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バラカーン(バラキューダスの息子)

ギルバード達が幽閉されていたアコーダを救出して4日目、滞在していた宿屋に城から非公式の使者がやってきた。

使者はバラキューダスの息子のバラカーン、それをカレン、アコーダ、ギルバード、プレセア、ソアラの5人で応接した。

ギルバードのみ面識がないのだが、バラカーンは顔を見知っていた。(オーライン皇国でギルバードは有名人)


非公式という事もあってかバラカーンは従者を伴わない1人のみ。最初は詫びの言葉から始まった。

バラカ「申し訳ございません。本来であればバラキューダスが参るべきなのですが、極めて多忙により嫡子である(わたくし)が代理で参りました」

アコー「久しぶり、バラカーン」

バラカ「アコーダ様とは3年前の祝賀会で御目に掛かって以来ですので約3年振りですね」


ギル「……」

カレン「ギルバード、何か言いたそうね?」

ギル「いや……皇国王が崩御、重臣フロンテ・ネガスが落命、後継候補のカレン、アコーダが不在となれば混乱するのも無理はない。収拾にあたったバラキューダスは(さぞ)かし大変だったろうと思ってな」

バラカーンは少しだけ驚いたような顔をした。


バラカ「慧眼(けいがん)恐れ入ります。実のところギルバード様の仰る通りで、アコーダ様とカレン様が城を脱出なされてから城内は混迷を極めておりました。指導者を失って悲しむ間も無く、自分に都合の良い後継者を即位させようと画策する文官たち。再び兵器で城を攻撃されるのではないかとピリピリして緊張感を(ただよ)わせる軍人たち。それを父がやっとの事で(まと)め上げて落ち着きを取り戻し、カレン様とアコーダ様をなんとかお迎え出来る状況を整えた次第です」


攻城兵器で城を攻撃したのは他ならぬギルバードたちだ。城攻めはあくまで幽閉されていた皇子アコーダを救出する為の陽動である。救出が達成された以上、改めて攻城戦を仕掛ける事は在り得ない。従って警戒する必要も無い。

そうであっても兵たちにはそれを知る由もない。唯一騎士団長のリオン・クラウンだけは感づいていた節もあるが、カレンを気遣ってか、周囲に吹聴する事は無かった。


ギル「プライドの高い貴族や廷臣たちをよく説得出来たな」

バラカ「確かにフロンテ・ネガスの腰巾着を演じていた父を快く思わない向きはありました。ですが先代の皇国王が崩御された以上、国民のために速やかに新しい皇国王を即位させて国内安定を図るべきとの考えは共通していましたので、最終的には合意に至りました。中には、どうしても相容(あいい)れない方々も(わず)かにいましたけど」

ギル「それはどうしたんだ?」

バラカ「あまり時間もかけていられませんので、実力で排除致しました」


プレセ「もしかして、腕力に物を言わせたのですか?」

バラカ「まさか。父は文官ですから、それなりと申しますか別にも効果的なやり方がございます」

プレセ「……」

バラカーンは怖い事をしれっと言った。

ギル(別にも、か)

