが不在で混乱する宮廷内を落ち着かせるべく、バラキューダスが最初に接触したのもハイウエだ。
アクロ「それで?」
バラカ「やはり皇女カレンは自らの即位を断って、弟に譲りました。よって皇子アコーダが新たな皇国王に即位する情勢となりました」
アクロ「ほう。今後の日程も想定した通りかね?」
バラカ「事前にお伝えした通りこれより3日間は喪に服し、4日目にパレードと即位戴冠式を行う予定です」
アクロ「冒険者たちは?」
バラカ「そちらの方もこちらからの依頼を断る事はありませんでした。よってアコーダとカレンの乗る馬車の護衛に付きます」
アクロ「では、一度にまとめて処理するにはパレードの最中が好都合というわけだ。そういえば、今回リオン・クラウンとニセンジ・シロは出陣しないで城内に留まるそうだ。先の騎兵隊とペガサス隊のダメージが思いの外、大きかったらしい。2人とも堅物でこちら側に取り込むのが難しいだろうと思っていたので好都合だな」
バラカ「つまり、城に入って即位されてしまっては手を出すのが難しくなるという事です。そうなるとアクロム卿が仰ったように狙い目はパレードとなりますが、護衛に付くグリフォンとアルジョンという冒険者パーティーは中々の腕利きたちです。侮れませんよ」
アクロ「おまけに悲劇の英雄ギルバード氏や勇者候補までが加わるのだろう?抜かりはないさ。おもてなしの為に十分な準備を進めているところだ」
バラカ「さすがです」
アクロ「フレッシュで有用な情報があるから先回りして動ける。君のおかげだよ」
バラカ「過分なお言葉を頂戴し、おそれいります」
アクロ「謙遜しなくていい。俺は君を高く買っているし、実際に力を持っている。だがいいのかね?君の父上と道を違える事になる」
バラカ「親と道を違えるのはアクロム卿も同じでしょう?」
アクロ「その通りだ(笑)。皇国王も代替わりするんだ。この機会に親父たちも世代交代すべきなんだ。俺たちの時代が来る」
バラカ「そうですね。この国にも新陳代謝は必要です」
アクロ「とにかく君にもまだまだ動いてもらう事になる。多忙を極めるだろうが、よろしく頼む」
バラカ「本来、私は諜報部門の人間なんですがね。尤も今は使者も押し付けられているなんでも屋ですが」
アクロ「実力のある人間は頼りにされるものだよ。この後、慰労もかねて一杯どうだい?良い酒が手に入ったんだ」
バラカ「ありがたい話ですが、ひとまず遠慮しておきましょう。これから父にも報告をして、パレードと即位戴冠に向けて具体的な用意に取り掛からねばなりません。酒はまたの楽しみにしときます」
アクロ「そうか。では俺も全て終えた後の君との祝杯を楽しみにしておくよ」
こうしてアクロムとバラカーンの密談は終了した。




