永遠離別想出生活
「大樹ー!大樹ーー!ここにいるんでしょ。居たら返事してー」
何処からか声がする。
その声で僕は目を覚ました。お母さんの声だ。
でも僕は起き上がる気にはなれなかった。
ガタガタと玄関を開けてお母さんとお父さんが入って来る。
そして僕を見つけると走ってきて
「大樹!!良かった!無事なのね?怪我は無い?」
と、僕を抱きしめた。
お父さんも心配そうな顔で僕を見ている。
僕はか細い声で
「消えちゃった…キラキラ…砂みたいに…うわぁーん」とお母さんに抱きついてまた泣いた。
お母さんは「うんうん…大丈夫」と頭を撫でて僕を落ち着かせようとしてくれた。
お父さんは部屋の中を見ながら
「やっぱりお化け居るのか?父さん見えないからわからないや。でもこの部屋を見るとやっぱり居たんだな」と部屋をキョロキョロとする。
そこには僕と愛姫の思い出があった。
お供え物の所には牡丹の花や洋服、化粧品や雑誌が沢山、山積みにしてあり、壁には海、プール、その他色々な所で2人で撮った写真も貼ってあった。
お父さんから見れば心霊写真、でも僕が見たら2人の大切な思い出。
お母さんが
「そろそろ行きましょ。またここに来ていいから。今日はゆっくり家で休みなさい」と言った。
お父さんも「そうしよう。ほらっ」と僕をおんぶしてくれた。
お父さんのおんぶで外に出ると、外に張り巡らされてた結界やお札が真っ黒になり下に落ちていた。
僕には役目が終わって落ちたように見えた。
その光景が尚更、愛姫との別れを物語っていた。
それからの僕は想い出に浸りながら生活していった。
また、太や大介と遊び、遊ばない日は民家に行き、庭の手入れや、中の掃除をしたり、お小遣いを貯めて牡丹を植えたりした。
そんな日々を繰り返してドンドンと大人になっていた。
大学を卒業して、就職をしてお金を貯めて、あの民家を買った。
地主の人が「曰く付きの物件だよ?知ってるでしょ?!ここがどんな場所だか」と言ったが
僕は笑って「はい!でもここが欲しいんです」と言ったら「物好きもいるんだな」とかなり安く売ってくれた。
そして僕は民家に入り
「愛姫ちゃん!やっと手に入れたよ。庭の牡丹も増えて来た。そして僕はまだ大好きだよ」とお供え物をする所に声をかけてみた。
「
ふふっ、返事があるわけないか。さぁ!綺麗に掃除しておこう!」と言い、あの日の写真を貼ったりして部屋の掃除をした。
家を買ってしばらくしたら僕は仕事を辞めた。
ずっとなりたかった江戸の話しを書く、ノンフィクション小説家になる事にした。
何度も小説を書いては出版社に持ち込んだ。
「んー、話しは面白いと思うんだよね…ただノンフィクションってのが引っかかるんだよ。だって君の書いてるこれってフィクションだよね?」と編集の人が言う。
僕は「フィクションじゃないです!ちゃんと聞いてそれを覚えてて書いてます!」と言うと、
編集の人は「江戸の人に?」と頭を捻った。
続けて「ノンフィクションって肩書きで売っちゃうとまずいから、フィクションって事で出さない?」と言った。
僕は「フィクションでは出せません。それだと全部無かった事になっちゃいますから…今日はありがとうございました」と頭を下げて出版社を後にした。
続




