作戦会議
<宿屋での作戦会議 その1>
カレン、プレセア、ソアラ、それにギルバード、カーク、カローランの6人が円状になって作戦会議を行っていた。
「話し合いの前に、心配させた罰を執り行う。カローラン、準備はいいか」
「おう」
そう言ってカークがカレンの前に立ち、こめかみを両こぶしの中指でぐりぐりぐり。カローランがソアラの額にデコピンを2発連続で喰らわせる。
カレン「痛い、イタいってば」
ソアラ「痛たたたっ」
カローランは止まらない。続けざま今度はプレセアに近付き、両頬を思いっきりつねり上げる。
プレセ「ひたひっ、ひたひっ……れす」
(プレセアはだいぶ年上なのになぁ。いや、中身はワシの方が上じゃわい、とか考えてるかもしれんな)
そんな風に勘繰りながらギルバードは見守っている。
ギル「さて、仲直りの儀式も終わったところで本題。現在も準備作業中で席を外しているが、クラフトマスター:クレストル・マークチェイスも協力してくれる」
カレン「あら、パーティーへの参加は断られたはずでしょ?」
ギル「パーティーに加わる訳じゃない。めっちゃ困ってる事を告げたら協力してくれる事になった」
カレン「めっちゃって……なんて言えばいいのか。……軽いわね」
ギル「軽くない。話が長くなるので経緯を端折ってるだけだ。簡単に言えば彼は情に厚い奴なんだよ。それに今回の作戦は彼と彼の道具こそがエースさ」
<宿屋での作戦会議 その2>
ギル「今回、メンバーを2班に分ける。第1班は城攻めをやる。今もクレストルに頼んで大砲、回回砲、弩砲の3つの攻城兵器を組み立てて貰っているところだ」
カレン「かいかいほー?こーじょーへーき?そんなものどこにあったのよ?」
ギル「過去にクレストルが試作して倉庫にしまってあったらしい。大きすぎて部品単位でバラしてあったのを、そのまま持ち込んでるんで、組み立て作業が必要ってわけだ」
カレン「あいつはいったい何者なのよ」
ギル「兵器に限った事じゃないらしいがね、閃いたら実際に作ってみたくなる。それがたまたま兵器だったりするだけ、とクレストルは言ってたなぁ。それが今回役に立つ。良かったなカレン、ツイてるぞ」
カレン「…………」
ギルバードが揶揄い半分の笑顔をカレンに向ける。
ギル「兵器はそれぞれ別の離れた場所に配置する。つまり同時に3か所からオーライン城に攻撃を仕掛けるって事だ」
プレセ「なるほど、では私たちはその3か所にバラけるのですね」
ギル「慌てなさんな。ここにいるメンバーのうち、攻城兵器に配置する人員は俺とプレセア、それとクレストルの3人だけだ、この3人が兵器班ってわけだ。残ったカレンたち4人は別の仕事がある」
ソアラ「兵器班は3人だけで大丈夫なのですか?」
ギル「良い質問だな。実は助っ人を頼んである。それに白兵戦を避けて基本は遠距離から撃ち続けるだけだからなんとかなると思う。クレストルの兵器が凄いのは、射程が3キロメートルを越える。材料を厳選してパーツ強度を上げたり、動力に魔力を利用する事で従来では不可能だった射程を実現してるらしい。オーライン城に備わっている兵器は300メートルが限界らしいので、撃ち返される心配をしなくて良いのはデカい」
どこからか見つけてきた黒板に、ギルバードが班分けの内容を書き込んでいく。
・第1班(兵器班):クレストル、プレセア、ギルバード+助っ人
ギル「次に第2班、こっちは城内へ侵入を担当する。メンバーはカレン、ソアラ、カーク、カローランの4人。ルートはカレン得意の隠し通路を使う」
カレン「別に得意な訳じゃない……」
ギル「モノ凄くシンプルにいうと、まず第1班が攻城兵器で騒ぎを起こす。そのどさくさに紛れて第2班がアコーダ皇子を救出する。それだけ」
ギルバードが話を続ける。
ギル「既に隠し通路の存在は露見していて、待ち伏せされている。なんとか頑張って敵を倒して、押し通ろうとしても多勢に無勢で敵はどんどん補充されるし、そうやって時間稼ぎをされている間にアコーダ皇子の危険度が増す。そして失敗する可能性が高くなる。ここまではいいか?カレン」
カレン「分かってるわよ。私が強行しようとしていた展開がそれでしょ。だから止めた訳でしょ」
ギル「その通り。よく分かってるじゃないか。カレンは馬鹿じゃなかったな」
カレン「うっさい。いちいち棘があるわね」
