魔導具を作ることしか出来ない僕は幼馴染パーティーから追放される〜戻ってこいと言われても、もう遅い。僕は隣国で可愛い嫁と国一番の魔導具師として暮らしてるので~
「ハーディー、君をこのパーティーから追放する」
赤髪の剣士、パーティーリーダーのアデルが僕に告げた。僕の頭はその言葉を理解することを拒んだ。
「え? 今なんて言ったの?」
「追放だよ。戦闘能力もない、魔道具しか作れない君はこのパーティーにふさわしくない」
「これからB級パーティーに上がるって時じゃないか! みんなで一流になって認められるっていう夢を忘れたの!?」
思い込みが強いアデルが暴走しているだけかもしれない。僕は救いを求めてパーティーメンバーの顔を見た。
「要するに、邪魔ってこと。これは私たち四人の決定よ」
魔法使いのベラは美しい赤い髪を弄りながら気だるげに言った。僕のことが眼中にないかのようだ。
「お前に冒険者なんて向いてない。みんなで一流になる? それは子供の頃の夢、幻想だ」
戦士、エルガーは馬鹿にしたような声で言った。
「私たちと貴方の道は違っていた。それだけです」
神官として、相談役となっていたハンナまで……。
「僕は自分にできることをしていたはずだ! 消耗品を用意していたのは僕だし、戦闘でも魔道具で支援できていた。それに、B級パーティーになるタイミングでメンバーを減らすのは得策と言えないよ!」
小さい頃からずっと一緒に育ってきた彼らなら、きっと考え直してくれる。そう信じていた。その希望は一瞬で崩れ去った。
「魔道具での支援は魔道具さえあれば、君以外でも出来るじゃないか。それにパーティーのことは君が心配することではないよ。でも、見せてあげる」
アデルは二回手を叩いた。それを合図にドアが開き、一人の男が現れた。肩まである金髪を一纏めにしており、腰にダガーが刺してある。軽装でとても冒険ができるようには見えない。
「紹介するよ。彼が君の代わりに入るメンバーのアイザック。シーフだよ」
「――!」
新メンバー。それは彼らが本気で僕を追い出そうとしている証拠だった。僕はこの場に居られなくなり、逃げ出した。背中に何かが当たった。馬車のチケットだった。
「それは魔法都市国家アイリアへのチケットだ。出発は明日。もう顔を見せなくて良いからな」
「言われなくても!」
捨て台詞を吐いて立ち去る。僕は部屋に戻り、一人で荷造りをした。
出発の日、彼らは見送りに来てくれなかった。当たり前だ。僕は追放されたのだから。ただ一人、アイザックを除いて。
アイザックはニヤニヤしながら近づいてそっと耳打ちした。
「君のパーティーメンバー、略奪しちゃってごめんね?」
「お前が!」
掴み掛かろうとするが、軽く躱されてしまった。戦闘職との差を実感した。彼は僕に嫌味を言うことが目的だったらしく、そのまま帰って行った。
僕は馬車に揺られること三日間、アイリアに着いた。
魔法都市国家アイリアは異世界からやってきた賢者様の働きかけで出来た都市が国にまで成長してできた、新興国家だ。支配地域は小さいものの、他の国の十年は進んでいると言われる魔法技術で、他国から一目置かれている。一言で言えば、凄い国だ。
「ハーディー様ですね? お話は聞いております。どうぞ、こちらへ」
僕はその国でまるで英雄のように扱われている。馬車が首都に着いたと思ったら、国の上層部の人によって城へ連行された。
「君があのS級が言っていた魔道具師? 待ってたよ!」
そして今、城の最上階で少女――周りの反応から察するに、この国の王――に質問攻めにされている。この国の偉い人、ノリが軽すぎない?
