騎兵隊 その2
オーライン城を攻撃してくる敵に反撃の鉄槌を下すべく600の騎兵が出陣した。
先頭に立って隊を率いるのは騎士団長リオン、副長クルーガス、副長リアハの3人。
物見による情報では敵拠点は3カ所。兵数は1カ所につき5人程度。
素性は知れぬ敵ではあったが、圧倒的数的有利な状況と皇国の精鋭騎兵という自負もあって士気は高かった。
城下町を出てしばらくしたところで、リオンが騎馬を停止させ、全軍に指示を出す。
「ここから隊を3つに分ける。隊長はそれぞれクルーガス、リアハ、それに私だ」
リオンは隊の全体を見渡した後、言葉を繋ぐ。
「ペガサス隊が先行しており、我々は後詰となる。続報は入って来ていないが、油断なきよう警戒を厳にして進むように!」
それまで緩徐な行進といった感じで速度を抑えて移動していた騎兵隊が、3隊に分かれたのをきっかけに疾駆を開始する。
速度を上げても乱れない隊列は練度の高さの証明。
それぞれの目的地、リオン軍は大砲、クルーガス軍は回回砲、リアハ軍は弩砲の発射拠点を目指す。
兵数の多い分だけ準備に時間を要した事に加えて、道中は整地ばかりではない。
結局、城から空を最短距離で直線移動できるペガサス隊と比べて、1時間半遅れで目的の拠点に到着した。
リオン率いる騎兵200騎が大掛かりな大砲を包囲する。先程まで使用されていた形跡はあるが、周辺に人の姿は見当たらない。
「数名、近付いて調べてみよ。他の者は周囲を警戒しながら敵が隠れていないか探索せよ」
リオンの指示で5人の兵士が警戒しながら接近を試みると、途端に「ボンッ!」という爆発音がして白煙が濛々と吹き出す。
「爆発するぞ、逃げろ」
驚いた兵士たちが叫び声を上げて距離を取る。しばらく様子を見ると白煙が止まる。爆発もしない。
気を取り直して改めて接近を試みると、まるでタイミングを計ったように図ったように爆発音が鳴り、先程より勢いが増して白煙が吹き出してくる。
兵士たちは、また驚いて足が止まる。すると白煙も止まる。一昔前のコントのような展開で時間が費やされる。
3度ほど繰り返した後、業を煮やしたリオンが「止まるな!」との命令を強い口調で発した。
馬鹿にされているように感じていた兵士たちは命令に後押しされる形で、4度目は白煙が吹き出しても足を止めない。
リオンからすれば敵を打倒か捕縛するのが1番目、今回使われた兵器の回収もしくは破壊が2番目の務めと考えていた。
何しろ自軍の持つ兵器の数倍以上の射程を有するシロモノである。放って置けないのは無論、可能なら自軍の技術として取り込みたい。
リオンに覇権主義の思想はない。一方で数えきれない程の人や魔物を斬った身で平和主義を語るつもりもない。
ただ自分の周りの人間、延いては自国の人間の安寧秩序を守る。その責務が自分にはあると考えていた。
今回はどうやら他国の侵略という訳ではなさそうだが、この兵器と技術が他国に流出したら、と考えるとゾッとする。
或いは既に流出していて皇国が遅れているだけかもしれない。
強国を誇ったオーライン皇国も今は昔。特に先王が崩御なされて国内がガタガタしている現状をどうにも出来なくて歯痒い思いをしている身なればこそ、せめて敵国への憂慮を減じたい。
それが偽らざるリオンの本音だった。
勇猛な兵士たち5人は繰り返される爆発音や白煙に臆することなく、大砲のすぐそばまで近付いた時、火花が散る。
それは一瞬の事だった。