構わずギルーバードが話を続ける。
ギル「これらを踏まえたうえで、陽動班である第1班のポイントは、『なるたけ騒ぎを長く大きくして、どれだけ多くの敵を引っ張り出せるか』だ。前述の通り射程外だから撃ち返される事はない、だからフロンテはペガサス隊か騎兵隊か、或いはその両方を展開してくるだろう。この2つの隊にとって3キロは大した距離じゃない。だからといって直ぐに制圧されてしまっては陽動の意味が薄れる」
ギルバードがプレセアに顔を向ける。
ギル「という事で初手はプレセアの出番だ、範囲魔法で迎撃して貰う」
プレセ「分かりました。全力を尽くします」
さすが序列1位の宮廷魔導士プレセア、自信がありそうだ。
ギル「それから兵器を3か所に離れて配置する以上、クレストル、プレセア、俺の3人では物理的にリソースが足りない。そこで冒険者パーティー2チームに助っ人を頼んである。それぞれ7人と5人のパーティで、いずれもAクラスだから実力は相当のものだ。この3チームで敵を引っ掻き回す」
・第1班(兵器班):クレストル、プレセア、ギルバード +冒険者パーティ×2
ギルバードが黒板に書き加えた。
ギル「第1班については以上だが、不明な点はあるか?」
カレン「不明はないけど、よくこの短期間で助っ人の手配まで段取り調整を出来たわね」
ギル「おう、この数日間は走り回ったぞ。冒険者パーティーのリーダーは俺の兄弟子と姉弟子だから話は早くて助かった。ダンジョン探索に出掛けてなかったのは運だな。やっぱりカレン、お前はツイてる」
カレン「もう、それはいいわよ」
カロ「陽動である事が見抜かれて、ペガサス隊も騎兵隊も城外に出てこない、という場合はどうするのじゃ?」
ギル「兵が城外に出ないケースはまずない。自分の家の壁をドカドカと殴られて黙っている奴はいない。俺たちの敵はフロンテだけだが、フロンテの敵は国内だけじゃない。前皇国王が崩御し、国内がゴタゴタしている中で他国が攻めてくる可能性だってある。それで何もしなければ侮られる、だから兵器班が撃ち続ける限り、絶対に城外に兵を送ってくる」
<宿屋での作戦会議 その3>
ギル「重要なので繰り返して言うが、第1班は第2班を補助するのが目的。陽動はその手段という事になるのに対し、侵入班である第2班の目的は、速やかにアコーダ皇子の元に辿り着き、カレン共々無事に脱出する。これに尽きる。なぁ、カレン」
カレン「はいはい」
ギル「そのうえでポイントを述べると、音に関しては第1班がかなりの音を出すので、さほど気にしなくて良いはず。戦闘についても、戦わずに済むならその方が良いが、第1班がどれだけ頑張っても城内の敵がゼロになる事はまず無い。つまりある程度の戦闘は避けられない展開になるだろう。その点はカレン、カーク、カローランの頑張りに期待だな。ソアラは魔法で補助してバランスを取りながら進んでくれ」
ソアラ「はい」
ギル「重要なので繰り返しになるがアコーダ皇子を救出出来ても、カレンも一緒に無事でなければ意味がない。第3班の投入も視野に入れてるし、極端に言えば今回の作戦が失敗しても、無事であれば改めて次の手を考える事も出来る。カレンは直ぐ頭に血が上るからな、熱くなって突っ走るのは抑えるように。他の3人もカレンが暴走したら少々強引な手を使っても絶対にも止めろ。この点は特にカローランに期待している」
カレン「重要なのは分かったけど、カローランに期待っていうのは?」
ギル「ソアラとカークはどうしても遠慮がちだからな。その点、相手が皇女でも女性でも必要なら躊躇なく強引な事も出来ると思っただけだ」
カロ「なるほどのう、承知したぞい」
・第2班(侵入班):カレン、ソアラ、カーク、カローラン ※注意:カレンが暴走したら必ず止める
ソアラ「第3班というのは何でしょう?」
ギル「第3班については保険みたいなモノだから、今はあまり気にしないでくれ。それより、カレンに突っ走るなと言っておきながらアレだが、なんだかんだ言ってもアコーダ救出は第2班の働き次第なのも事実。無理はしても無理し過ぎるな、とでも言ったら良いだろうか。言葉遊びみたいですまんな」
カレン「まあいいわよ。ここまでお膳立てして貰った訳だし、アコーダは必ず私だちが救出してみせるわ」
自分に言い聞かせるようにカレンがそう言って立ち上がった。