「君が作った魔道具を見せて? ねーねー」
グイグイ来る少女に困惑はするものの、悪い気はしない。彼女は、元仲間と違って認めてくれているからだろうか。持ってきていた魔道具を手渡す。彼女に見せるなら野営に役立つような無骨なものじゃなくて華やかなものを持ってくれば良かったな。彼女は色々な方向から魔道具を観察し、それだけでは足りなかったのか、一言断りを入れてから分解し始めた。
渡した魔導具をしばらく眺めてから、彼女は僕の手をぎゅっと掴んで言った。
「凄いね! こんなに精密な調整が出来るなんて! この無駄のない作りに感動しちゃった! この国で最高の環境を君に用意させるよ。まず、助手として、このオリビアを雇うのはどうかな?」
「何を言っているんですか! あなたは王ですよ!」
「王であることが邪魔をするなら、僕は王を辞める! 血統で選ばれた王よりも、実力で選ばれた王の方が良い。ってことで、君に王の座を与えよう」
僕を城に連れてきた人を指差して言った。彼は周りに人がいることを忘れて叫んでいる。いきなり王になれなんて言われたから仕方ないのかな。
「脱出するよ、ハーディー。狭い王城の中は息が詰まるんだ」
「お、王様!?」
「王様なんて呼ばないで。もう譲ったから。呼び捨てでいいよ」
「オリビア、さん。どこへ……!?」
さんをつけたせいか、彼女は不満げな顔をした。
「ここに行くよ」
彼女は城下町を指差した。顔にはこれから悪戯をする子供のような笑みが浮かんでいる。彼女は魔法を唱えて窓を開ける。僕の手を引いて窓から飛び出す。
死ぬ……! ぎゅっと目を瞑る。落下の衝撃がやって来ないことを疑問に思い、うっすらと目を開ける。
「飛んでる」
僕たちは空を飛んでいた。彼女は満面の笑みを浮かべている。
「これが我が国の力だー。なんてね。凄いでしょ」
彼女に国を空から案内してもらった。今までいたところも活気がある街だったが、ここはそれ以上かもしれない。
一通り案内が終わると、僕たちは街はずれの工房の前に降りたった。
「ここが君のために用意したところなんだけど、ごめんね。こんなに凄い人だとは思ってなくて、大した設備もないの」
申し訳なさそうに言う。覚悟して扉を開けた。
「凄い良い設備じゃないか!」
驚く彼女を置いて、工房の中を見る。工房の中には、魔道具作りで必要な各種道具が揃っているのはもちろんのこと、時間の経過を遅くする魔道具まであった。さらに明かりは全て魔道具。水も井戸に取り付けられた魔道具のおかげで楽に運べる。宿屋の一室で頑張っていたあの頃とは大違いだ!
「これで凄く良い? ってことは、あの魔道具を設備が万全でない状態で作ったの!?」
彼女は目を輝かせた。彼女の期待に応えるためにも、早速魔道具作りを開始した。
この一年、ベッドが一つしかなく、同じベッドで寝ることになったり、僕を推薦してくれたS級冒険者が尋ねてきて、魔道具製作を依頼されたり、オリビアに告白したら恋人を通り越して夫婦になったりと色々なことが起こったが、今では国一番の魔道具師となった。
「君たち、ハーディーを追放した、無能なパーティーじゃないか! そんな奴らに売るものなんてここにはないよ」
「それはわかっているが、頼む……。義手を製作してくれ!」
工房の外でリヴィ――オリビアに愛称で呼ぶように言われた――と誰かが揉めているのが聞こえた。
「どうしたの、リヴィ。――どうしてここに」
息を呑んだ。リヴィと言い争っていたのは元パーティーメンバーのエルガーだった。エルガーだけじゃない。パーティーメンバー全員が揃っていた。
「もう顔を見せるな。ってみんなが言ったのにどうしているの?」
自分でも驚くほど、冷淡な声が出た。元々いたパーティーの話題はこの国では全く聞かないし、もう興味もなかった。彼らが訪ねてくるまで忘れていたくらいだった。
「お兄ちゃんが、冒険中に腕をなくしたの。ハンナでも無くなってしまったものは治せない。でも、そんな時に貴方の噂を聞いたの。魔道具で腕を作れると」
