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尋問

カレン、カークの2人から別人の声が発せられるようになってから戦闘は一時休戦。会話、というか尋問が行われていた。


「ここは君が本来居るべきところではないだろ?」

「フロンテなる人物に召喚さレて、誓約のカメオの力で仕方なく従っておりまシた」

「こんな装飾品1つで、悪魔の使い人とか最悪のNだとか大層な呼ばれ方をしていた割に情けないんだね」

「………」

ギーブイがバツの悪そうな顔となり、誓約のカメオを付けていた時のように黙ってしまう。


「貴方様の正体は一体……?漏れ出る魔力の波動に微かに覚えがあるのでスが、如何(いかん)せん少年と少女のお姿に困惑してしまってお思い出せないノです」

気を取り直してギーブイが尋ねた。

「正体か、それはじきに分かる。それよりまだ君に聞きたい事がある。ロープロスは今どうしてる?」

「ロープロス?もしかして魔王のロープロス様の事でしょウか?」

(くせ)なのか、ギーブイがまた質問に質問で返すが、諦めたのかカレン、カークはもう触れなかった。


「そう、カース・ロープロスの事だよ」

「ロープロス様でしたらご存じかも知れませんが、先代魔王が人間の冒険者パーティーに倒されて以降、魔王に即位されマした」

「うん、先代魔王というとカース・ドラゴニックの事だな。それから?」


「ドラゴニック亡き後、ロープロス様の即位を認めない一部の魔物グループが反乱を起こしましたが、あっという間に粛清されました。その為、言う程の混乱は起こりませんデした」

「ほう、大して混乱は起きなかったか。流石だな」

「ハ?」

「いや、なんでもない。続けてくれ」


愚人(ぐじん)は即位されてから1度だけ拝謁(はいえつ)致しましたが、厳威(げんい)と凶悪が共存されている立派なお方でした」

「ハハハ、厳威と凶悪で立派か。ギーブイ君は面白いね。


こんな調子で、単なる会話というより尋問の様相を(てい)していたが、話は続いていた。

そこにようやくギルバードがやって来た。

なお、カローラン、ソアラは別行動をとっており、一足先に救出したアコーダ皇子を城外に脱出させる事を優先して動いていた。


ギルバードの方を見ながらカレン、カークが話しかけた。

「やあ、久しぶりだね、ギルバード君」

(……久しぶり?……ギルバード君? MBが探知魔法の異常検知を知らせてきたが、もしかして……)

姿形はカークとカレンだが、声色と話し方が2人のそれとは違っている様子にギルバードが(いぶか)しむ。


「悪いけど、少し待っててくれないか」

クエスチョンマークが顔に浮かんでいたギルバードへそう言った後、カレン、カークがギーブイの方に顔を向ける。


「ロープロスの事を立派と評していたが、ドラゴニックと比較するとどうかな?」

「ドラゴニック様は……在位期間が長くて強い魔王……」

「ほうほう」

「……でしタが、所詮は人間に倒されてしまうなど晩節を汚しましたし、ロープロス様とは比べ物になりマせんな」

「ほう」

カレン、カークが興味深そうに頷いている。


「ふむ、そんなところか。待たせたね、ギルバード君」

「もしかしてドラゴニックなのか?」

「あー、君には分かるのか。流石だね」

 

近くで聞いていたギーブイが「ドラ…ドラ…」などと呟きながら青ざめた顔をしているが、気にせずにドラゴニックは話を進める。

ギル「確認したい事は山程あるんだが……。まずなにより、カークとカレンは無事なのか?」

ドラゴ「ああ、意識を失っているし、一時はかなり危なかったが今は問題ない。ついでに言うと僕が引っ張り出されたのは、カークとカレンが生命の危機に瀕した事と、そこにいる阿呆(あほう)がカレンのトラウマを思いっきり(こす)ったからなんだよ」

ドラゴニックがギーブイを指差した。

 

ギル「……危機、カレンのトラウマ?」

ドラゴ「危機の方は言葉の通り、本当に危なかった。もっとも僕が出てきた事であっさり乗り切ったがね」

ギル「師匠として守る事を約束しておきながら、申し訳ない」

ドラゴ「確かに約束したね。でも冒険者である以上、避けられない事ではあるし、決して過保護を求めている訳ではない。だから気にしないでくれ。それにバラキ殿も動いていたようだしな」

ギル(バラキ殿?)

