行動開始
<第1班(兵器班) 行動開始>
オーライン城には時計台が設置されている。「グゥァーン」という時報のベルが12回鳴ったのをきっかけに行動を開始する。
ギルバードたちのいる場所からはさすがに音は聞こえないが、クレストルが製作したスコープ(単眼望遠鏡)を用いる事で時刻を確認する事は可能だ。
「じゃあクレストル、始めようか! あと、プレセアは目立たないように物陰にでも隠れておいてくれ」
ギルバードが発破を掛けた。
「よっしゃ」
「よろしくお願いします」
今回、ギルバードは複数の攻城兵器を持ち込んでいる。
いずれも過去にクレストルが製作したもので、分解して倉庫に仕舞ってあったものを引っ張り出してきて、昨日のうちに計3か所に設置調整済みである。
うち1か所にクレストル、プレセア、ギルバードの3人+2人(グリフォンから1人、アルジョンから1人)を配置、別の1か所に冒険者パーティーのグリフォン6名、もう1か所には冒険者パーティーアルジョン5人を配置している。
ファーストアタックはクレストルが大砲をぶっ放す。
轟音を響かせて飛んでいく砲弾は見事城壁にヒット。当たった時の衝撃と音は凄まじいものの、それほど大きな被害は無さそうである。
もっともギルバードは被害の大小を最初から気にしていない。続けるうちに建物が崩れて傷を負うケースも避けられないだろうが、なるべくなら被害者は出ない方が良いとさえ考えていた。
大砲の鳴動をきっかけにグリフォンのいる場所から、回回砲(大型投石機)により巨石が放たれる。
その次は、アルジョンのいる場所から弩砲によりで槍のような巨矢がオーライン城に向かって放たれる。
それぞれ初弾発射後も準備を整えて、2発目、3発目と連続して撃ち続ける。
「おー、全部ちゃんと城に命中してる。さすがクレストルの製作した攻城兵器だな」
ギルバードがスコープを覗き込んで感心しながら言った。
「いや、俺よりも運用しているアンタの兄弟子と姉弟子のパーティーを褒めるべきだぜ。標的がデカい城とはいえ、距離と角度を調整して巧く当てるには伎倆が要る。大型の兵器を触るのは初めての経験だろうに、次弾、次々弾を発射するのもモタついていないのも二重丸をあげても良いくらいだ。製作した俺がいうのナンだが、なかなか出来る事じゃない」
「ということで、第1班(兵器班)のスタートは順調と言っていいな。そろそろカレンたち第2班も動き出す頃だ」
<第2班(侵入班) 行動開始>
カレン、ソアラ、カーク、カローランの4人は隠し通路の出入り口にいた。
オーライン城に設置されている時計台が12時の時報を人々に伝えた後、ほどなくしてドゴンドガンという音が響いてくる。
以後、それが一定のリズムを刻むように続く。
「兵器班が始めたわね。私たちも動きましょう」
「ここまで響く音だと、まさに波って感じがするんだな」
カレンとカークの会話には、まだ緊張感は漂っていない。
クレストルたち第1班が陽動で派手に攻城戦を展開する中、カレンたち第2班がその騒ぎに乗じて城内に侵入する。
隠し通路の存在は敵であるフロンテ側に既に露見していて、進んだ先に敵がいる事も分かっている。
カレンたちは、それを速やかに排除しながら前に進んでアコーダを救出しなければならない。
静かに歩を進めていると、昨日巡回兵を発見したところに近い場所に敵を発見した。
数は……5人。向こうはまだ気付いていないように見受けられる。
どのくらいの時間で交代をしているのかは分からないが、来るか来ないか分からない敵を警戒し続けるうちに、緩みが生じてきているのだろう。
最初にスピードのあるカレンとカークが突っ込む。ダッシュで一気に距離を詰めて、ともに1人目は反撃する間も与えずに斬りつけて1撃で決着。
カレンの2人目は、1人目を倒した後、そのままの流れで蹴りで態勢を崩し、ナックルガードで相手の顎を強打して倒した。
カークの2人目は、剣を鞘から抜こうとする腕を抑えて剣を抜かせず、焦る敵の腕を固めたまま投げて倒した。
残った1人は時間差でやって来たカローランが戦斧で防御する敵を強引に粉砕、一撃で決めた。
今回、ソアラの出番は無かった。
隠し通路内にいた5人の敵を助けを呼ぶ間も与えずに倒したカレンたちは、そのまま城内に侵入する。
兵器班による攻撃は続けられており、弾が激突する度に城内に低い音が響き渡っていた。