「追い出しといて、都合が良いのは分かってます。ですからどうか――」
「九百万ゴールド」
頭を下げていた三人がパッと頭を上げる。
「九百万ゴールドで売ってあげるよ」
「九百万って言ったら小さな国の一年の予算じゃないか。義手は百万から作れると聞いていたが?」
アイザックはぼそりと言う。その声には不満が滲んでいる。
「百万は生活をするための義手の値段だよ。戦闘に使う義手ならもっと高くなる。しかも利き手だ。妥協すると死ぬよ?」
彼は納得したらしい。引き下がる。
「出すわ。九百万。それで冒険が続けられるなら」
ベラが言った。ただ、それは独断だったようで、彼女とその兄アデルの兄妹喧嘩が始まっていた。
「ありがとうございます。代金は明日、持ってきますね」
ハンナはそれだけ言い残すと喧嘩の仲裁をしに言った。
次の日、あいつらは宣言通り九百万ゴールドを持ってやってきた。
「本当にありがとう。君が友達で良かったよ」
「友達? 僕たちの関係はそんなものじゃないよ」
アデルは爽やかな顔で言ってきた。今更、友達だなんて言われても気持ち悪い。
「僕にとって、君はただの客だよ」
四人は息を呑んだ。向こうはみんな友達だと思っていたのか? あんな仕打ちをしといて能天気なやつら。
「僕はもうここで一流の魔道具師として認められた。だから『戻って来い』と言われても、もう遅い。僕はここでリヴィと幸せに暮らすから」
義手の完成後、彼らには作った義手だけ渡してさっさと帰ってもらった。
「リヴィ、僕は幸せだ。君が居て、子供が居て、作った魔道具で多くの人に笑顔を届けることができる。これも、追放されたおかげかもね?」
僕たちは笑った。――これは魔道具しか作れない僕が冒険者パーティーを追放され、自分の価値に気付き、再び居場所を手に入れるまでの物語。
〈裏〉
「第一回、パーティー会議を始める」
迷宮探索の後、閑散としたギルド内で突然アデルが言った。この男はよく思いつきで物事を始め、パーティーを振り回すことがあった。他のメンバーはいつものことだと思っていた。
「あいつは魔道具製作してる頃か? 部屋まで行って呼んでくる」
エルガーが立ちあがろうとすると、アデルが腕を掴んだ。C級上位パーティーのリーダーと言うこともあってかなり力が強い。
「待ってくれ。これはあいつに関することなんだ」
「じゃあ、なんで止めるんだよ!」
三人は可哀想なものを見るような目でアデルを見た。今日はまだ酒も飲んでいない。ついに頭が狂ったかと実の妹にさえ思われる始末だ。
「俺はあいつにパーティーから抜けて欲しいと思っている」
「馬鹿なことを言わないでよ、お兄ちゃん! 私たち、小さい頃からずっと一緒に育ってきたのよ」
他の二人もベラに同調する。三人は誰かが欠けるなんて考えられなかった。
「みんなも知っているだろう? あいつには戦闘センスがない」
「ですが、彼の魔道具には何度も助けられました。私たちのパーティーには必須です」
「あいつは魔道具を作るのが得意だ。でもその才能は冒険者の才能と言えるのか?」
三人は黙り込んだ。やがてハンナが口を開く。
「今、彼の才能は私たちによって潰されている。それはよくありません」
ハンナが肯定を示す。彼女がそう言うのなら。残り二人もアデルの意見に賛成した。
「と、言うわけで、パーティー会議を始めようと思う」
「待って? もう結論は出ているわ。話をすれば終わるだけじゃない」
「あいつが素直に従うと思うか?」
再び黙り込んだ。ハーディーはああ見えて頑固だ。ただ伝えただけではしがみついてでも着いて行こうとするだろう。
「茶番を打つってことか?」
「そうだな」
アデルは後ろから聞こえてきた声に返した。
「俺も混ぜてくれないか?」
アデルの後ろには金髪を後ろで一纏めにしたシーフらしき男が立っていた。
「俺はアイザック。ソロのC級冒険者で、パーティーでの役割を言うなら、斥候と遊撃かな」