(MB:宮廷省長官バラキューダスの事と推定されます)

ギル(そうだとして、なぜドラゴニックの口からバラキューダスの名が出てくるんだ?)

(MB:不明です)

 

ギルバードの発言を待たずにドラゴニックが話を続ける。

ドラゴ「ギルバード君は知らないだろうが、カレンは母親を2人亡くしている。詳しく話すと長くなるので省略するが、2人目の母親である皇后クラリティアが亡くなったのは、ブロアーム・シャドウという魔物にカレンが操られていた事が関係している」

ギルバードは静かに話を聞いている。


ドラゴ「クラリティアが望んだ結果で決してカレンの責任ではなかったのだが……。それでも当時8歳のカレンにとっては非常に大きな出来事だった。それを知らずに、そこにいる阿呆(あほう)、ギーブイ・ヌライロは特殊なネクロマンサーでな。死者でなくとも意識が無い状態なら生者でも操れるらしい。意識を失ったカークとカレンを操る術を使って2人を窮地に追い込んだ」

ギル「つまり、過去に操られる術を掛けられてトラウマになったカレンは、奇しくも今回また人を操る敵に遭遇したってワケか」

ドラゴ「うむ」

ギーブ「……」

ギーブイは黙って聞いているが、その背筋が伸びている。


ギル(人に歴史有りというが……。弟のアコーダに対する強い思い入れといい、カレンにも色々あるんだな)

ギル「それから今更な質問かもしれないが、カレン、カークはお前(ドラゴニック)の生まれ変わりで間違いないんだな?」

ドラゴ「そうだよ」

ギル「勇者候補に生まれ変わるという話だったが、まさか2人に分かれるとは聞いてなかったぞ?」

ドラゴ「僕も驚いてるよ」

ギル「……禁呪の途中に邪魔が入ったせいなのか?」


ドラゴニックが転生の禁呪を行っている際中に、皇宮の使いで道案内のダグニエル・クラウンが火炎弾を投げ入れるなど襲撃を企てた。直ぐにロープロスがダグニエルを排除して襲撃は未遂に終わったが、一時中断するなど影響は0ではなかった。


ドラゴ「正直なところ、分からん。初めて使った術だからね。おまけに術の途中で邪魔が入った過去例も聞いた事がない。術を使用されるのが希少故に当然なのだけど」

ギル「予想はしていたが、そうかもしれんし、そうじゃないかもしれない、って事だな」

ドラゴ「多少の予想外はあってもこうやって僕は転生出来ているし、君の仲間も然り。だからまあ考えても仕方ないよ」

ギル「未だ全員を確認出来た訳じゃないが、契約はちゃんと履行されていると思う。少し話は戻るが、さっき言ったバラキ殿というのは、宮廷省長官のバラキューダスの事か?」


ドラゴ「そんな事言ったかな。それより15年振りなので積もる話もあるが、あまり時間がない」

ギルバードの問いをドラゴニックがはぐらかす。

ドラゴ「君は城から脱出しないといけないし、カレンとカークもそろそろ起きる。僕はまた眠りに就くので今しばらく勇者候補の2人を頼むよ、ギルバード君」

ギル「そうだな。なるべくドラゴニックを引っ張り出さずに済むよう心掛けるよ」


話をはぐらかされた事に引っ掛かりはあったが、今の優先事項は無事に城から脱出する事だ。ギルバードは思い直して、それ以上追及しなかった。


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