各近況 その2
<グリフォン 回回砲 近況>
回回砲の担当は冒険者パーティー『グリフォン』の6人。リーダーはチェロック・ジーフス。
ギルバードは深紅火山流格闘術の皆伝を得た後に両舷一流の剣を学び直すのだが、チェロックはその兄弟子である。
他のメンバーはゲード・レネ、イプス・ネオン、ピーテ・カプリ、クロスファー・アクレイ、グラディエ・グランド。
もう1人、コンパス・ラングというメンバーがいるが、ギルバードたちのヘルプに行っている。
細マッチョが多いので脳筋グループと思われがちだが、経験豊かで実績ある冒険者パーティーである。
回回砲は岩場近くを選んで設置してある。
弾岩については昨日のうちに両舷一流の皆伝者であるチェロックとギルバードが剣を振るって石を切り出して、数多く作っていた。
2人とも豆腐の様にとはいかないまでも、まるで大根でも切るようにスムーズに弾岩を整形していく。
「知ってるつもりではいたけど、改めてみると見事な腕前だな」
「両舷一流は石を斬るための剣術じゃねーけどな」
グラディエに褒められたチェロックは謙遜して見せたが、満更でもない様子だった。
「どんどん撃てぃー」
当日になると、チェロックの掛け声に煽られるように用意しておいた弾岩を撃ちまくった。
「んな景気の良い事を言われても、この兵器大き過ぎて再セットするのが大変じゃん」
ゲードが冗談交じりに言ったが、何度も石を飛ばしていると手慣れてきて実にスムーズに準備が進むようになる。
チェロ「弾岩はまだまだあるぞー。なければ直ぐに作るから遠慮するなー」
回回砲は距離を合わせるのが難しいのだが、予めクレストルが調整してある事も手伝って結構上手く城に当たっている。
イプス「チェロックよー、今更なんだけどよー。1国の本城に向かってデカい石をバンバン飛ばして良かったのかな?」
チェロ「どうしたイプス、何か引っ掛かる事でもあんのか」
チェロックの性格が豪放磊落なのと対照的にイプスの性格は小心翼々。
周りからは足して2で割るとちょうどいい、とよく言われている。
イプス「えーとな、引っ掛かるというか……。これまで国や貴族の争いなんかとは一線を引いてきたはずだろ。ましてや皇国王の継承絡みなんて碌なもんじゃない。そこらへん皆どう思ってんだろなと……」
ピーテ「俺は気にしてないです。冒険者として色々やってきたけど、城を相手にしたは流石に初めてでちょっと楽しかったりしますし」
クロス「イプスは心配性だもんな。それとも、もしかして後悔でもしてんのかい?」
イプス「とんでもない。ギルバードは恩人だし信用できる奴だから後悔なんてしてない。むしろ頼ってくれて嬉しいくらいだ。ほんの少しモヤモヤしたものがあったんだけど、黙っていると、それが大きくなりそうな気がしたんだよ」
グラデ「イプスは考え過ぎなんだ。頼られて嬉しかったんだろ、応えたいと思ったんだろ?それが1番大事なんじゃねーのか」
イプス「それは、その通りだ」
チェロ「頼って来た友人を助けられない事も時にはあるさ。だけど、しがらみや立場に気兼したっていうのをその理由にするくらいなら、俺はとっとと冒険者なんか辞めて宮仕えでもするさ。自由で自分に正直でいられるってのも冒険者の特権じゃないのか?」
強引な物言いではあったが、チェロックの言いたい事が皆にも伝わったようで、この話を終えた。
ピーテ「これまでの石を飛ばしてたのは、準備運動みたいなもんでしょう。そろそろ次の展開がありそうですね」
クロス「俺とゲードはさっき偵察で来てたペガサスに弓矢を外したらからな。普段わざと外す事なんかないから、なんか気持ちが悪い」
ゲード「同感じゃん。次来た時はスカっと射抜いてやるじゃん」
それぞれハルバードと方天戟の使い手でありつつも弓矢も得意なゲードとクロスファーが不完全燃焼を訴えた。
<クレストル他 大砲 近況>
ギル「言うなれば、子供騙しなんだけどな」
上空から見つからないように身を隠しているプレセアに向かってギルバードが説明する。
クレストルは会話には加わらず、大砲を操作している。
ギル「拠点が3つある敵と戦うのに、機動力に絶対の自信があるが自軍の数は多くない、その場合どうするか?」
コンパ「……1か所ずつ順番に倒していく?」
ギル「そう。特別な事情が無ければ、先ず以て戦力を集中させて順に各個撃破していく事を考える」
アン「そうかも」
コンパス・ラングはグリフォンから、アン・フォーリアはアルジョンから、人数が足りない大砲の現場に出向してきていた。
ギル「だけど、それだと3か所のうち、最初に攻める場所は分からない。確率は3分の1になる。だから誘導した。なんせ敵の指揮官は希少なペガサス隊を預かる身だしな。初見の敵で情報が少ない中、ペガサスを少しでも減らしたくない。ならどうするかと言えば、3か所のうち1か所だけ弓矢を射ってこなかったところ最初に攻めてみる」
プレセ「そういえば、グリフォンとアルジョンの片に弓矢を外して撃つよう指示を出しておられましたね」
ギル「うん。偵察を1、2騎倒しても仕方ないからな。上空から見えないようプレセアに隠れてもらったのもそういう訳だ。範囲魔法が使える宮廷序列1位の魔導士がいたら警戒されてしまう」
アン「だけど弓矢を気にしなかったり、誘導されてる事に気付かれたらどうするのヨ?」
ギル「それならそれで構わない。というか多分、誘われているって気付いてる可能性の方が高いよ。それでも乗ってくると思ってるけどね」
コンパ「それで大丈夫なのか?」
ギル「最初にペガサスの数を出来るだけ減らせるに越したことは無いから誘導してるんだけど、仮に狙いを外されてもグリフォンやアルジョンの連中なら弓の名手もいる事だし、対応は可能でしょ。得をしないだけで損する訳じゃない」
アン「へー、色々考えてはるんやネ。意外と言ったら失礼かな?」
ギル「いいや、最初に子供騙しと言ったように大した事じゃない。この勝負は絶対勝たなきゃいけない。アルジョンとグリフォンにも協力して貰ってるしな。少しでも勝率を上げたい、とは考えている」
話をしながらもスコープを除いていたギルバードの眼が城から飛び立つペガサス兵数十騎を捉えた。
ギル「ペガサス兵が出た。来るぞ」
話をしながらもスコープを除いていたギルバードが言った。これまでより2段階ほど大きな声だった。
ギル「城から飛び立ったのは、……数十騎。来るぞ、プレセア先生」
プレセ「……先生はやめてください」
プレセアが戦闘態勢に入った。




