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初恋はオバケ  作者: 星 見人
12/22

永遠離別想出生活


 「大樹たいじゅー!大樹ーー!ここにいるんでしょ。居たら返事してー」


何処からか声がする。

その声で僕は目を覚ました。お母さんの声だ。


でも僕は起き上がる気にはなれなかった。


ガタガタと玄関を開けてお母さんとお父さんが入って来る。


そして僕を見つけると走ってきて

「大樹!!良かった!無事なのね?怪我は無い?」

と、僕を抱きしめた。

お父さんも心配そうな顔で僕を見ている。


僕はか細い声で

「消えちゃった…キラキラ…砂みたいに…うわぁーん」とお母さんに抱きついてまた泣いた。


お母さんは「うんうん…大丈夫」と頭を撫でて僕を落ち着かせようとしてくれた。


お父さんは部屋の中を見ながら

「やっぱりお化け居るのか?父さん見えないからわからないや。でもこの部屋を見るとやっぱり居たんだな」と部屋をキョロキョロとする。


そこには僕と愛姫あいひめの思い出があった。


お供え物の所には牡丹の花や洋服、化粧品や雑誌が沢山、山積みにしてあり、壁には海、プール、その他色々な所で2人で撮った写真も貼ってあった。


お父さんから見れば心霊写真、でも僕が見たら2人の大切な思い出。


お母さんが

「そろそろ行きましょ。またここに来ていいから。今日はゆっくり家で休みなさい」と言った。

お父さんも「そうしよう。ほらっ」と僕をおんぶしてくれた。


お父さんのおんぶで外に出ると、外に張り巡らされてた結界やお札が真っ黒になり下に落ちていた。


僕には役目が終わって落ちたように見えた。

その光景が尚更、愛姫との別れを物語っていた。


それからの僕は想い出に浸りながら生活していった。


また、ふとし大介だいすけと遊び、遊ばない日は民家に行き、庭の手入れや、中の掃除をしたり、お小遣いを貯めて牡丹を植えたりした。


そんな日々を繰り返してドンドンと大人になっていた。


大学を卒業して、就職をしてお金を貯めて、あの民家を買った。


地主の人が「曰く付きの物件だよ?知ってるでしょ?!ここがどんな場所だか」と言ったが

僕は笑って「はい!でもここが欲しいんです」と言ったら「物好きもいるんだな」とかなり安く売ってくれた。


そして僕は民家に入り

「愛姫ちゃん!やっと手に入れたよ。庭の牡丹も増えて来た。そして僕はまだ大好きだよ」とお供え物をする所に声をかけてみた。

ふふっ、返事があるわけないか。さぁ!綺麗に掃除しておこう!」と言い、あの日の写真を貼ったりして部屋の掃除をした。


家を買ってしばらくしたら僕は仕事を辞めた。


ずっとなりたかった江戸の話しを書く、ノンフィクション小説家になる事にした。


何度も小説を書いては出版社に持ち込んだ。


「んー、話しは面白いと思うんだよね…ただノンフィクションってのが引っかかるんだよ。だって君の書いてるこれってフィクションだよね?」と編集の人が言う。


僕は「フィクションじゃないです!ちゃんと聞いてそれを覚えてて書いてます!」と言うと、


編集の人は「江戸の人に?」と頭を捻った。

続けて「ノンフィクションって肩書きで売っちゃうとまずいから、フィクションって事で出さない?」と言った。


僕は「フィクションでは出せません。それだと全部無かった事になっちゃいますから…今日はありがとうございました」と頭を下げて出版社を後にした。



            続



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