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師匠と弟子

「ギルバードさん!」

カレンを肩に担いだ男に向かってプレセアが言った。

「最後の方しか聞こえなかったが、面倒臭そうな議論をしてたんで、実力行使させて貰った。遅くなってすまない、プレセア」

担がれているカレンには顔が見えなかったが、確かに男はギルバード・ラインベッカだった。

 

男の正体がギルバードだと分かると、カレンは暴れるのをやめて大人しくした。そして話しかけた。

「聞きたい事がいっぱいあるんだけど……」

「俺に答えられる事であれば、歩きながら答えるよ」


「隠し通路の場所をなんで知ってるの?」

「カレンたちが去った後、俺宛の置き手紙があった。手描きの地図がとても分かり易くてな、おかげで迷わずに来れた」

カレンがプレセアの方に顔向けると、プレセアが明後日(あさって)の方向に顔を逸らす。


「まあ、いいわ。次の質問。師弟関係でも無くなったのにどうして来たのよ?」

「俺は逆縁なんて認めてない。勝手な事をする弟子を(たしな)めに来たんだよ」

ギルバードの答えにカレンが複雑な表情をした。苦笑いのような嬉しいような、そんな顔だ。

 

「……そうね、()(まま)で独り善がり、それが私。自分でも呆れるもの。ギルバードも私の事が嫌いでしょう?」

カレンが今度は寂しそうな顔をした。

「嫌いかどうか?うーん、馬鹿な弟子ほど可愛いって言うからなぁ。カレンが背負ってる責任の重さも、それを何とか果たそうとしている事を俺は知ってる。だから、今みたいに俺も一緒に背負ってやるよ」


「どうせ馬鹿よ私は。……でも……優秀な従者2人……いえ、大切な友人2人を失わずに済んだ。ギルバードのおかげよ、あ……ありがとう」

照れ隠しでカレンがギルバードの背中に顔を押し付ける。

(ウフフ、カレン様の耳がうっすら桜色になってる(笑))

笑いをこらえているプレセアの気配に気付いてカレンが顔向けると、またプレセアが顔を逸らした。


「これで最後の質問。アコーダを助けられるかな?」

「1番聞きたいであろう内容を1番最後に持って来たか。さてはカレン、好物は残しておいて最後に食べるタイプだろ」

「そ、その通りだけど、今は関係ないでしょ。それでどうなの?」

「ここに来るまで色々準備したからな。詳細は後で説明するが、皆で頑張れば何とかなるかも?とは思ってる。それでも正直言って、かなり分の悪い賭なんだが、敢えて言い切ってやるよ。俺がアコーダを助けてやる!」


ギルバードの「助けてやる」という言葉を聞いた時、カレンの心を覆っていた淀んだ空気がどこかに吹き飛んでいった気がした。

諦めたくないのに、探しても探しても希望を見つけられない、その繰り返しで心が折れそうになる。

だったら、せめてプレセアとソアラを巻き込むのは止めようと別れを告げた。

(1人惨めに散れば母様たちも赦してくれるかな……)ふと、そんな事も考えるようになった。


「助けてやる」たった5文字でこんなにも心が軽くなるものなのか。何か不思議な気分になる。

きっと誰の言葉でも良い訳じゃない。会って1か月と少ししか経っていなくても、私はこの人が、決して無責任な物言いはしない、実直で頼りになり、尊敬に値する人物である事を知っている。

その人が最も望んだタイミングで現れて、言い切ってくれた。ギルバードの言葉だからこそ5文字の言葉でも、心に染みた。

(私は1人じゃなかった)と思えるようになった。


カレンは先刻より強い力で、ギルバードの背中に顔を押し付けた。

(ウフフフ、今度は耳が真っ赤になってる(笑))

プレセアが楽しそうにカレンを見ていた。


そうこうするうちに一行は出入口に到着し、隠し通路から出た。

「さて、そろそろ降りろ」

ギルバードが投げるように乱暴に降ろしたせいで、カレンがお尻から着地した。

「痛ったぁーい、なにすんのよ」


カレンのクレームを無視してギルバードが話を進める。

「これからの予定だが、宿屋に部屋を取ってあり、そこでカークたちと合流する。詳細はそこで説明する。その後は時間を置かずに行動を起こす。そのつもりでスイッチを入れ直しとけよ。それと移動中は顔バレしないよう気を付けるように」


確かな足取りで先頭を歩くギルバードに付き従う形でカレン、プレセア、ソアラの3人も宿屋に向かった。

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