アデルは不信感を隠そうとしないままアイザックと名乗った男を睨んだ。万人受けしそうな作られた笑顔が貼り付けられている顔。防具になっていなさそうな普段着のようなシャツとズボン。申し訳程度に刺してある腰のダガー。何よりその軽い話し方。全てが彼を怪しく見せた。
「勝手に話に入ってきて何をするつもりだ?」
エルガーが四人の心の声を言った。屈強な体を持つエルガーが睨むが全く気にしていないようで、アイザックは彼のペースで話す。
「その企みを手伝いたいだけだよ。その追放するハーディーさんの代わりがいれば、素直に追放を受け入れてくれると思うよ。それに、俺はこう見えて顔が広いから役に立つよ?」
彼は「考えておいてね」と言い残し、去っていった。
四人はその後も話し合いを続けたが、結論は出ないままだった。
ある夜、またギルドで話し合いをしているとアイザックがやってきた。
「何が目的だ」
「この前言った通りだよ。企みを手伝いたいって」
「企みを手伝いたい理由を聞いているんだ」
アイザックは考え込んだ。衝動で手伝いたいと言い出していたようだった。
「パーティーの追放は色々な理由があると思うけど、俺は誰かのためを思った追放を手伝いたいんだ」
「理由になってない」
「そうかも」
アイザックはアデル以上に不思議な奴だったが、なんとなく良い奴だとアデルは思った。
「アイザック、よろしく」
「お兄ちゃん!?」
「リーダー!?」
「アデルさん!?」
一人で突っ走ったアデルに三人は頭を抱えた。
その後、アイザックを含めて話し合い、一つのことを決めた。それは、ハーディーに冷たく接し、嫌われることだった。
作戦は迷宮から帰り、ギルドに報告しに行った後に行うことになっていた。アデルは部屋に帰ろうとするハーディーを呼んだ。
「ハーディー、君をこのパーティーから追放する」
冷静に、感情を表に出さないように。アデルは細心の注意を払って、まるで舞台の上の役者のように言った。
「え? 今なんて言ったの?」
「追放だよ。戦闘能力もない、魔道具しか作れない君はこのパーティーにふさわしくない」
「これからB級パーティーに上がるって時じゃないか! みんなで一流になって認められるっていう夢を忘れたの!?」
自分たちが一流の冒険者になることは無理だと四人はわかっていた。だから、一流になれる才能を持つ、ハーディーを送り出そうと決めたのだ。
「要するに、邪魔ってこと。これは私たち四人の決定よ」
ベラは泣いてしまわないようにハーディーを見なかった。
「お前に冒険者なんて向いてない。みんなで一流になる? それは子供の頃の夢、幻想だ」
エルガーはかつての自分を嗤った。
「私たちと貴方の道は違っていた。それだけです」
ハンナは自分の決断が正しいと思っている。淡々と事実を伝えた。
「僕は自分にできることをしていたはずだ! 消耗品を用意していたのは僕だし、戦闘でも魔道具で支援できていた。それに、B級パーティーになるタイミングでメンバーを減らすのは得策と言えないよ!」
その反論がくることはアデルが予想済みだ。用意されていた答えを返す。
「魔道具での支援は魔道具さえあれば、君以外でも出来るじゃないか。それにパーティーのことは君が心配することではないよ。でも、見せてあげる」
アデルは二回手を叩いてアイザックに合図を出した。
「紹介するよ。彼が君の代わりに入るメンバーのアイザック。シーフだよ」
「――!」
ハーディーはこの場に居られなくなったようで、逃げ出した。アデルは背中に馬車のチケットを投げつける。
「それは魔法都市国家アイリアへのチケットだ。出発は明日。もう顔を見せなくて良いからな」
「言われなくても!」
ハーディーは捨て台詞を吐いて立ち去った。彼が立ち去った後、四人の感情は溢れ出した。
「ハーディー。役立たずは本心じゃない。……ごめん」
「うぅ。最後だっ、たのにまともに顔、が、うぅ、見えなかった……」
「お前のこと、ずっと応援してるぞ! ハーディー!」
「エルガー、泣かないで。これが私たちが決めた道です」
「ハンナも泣いてるけど、ね」
「お兄ちゃんこそ!」
四人は固まって泣いていた。部外者のアイザックはこっそりと立ち去った。
