クレストル・マークチェイス
攻城戦を陽動で仕掛けているうちに、別動隊が幽閉されたアコーダを救出する。その作戦は成功に終わり、カレンとアコーダは再会を果たした。
お互いの無事を確認して喜んだ後、これからについて話し合った。
カレン「これからどうするか、考えはあるの?」
アコー「城にいるバラキューダスから連絡があるはず。なので、このまま待ちます」
カレン「そう、アコーダはバラキューダスを信じてるわけね。なら私もここに留まって待つことにするわ」
カレンとアコーダの2人がしばらく様子をみる事に決めた一方で、別の問題が発生していた。
今回の作戦の最大功労者といって良いクラフトマスターこと、クレストル・マークチェイスの容体が良くないのだ。
騎士団長リオンの放った槍を樹上で受けてクレストルは落下。コンパス・ラングの機転で辛うじて頭部からの落下こそ免れたものの、そこで意識を失ったまま戻らない。
攻城戦を担当したアルジョンとグリフォンのメンバーは攻城兵器の爆破を見届けた後、完全撤収して宿屋に戻っていた。
クレストルの部屋は2階。
プレセアの回復魔法で肩の傷は痕が分からないくらい綺麗に治癒している。他に外見上悪いところは見当たらず、自発呼吸もしっかりしているのだが、意識だけが戻らない。
別の医術士や回復士を呼んで診せたのだが、やはり改善しない。それ以上出来る事がない一行はしばらく安静にして経過を見守る。
「ギルバードに合わす顔がないな」
クレストルの眠るベッドのそばでコンパスが呟いた。
「あんただけのせいじゃないサ。一緒にいたあたしも同じサ」
アン・フォーリアが神妙な面持ちで言った。
「大丈夫です。クレストルさんはきっと目覚めます。槍や落下のダメージだけでなく、攻城兵器の搬入設置、皆へのレクチャーなど八面六臂の働きでしたから疲労も相まって今は休息を必要としているだけです」
今度はプレセアが言葉を返した。
クレストル、アン、プレセアの3人はクレストルがリオンから攻撃を受けたその場にいただけに、責任を感じていた。
少しすると、オーライン城からアコーダ、カローラン、ソアラが帰着。更にもうしばらくしてギルバード、カレン、カークが無事に戻って来た。
城からの追っ手を懸念して十分に警戒をしながらの帰路だったが、幸いな事にそれは杞憂に終わる。
後で分かった事だが、指導者不在で混乱する城内の軍権をバラキューダスが掌握。
ペガサス隊や騎兵隊がやられた事に対して反撃を主張する兵たちも少なくなかったが、バラキューダスはいち早くペガサス隊々長のニセンジ・シロと騎士団長のリオン・クラウンの賛同を得る事で、それらも否応なくを抑えこんだ。
フロンテ・ネガスという重石が取れた後のバラキューダスの立ち回りは見事なものだった。
「プレセアでもダメなのか」
クレストルのベッドの傍でギルバードがプレセアに尋ねた。
「力が及ばずですみません。回復魔法が効かない、というか傷は治癒しているはずなんです。ですが、意識だけ戻らなくて……」
プレセアが申し訳なさそうに答えた。
「いいや、今回の作戦でプレセアは本当に良くやってくれた。特にペガサス隊の撃退は圧巻だった。クレストルが攻撃を受けた時の処置も迅速で完璧だったと聞いている。本当にありがとう」
「あれはギルバードさんの作戦通りに動いただけですから……」
「医術士や回復士にも診断して貰ったが悪いところは無いらしい。となると今は目を覚ますのを信じて待つだけだな」
「はい」
2人は改めて眠っているクレストルの顔を見たが、やはり反応は無かった。




