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13日の怪人

作者: 黒楓

今日は『華金』!!


華ちゃんの日です!!


でも今回の主役は華ちゃんの恋人のミスディオさんです!!

「ごめんね!


トラブっちゃってさ!


ワタシ、昨日までは信じていなかったけど……改めるワ」


体を思いっきり使う“労働”に加え、振り掛かって来たトラブル!!


『ゴメン!遅れる!!』と華ちゃんにはメッセしていたものの、早く顔を見たくて柄にもなく走って来た。


 立て続けに言葉を発し肩で息をしている私の手の甲に華ちゃんはそっと手を置いてくれて……私は貪る様に指を絡め“恋人つなぎ”をしてしまった。


「大丈夫?」と訊ねる華ちゃんに私は言い掛けていた言葉を繋いだ。



「13日の金曜は不吉』と言うのは本当だったのね!今日、こんな事があったのよ!!」



--------------------------------------------------------------------


 今日最後のお客は“お店”の常連らしく、贔屓にしている綾ちゃんが休みなので代わりに私が選ばれた様だ。


「弱いのか淡白なのか、すぐに()()()()……時間まで綾ちゃんと駄弁って(だべって)る、ラクなお客さんだよ」


 店長からそう言われて迎え入れてみると、なるほど、まだ二十代だろうに垢抜けない格好のひょろっとしたヤツだ。


 ただ襟足はスッキリ、髭も剃られていて指も清潔そうだったので私は幾分安心して、お客と一緒にシャワーブースに入り、いつもの()()()()()()をこなし、先に彼をベッドへやって、壁と床に残った泡をシャワーでざっと洗い流していた。


 何となく気配がして……屈みこんでいた私はシャワーヘッドを手にしたまま振り返るとブースのガラス越しに肌色のシルエットが見えた。

どうやら男は待ちきれないらしい……


「ごめんなさい! 今、行きますから」


声を掛けながら身を起こすと首から上のシルエットがおかしい。


何??白っぽい??


 その瞬間、ガシャッ!とブースのドアが開けられ、突っ込まれた頭には!!

サイド紐のショーツ(それもサテンシルクらしくツヤツヤしてる)が被られていた。


 目出し帽の様に被られたショーツの両の足ぐりからはみ出した髪の毛が変にしっとりしているのが“エンガチョ”だし、前身頃に付いているリボンがこの“覆面男”の口の動きに合わせてモゾモゾと“害虫っぽく”動くのがチョー気持ち悪い!!


 私はヒューッ!と息を呑んでシャワーヘッドを持ったまま固まってしまった。


「脱いで脱いで身ぐるみ脱いでボクに着せて」

ショーツのマスク越しに漏れ聞こえて来る超弩級にキモい言葉が私に迫って来る!!


“蛇に睨まれた蛙”とはこういう心境なのだろう。


 でも次の瞬間、伸びてきたヒョロヒョロ手で裸の胸をムンズと掴まれて私は我に返った!!


「ギャアアア!!!」


私の上げた悲鳴に“店”の人間が踏み込んで来た。



。。。。。。。。


 この『ショーツ男』は、“ちょっと言うのが憚られるご接待”をお店のお兄さん達から施され、記念に写真を撮られた後、お店の外に放逐された。

『“無かった事”にしないと、最後にお困りになられるのはお客様の方ですよ』との言葉を添えて……


“こういう商売”だから、今までにも怖い思いをした事もあったけれど、さすがに今回の様な事は初めてだ。


「今日は13日の金曜だから“ジェイソン”にでもなりたくなったのかもよ!」と店長は言うが、本当に怖かった。


でも……“この仕事”しかできそうに無い私には、仕事を辞める勇気など無い……


 情けなくて思わず泣きそうになったので、大急ぎで帰り支度をしてお店を飛び出し、ずんずん走って涙を振り飛ばした。



--------------------------------------------------------------------


 バーテンの佐藤ちゃんは私達に気を遣ってくれたのか……カウンターの向こう端で、下手な丸氷を作り始めた。


話し終わった私はゆっくりと華ちゃんの懐に顔を埋めた。


バーカウンターの椅子と椅子との距離がもどかしい。


「今日は……ウチ来る?」


って聞かれて私は華ちゃんの胸の中でコクン!と頷く。


オトコの胸なんて信じない!!


()()()含め……オンナの胸なんてもっと信じない!


だけど、華ちゃんの胸だけは別!!


私が愛する人は華ちゃんだけ!!


でも私は()()()()()()……


華ちゃんから捨てられる覚悟はできている。


例えそれが、この一秒後に訪れたとしても


覚悟は!!


できてる。


どんなに私が悲しくても

華ちゃんに幸せになって欲しいから


ああ

私って!!


ホント

どうしようもないなあ……


“好き”ならきっと

他の誰にも負けないのに


華ちゃんの幸せの為には

なんにもならないのだから


そう!


私の方がよほど……


13日の金曜日の怪人かもしれない。






                   おしまい





。。。。。。。。



この物語の主人公 仕事明けのミスディオさん




挿絵(By みてみん)

このお話


書いているとじわじわと怖くなって来た(゜Д゜;)


『オトコはオオカミ』どころの騒ぎじゃないよね……(-_-;)




ちなみにこのお話の本編はこちらです。


https://ncode.syosetu.com/n2084hh/



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[一言] いつも格好いいミスディオさんが泣き入ってるレアシチュですねー。 ミスディオさん災難でしたけれども、コレは、お店側の手落ちかな〜。お客さん的には、「綾ちゃんとの、いつものプレイ」のノリだった…
[良い点] これは怖い……ホラーが好きで色々な物を読みますが、それとは違う怖さがあります。 逃げられない環境の中で、対峙するしかない「他人」。 心の隠れ家があり、癒してくれる誰かが傍にいてくれる事が救…
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