ハーディーの出発の日、馬車が来るところの近くの宿を取って窓から見送った。アイザックは何かを話しているようだが、もう顔を見せなくて良いと言った手前、四人が直接見送ることはできなかった。
ハーディーが居なくなった影響は早速出ていた。以前はハーディーがハンナの仕事を一部代わっていたため、ハンナの負担が増えたのだ。アデルたちは以前より慎重に探索を進めなければならなかった。
彼らの楽しみはハーディーの評判を聞くことだ。遠い地で活躍する友のことを聞いて、自分たちも頑張ろうと思えるのだ。
また、ハーディーが新しい魔道具を開発したと聞いた時には狂喜乱舞した。
ある日、迷宮のモンスターにアデルの右腕が喰われた。ハンナの治癒術の効果は高いが、流石に欠損は治せない。なんとか止血はできたものの、手がなければ剣を持つことは出来ない。剣士にとって、腕は命と同等以上に重いものだ。彼らは「魔法都市国家に戦闘も行えるような義手を作る技術があるらしい」と聞き、向かった。
偶然か、必然か……。その技術を持っていたのはハーディーだった。
「君たち、ハーディーを追放した、無能なパーティーじゃないか! そんな奴らに売るものなんてここにはないよ」
「それはわかっているが、頼む……。義手を製作してくれ!」
エルガーは何度拒絶されても諦めなかった。地面に頭をつけ、頼み込む。
「どうしたの、リヴィ。――どうしてここに」
ハーディーが中から出てきた。四人は再会に嬉しいような、悲しいような複雑な気持ちを抱いた。
「もう顔を見せるな。ってみんなが言ったのにどうしてここに居るの?」
ひどく冷淡な声だった。彼らは、はっきりと拒絶されていた。
「お兄ちゃんが、冒険中に腕をなくしたの。ハンナでも無くなってしまったものは治せない。でも、そんな時に貴方の噂を聞いたの。魔道具で腕を作れると」
「追い出しといて、都合が良いのは分かってます。ですからどうか――」
それでも諦めなかった。アデルの腕のために、手段を選んではいられなかった。
「九百万ゴールド」
頭を下げていた三人がパッと頭を上げる。
「九百万ゴールドで売ってあげるよ」
五人は息を呑んだ。九百万ゴールドは彼らが持っている全財産を集めてもギリギリ足りない。
「九百万って言ったら小さな国の一年の予算じゃないか。義手は百万から作れると聞いていたが?」
アイザックはぼそりと言った。彼は一年前からずっと嫌われ役になろうとしていた。それは嫌われるための、恨まれるための言葉だろう。――もっとも、九百万が高いと思っているのは事実でもありそうだが。
「百万は生活をするための義手の値段だよ。戦闘に使う義手ならもっと高くなる。しかも利き手だ。妥協すると死ぬよ?」
「出すわ。九百万。それで冒険が続けられるなら」
ベラが言った。ただ、それは独断だったようで、彼女とその兄アデルの兄妹喧嘩が始まっていた。なんとしてでも稼ぐと主張するベラと危険なことはさせたくないというアデルはどちらも引き下がらない。
「ありがとうございます。代金は明日、持ってきますね」
ハンナはそれだけ言い残すと喧嘩の仲裁をしに言った。
結局、足りない代金はアイザックが持っていた金を出して解決した。
「本当にありがとう。君が友達で良かったよ」
アデルはハーディーに代金を渡しながら言った。
「友達? 僕たちの関係はそんなものじゃないよ。僕にとって、君はただの客だよ」
四人は息を呑んだ。彼らは友達だと名乗る資格はないと思いつつも、心の中で期待していたのだ。グッと歯を噛み締める。
「僕はもうここで一流の魔道具師として認められた。だから『戻って来い』と言われても、もう遅い。僕はここでリヴィと幸せに暮らすから」
完成後、彼らはハーディーが作った義手を受け取ると、すぐに帰らされた。だが、彼らの胸の中には達成感があった。
「面白い!」と思った方も「つまらない」と思った方も
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