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オーライン城内 フロンテ

フロンテ・ネガスは来賓があった訳でもハレの日でもないにも(かかわ)らず、無駄に豪華なランチを食していた。

「せめて食事だけでも贅を尽くさんとやってられぬわ」

本来の予定ならオーライン皇国王の崩御後に、直ぐにでも皇子であるアコーダを即位させて操り人形にする。

そして自らは宰相になって思うがままに権勢を振るう……はずだった。それがいきなり(つまず)いたまま、事態が好転していない。

 

「皇女の存在が邪魔過ぎる。アコーダ皇子の即位式を強行する事も考えたのだが……後からひょっこりカレンが現れて担ぎ上げようとする諸侯でもいようものなら、余の計画の全てが容易にひっくり返りかねん」

(皇女という以外にも勇者候補という肩書を持つカレンは庶民からの人気も高い。なんとしても葬り去るか、皇位継承権を放棄させねば流石に諸侯が黙っていないだろう。序列1位の宮廷魔導士プレセアが行方不明で捕まらないのも気掛かりだ。プレセアの妹であるソアラも優秀な魔導士で、カレンの近衛女官であるため距離も近しい)

ストレスが溜まりに溜まっているフロンテの中で独り言と思案が交差する。


前オーライン皇国王は偉大な王として他国からの評価が高く、在位期間も長かった。それだけに崩御によって重しが取れた今、他国がここぞとばかりに要らぬちょっかいを出してくる恐れがある。

実際、近隣諸国の中には何かにつけて対決姿勢を剥き出しにしてくる国もある。

(その意味でも早く即位式を国内を落ち着かせる必要があるというのに、ままならんわ)

遂には、フロンテが当たり散らして周辺の装飾品や食器を破壊する。

ギーブイが驚く様子もなく、静かに散らばった品を片づける。


「また荒れているのか、フロンテ」

フロンテのストレスが爆発すると、まるで見計らったようにバラキューダスが現れて相談相手を務める。

「のうバラキューダスよ。相変わらず皇女は消息不明であるし、考えたのだがアコーダを即位させたうえでカレンを皇族から除籍か絶縁させるのはどうだろうか」

「はあ……、あの仲の良い姉弟でそんな事を出来る訳がなかろう」

真面目な表情のフロンテに対して、バラキューダスが困り顔で返す。

第3者に聞かれた場合を用心してか、或いは普段の呼び方が癖づいているのか、本人がいない時でもバラキューダスはカレンの事をカレン様と呼ぶ。


「無茶をすれば諸侯が黙っておらんと何度も言うておろうが。だいたいだなー、現状でも其方に歯向かえる者など城内には皆無であろう。後はカレン様さえなんとかすれば盤石になるのも時間の問題であろう」

少し言葉が変わるだけで毎回ほとんど同じ、焼き直しのような2人のやりとりを終わらせたのは、ドガーン大きな音と振動だった。


「何事じゃ?急ぎ確認のうえ、報告せよ」

少ししたところで、従者がフロンテの元にやってきて報告を行う。

「城が遠方から攻撃を受けています。かなり遠方から砲弾撃ち込まれているため、敵の数と素性は未だ判明しておりません」

報告の間も音と振動が定期的に響いている。


「それで反撃はしておるのか?」

「未だです。敵の所属が分からないという事もありますが……」

「城が攻撃を受けておるのだぞ。賊だろうが例え隣国だろうが、()れ者ぞ。迎撃を許可する、こちらからも撃ち返せ。遠慮など不要。好き勝手やらせるな」


「それが距離が遠すぎて、現在の城にある設備の射程外から攻撃を受けているようです。位置が明確でないのと城の防御結界が妨げになって魔法による迎撃も困難な状況です」

「結界では今回の攻撃を防げんのか?」

「対魔法を重視した結界となっています。物理攻撃に対しては城自体の防御力が高く、今も音と振動は凄いのですが、崩れたりはしていません」

フロンテは小さく頷きながら報告を受けた。


「防御については分かった。それで反撃策は?」

「先程も申し上げた通り、城にある設備では届きません。おそらく数百メートルは遠方になりますので、騎兵隊かペガサス隊のどちらかが良いと思われます」

「騎兵かペガサスか。ならば両方だ。確か、騎士団長のリオン・クラウンが城に戻って来ておるだろう。彼女を騎兵隊長として出陣させよ」

「承知しました。そのように手配致します」


フロンテはカレンによるアコーダ奪還の警戒はしていたが、正面から攻城戦を仕掛けてくる事をよもや予想していなかった。


<リオン・クラウン出陣準備>


オーライン城が攻撃を受けた事に際して、フロンテから迎撃を命じられたリオン・クラウンは出陣の用意を進めていた。

部隊を統率する騎士団長として、自身の身支度だけでなく部下への指示、装備類の最終確認など準備は多岐に渡っており、城内を行ったり来たり忙しく動き回る。

リオン「リアハ、物見は戻ってきたか」

リアハ「未だです。出陣を遅らせて待ちましょうか?」

リオンには副長が2人いて、1人はリアハ・アルシラル、もう1人はクルーガス・プログレムといった。


リオン「いや、………」

リオン(城への攻撃は複数から行われているとの事。先に敵と対峙するのはペガサス隊だから、相手の力量を測るのに丁度良い。どのみちあちら(ペガサス隊)は数が少ない。騎兵が主戦力となる)

 

リオン「ペガサス隊との兼ね合いもあるので、我が隊だけ時間をずらす訳にもいくまい。万一、反撃を受けて被害を被った場合、後詰めの援軍の有る無しが隊の運命を左右するやもしれん。ペガサスは希少種だからな。あれも我が国の財産、悪戯に消耗するのは好ましくない」

リアハ「なるほど。それでは予定時刻に出立ということで準備を……」


リアハとの対話を終える直前、不意に違和感を感じたリオンが誰もいない方向に顔を向けた。

リアハ「どうかしましたか?」

リオン「……なんでもない。そのまま準備を進めてくれ」

リアハ「承知しました。失礼します」


副長が去った後、リオンは1人で誰もいないはずの場所に向かって歩き始めた。

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