バラカ「とまあ、このような状況ですので、今父が城内を空けるのは宜しくないとの判断を致しました」


カレン「経緯は分かったわ。それで私とアコーダをお迎え出来るってどーゆーこと?」

バラカ「これはカレン様、お久しぶりでございます。ご隆昌(りゅうしょう)の様子で何よりです」

カレン「なにトボけた事言ってんのよ。アコーダとは3年ぶりらしいけど、アンタと私は私が城を抜け出す前日にも会ってるし、ご無沙汰は言い過ぎでしょ」

バラカ「そうでしたね。これは失礼致しました」


身体能力が高く偵察術にも長けているバラカーンは諜報部隊の副長を担いながら、家庭教師としてカレンに基礎体力トレーニングや偵察術を指南した。

元々カレンが受けていた教育プログラムにバラカーンの指南は含まれていなかった。それがバラカーンの噂をどこかで知ったカレンの強い希望により教えを受けていた。

これはかなり異例だ。実際、アコーダはバラカーンの教えを受けていない。

ギルバードへの弟子入りもそうだったように自己の鍛錬と成長に関して、カレンは相当意地っ張りで言い出したら譲らないところがある。


バラカ「ところでカレン様とアコーダ様にご決断願わねばならない事がございます」

カレン「アコーダよ」

アコー「ですが、姉様(ねえさま)……」

バラカーンが詳細を言う前に食い気味にオーライト姉弟が口を挟んだ。


カレン「以前から言っていた通りよ。私には堅苦しくて性に合わない。そんな気が少しでもあったら城を抜け出したりしてないわよ。おまけに私は勇者候補でもあるのよ。いずれは魔王討伐へ乗り出す事になるのに皇国王になったら、危険だからって止められちゃうじゃない。という訳で皇国王にはアコーダが適切に決まっているわ」

カレンが腕組みしながら言った。


バラカ「お2人が察しておられる通り、後継ぎ…新しいオーライン皇国王についてです。先程も述べましたが国内の安定を図るべく、速やかに新しい皇国王を立てねばなりません。そして新皇国王には皇女カレン様、もしくは皇子アコーダ様のどちらかが相応しいというのが、父バラキューダスをはじめ、貴族や閣僚たちとも一致した考えなのです。カレン様にその気が無いと仰るのであれば、アコーダ様にお継ぎ頂くという事でお願いしたいと存じます」


アコー「姉様(ねえさま)、本当に宜しいのですか?」

カレン「くどいわよ。父様の事は悲しいし残念だったけれど、貴方の即位を心から祝福します」

アコー「ありがとうございます」

カレンとアコーダが軽く抱擁した。


バラカ「それでは今後の日程ですが、まず直ぐにアコーダ様の名で先代皇国王の崩御を正式に国内公表、合わせて3日間喪に服するとともに4日後の即位戴冠式を執り行う事についても告知します」

 ※ オーライン皇国では皇国王が崩御した際に葬儀や告別式は行わず、国中が喪に服して故人を(しの)ぶのが通例。

カレン「急なのね」

バラカ「こういう事はなるべく早い方が良いのです」

アコー「うむ」


バラカ「即位戴冠式を行う朝に馬車でお迎えに上がります。そこからお披露目のパレードを行い、アコーダ様、カレン様のお2人はそのまま入城して頂きます」

カレン「えっ、私もなの?」

バラカ「勿論です。特に今回は先代も皇后もおられません。皇国王の姉君として、名実とも後見人となって頂く必要がございます。即位戴冠の儀に際しても、カレン様からアコーダ様に外套(がいとう)と杖と冠を授与頂きます。本来なら先代皇国王が行うものですが、これも代理での履行となります」


バラカーンが続ける。

バラカ「カレン様に後見人として即位戴冠の儀に出席頂くのは、もうひとつ意味がございます。継承候補である皇女と皇子の仲が良い事をアピールして、代が替わってもオーライン皇国が盤石である事を国内外に周知します。特に第1子であるカレン様は本来であれば筆頭継承者です。それを差し置いて第2子のアコーダ様が皇位に即く事を(いぶか)しがる声が出る恐れがあり、これを封殺します」


ギル「なるほどな。確かに姉と弟の不仲を勘繰ったり、(よこし)な考えを持つ(やから)が出てくるかもしれん。それを先んじて制したいワケだ」

バラカ「左様でございます」

ギル「狙いは理解したが、今の時期にカレンとアコーダが一緒に街中をパレードするなんて危険じゃないか?」

正直、宮廷内の揉め事には興味がない、というか極力関わりたくないと考えているギルバードだが、弟子カレンの安全に関係してくるとなれば黙っていられない。

バラカ「危険は……」

アコー「全て隠さずにお話するのだ。いや、(おれ)たちには話す義務がある」


それまで理路整然と話をしていたバラカーンが口籠っているのをみて、助け舟を出すようにアコーダが割って入った。


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