バラキューダス
大砲をクレストルたちに任せてギルバードがカレンたちの後を追う。
攻城戦の陽動によってカレンたちの行動を間接的に援助するという作戦だったが、考えようによってはカレンたちも陽動となる。
結果、ギルバードは然したる障害もなく進んでいく。
既に倒されている敵も多いため、殊更に時間が取られる事もない。
(こういうのって隠密行動とでも言うのか、自分でも意外なんだが性に合ってるかもなぁ。そう思わないか?MB)
(MB:そうですね)
MBが進化しており、ギルバードの意味の無い問い掛けに対して生返事をする事を習得していた。
(或いは美味しいところを俺が貰う事になって、後からカレンやカークに怒られたりしてな。なぁMB)
(MB:戯言はそれくらいに。敵が来ます)
敵とエンカウントした場合でも、ギルバードは物陰に隠れるなどして極力戦闘を避けるつもりだったが、今回は不可避と判断した。
幸運は敵に発見されるよりMBの探知が先だった事だ。
(敵は……後衛2人に前衛3人の計5人か)
ギルバードは思いっきり息を吸い込み、酸素を体中に行き渡らせる。そして背後から敵を目掛けてダッシュする。
近付き様にしゃがみ込み、後衛2人の脚を後ろから薙ぎ払う。
ギルバードは続け様に大きくジャンプ。
斬られた2人が「いぐぃ」「いたっ」と短い悲鳴を上げる。
残りの3人が悲鳴に反応して振り返る。同時にギルバードは宙返りで向きを反転して前衛3人の前に出る。
その結果、3人の前方に出たギルバードが背後を取る形になる。
ここまでギルバードは敵5人にその姿を認識させていない。
ギルバードは止まらない。そのまま2人に斬り掛かる。残った1人には蹴りを放ち、態勢を崩したところに投げ技で一気に勝負を決めた。
結局、戦闘らしい戦闘を行ったのはこの1度だけ。その後は敵がいても上手くやり過ごしてソアラとカローランのところまで辿り着く。
そこでカレンとカークが外壁ルートを採った事を聞かされる。
2人は律儀にそのまま残って敵がカレンたちの背後を脅かすのを防ぐ役割を担っていた。
ギルバードがカレンとカークが飛び出した窓から外を覗いてみる。そこから2人の姿は確認できない。
(城の兵士もこんなとこから後を追おうとは思わないだろうよ。よくカークも一緒に行く気になったもんだ)
「さて俺はどうしたものか。このままカレンたちの後を追うか、それとも別ルートを模索するべきか?」とギルバードが思案していると、覚えのある顔が来訪する。
バラキ「お久しぶりです、ギルバード様」
宮廷省長官のバラキューダスだった。
ギルバードとは面識があり、ソアラとは宮廷で何度も顔を合わせている。カローランも前世のカロットワーフ時代には顔を合わせた事がある。
ソアラ「バラキューダスとフロンテ・ネガスは昵懇の仲です」とソアラが小さい声で2人に囁き、警戒を怠らぬ様に促す。
バラキ「内緒話を為さらずともフロンテ殿とはよく話をしますよ。が、そんな些末な事はどうでもよろしい。私はギルバード様のご来城をお待ちしていたのです」
ソアラ「どうでも、良くはないのですが……」
カロ「怪しすぎるのう。罠か?」
バラキ「ご案内しますので、どうぞこちらへ」
ソアラとカローランが訝しむのを意に介さず、バラキューダスは手で部屋の外を指し示しながら誘導する。
カロ「案内とは?」
バラキューダスはやはりカローランの問いに応える様子がなく、外を指し示した姿勢のまま静止している。
ギル「よし、案内して貰おう。俺はバラキューダス殿の後を付いて行くが、ソアラ、カローランはどうする?2人の判断に任せる」
ソアラとカローランの2人の警戒をよそにギルバードはバラキューダスに付いて行こうとする。
ソアラとカローランが顔を突き合わせて相談をする。
カロ「カークもカレン殿も見えなくなってしもうたし、このままここに残る意味はないと思うがのう……」
ソアラ「確かにカローラン様の仰る通りかもしれません。私はこれまでの常に受け身で生きてきました。ですが、何でも飛び込んでいくオテンバ……破天荒なカレン様の近衛女官はそれでは務まらない、と思うようになりました」
ギル(オテンバを破天荒に言い直したな)
(MB:今も他人の意見に影響されており、充分受け身と考えられます)
ギル(厳しいなMBは(笑)。だが、問題意識を持って最初の1歩を踏み出すのは悪い事じゃないさ)
ソアラ「ですから、カローラン様、私たちも一緒に行きましょう。前へ進みましょう」
カロ「あい分かった。3人一緒に行くとするかのうー」
ギル「決まりだな。で、バラキューダス殿はどこに案内してくれるんだ?」
バラキ「これからアコーダ皇子のところにご案内致します」
ギル、カロ、ソアラ「!!!」
思いも寄らないバラキューダスの言動に3人は驚きを隠さなかった。




