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ペガサス隊 その2

50騎のペガサス兵が城から順に飛び立つ。

隊長はニセンジ・シロ。行く先はギルバードたちのいる大砲の方角。


「偵察に対して3か所のうち1か所だけ弓矢での迎撃無し。偶然かそれとも策略による誘引か」

皮肉を言いながら出陣を急かしたフロンテの顔がニセンジの頭に浮かぶ。

(罠であったとしても蹴散らせば良い。行くしかないのだ)

そう自分に言い聞かせる。そして部下に不安な顔は見せぬよう心掛けた。


<磁界魔法>


「よし狙い通り、全騎こっちに向かってる。プレセアは準備を!」

「詠唱を始めます」

「城からここまで約3キロ、平均時速80キロなら135秒。到着まで残り……100秒ってところだ」

スコープで監視を続けるギルバードが実況する。

「ヘマタイトと供に有り 銀と紅の原野を駆け……」


「敵を目視できる距離まで近付いたら螺旋陣を組む。但し、規則的に成り過ぎるなよ。狙い撃ちされるぞ」

V字編隊飛行で近付いてくるのペガサス隊の先頭からニセンジが叫んだ。

「新たな(みち)を造り 磁界の薔薇を咲かせ……」


「空一面に白いペガサスの群れ……まるで巻積雲みたいで絵になるわネ」

「他は全て白馬なのに1騎だけ黒いペガサスがいるな。あれがボスかな?」

「きっとそうだネ」

大砲のそばに立っているアン・フォーリとコンパス・ラングが空を見上げながら言った。


「古の誓約と秩序を以て 虚空を押圧せよ、マグトルード」

プレセアが呪文を唱え終えると、まるでペガサス兵が磁石にでもなったかのように、2騎1組が空中で引き寄せ合って衝突する。

ぶつかった後もぴったりとくっついてしまって離れない。

 

プレセアの魔法から逃れられた敵はゼロ。衝突時のダメージに加えて、密着しているせいでペガサス兵は羽ばたく事が出来ずに次々と墜落を始めて地面に叩きつけられた。

自分たちに何が起こっているのか理解出来ない。

皇国のエリート正規兵らしい威容を誇ったペガサス兵は既に無く、「ぐえっ」「うぐぁ」「痛っつ」といった悲壮な声と無残な光景だけが残される。

(文句無しの威力なのに、敵味方をきちんと区別している精度が凄い。とんでもない魔導士になったなプレセアは)

プレセアの魔法の効果を眼の当たりにしたギルバードが思わず唸る。


不幸中の幸いと言うべきか、片方が下敷きになって落下の衝撃が緩和されたおかげで、全滅こそ免れたもののやって来た50騎のペガサス兵のうち30騎が戦闘不能に陥る。

戦闘不能を免れた者も決して無傷ではない。

隊長のニセンジも辛うじて戦闘不能とはなっていないもののダメージは大きい。痛みを堪えながら体を起こして辺りを見回して愕然とした。

(……もはや戦闘を継続できる状態にない)


「全員に武装解除するように命令しろ」

立ち尽くすニセンジにギルバードがゆっくり近付きながら話しかけた。

「無条件降伏をしろってことか?」

ギルバードの目を見ながらニセンジが言った。


「いいや、降伏はしなくていい。武装解除して貰わないと危なっかして重篤者の応急処置をさせられないというだけだ。プレセア」

ギルバードの後方にいたプレセアが「はい」と答えてニセンジに回復魔法を掛け始める。

「じっとしててくださいね」


「……条件は?」

「手当てが済んだら何もせずに城へ帰ってくれ」

唐突なギルバードの申し出にニセンジが即答する。

「分かった。応急処置をお願いする」

「判断が早いんだな」

 

「辺りを見回しても無傷の部下は1人もいない。もはや戦える状況になく、見逃して貰えるだけでも文句などない。ましてや重篤者の回復までして貰えるとなると否応はない」

そう言ってニセンジは部下に武装解除の命令を出した。

「処置が終わったら全員撤退だ。1人では動けない者がいたら手伝ってやれ。移動はゆっくりで構わない」

(戻ったら職責を問われるかもしれない。見栄もあるだろう。戦果を1つも上げずに撤退を決断するには勇気がいる。悪い隊長じゃないのかもな)

ギルバードは言葉には出さないがニセンジの人柄を評価した。


「プレセア、アン。悪いが頼む」

アルジョンから出向してきているアン・フォーリもプレセア程ではないが回復魔法が使える。

「この為にアルジョンのメンバーの中からウチを指定したのか。ギルバードはお人好しだネ」

そう言ってアンもプレセアに倣って重篤ペガサス兵に回復魔法を掛け始めた。


ニセン「応急処置の間に質問していいか?」

ギル「なんだ?」

ニセン「お前たちは何者なんだ?こんな少人数で他国からの侵略という訳でもないよな?」

ギル「どうかな。俺たちは単なる火付け役の先陣なだけで後詰が控えてるのかもしれないぞ?」

ギルバードが冗談っぽく流す。


ニセン「いや、ないな。それだったら俺たちを助けて城に戻すのはデメリットでしかないからな。皇女様の一派か?」

ギル「…………」

ニセン「という事はこっちは陽動か。今頃、城内にカレン様の別動隊がいるって訳だな」

ギル「凄いな。なんでもお見通しなんだな」


最初こそはぐらかして答えていたギルバードだったが、ニセンジのズバリの指摘に感心してしまい、正直に認めてしまう。

ニセン「悲劇の英雄に宮廷序列1位の魔導士までいると知っていたら、他にやり方があったかもな。色々気付くのが遅かったようだ」

ギル「その呼び方は止めてくれ」

ニセン「いずれにせよ、約束通り俺たちはこれで撤退する。部下を救ってくれた事には本当に感謝している」


プレセアとアンが重篤な兵士全員の応急処置を終えた後、ペガサス隊は城に戻っていった。


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