模倣と原点の決着
「これがアタシの多彩な魅力のひとつ! 共感覚の力、これから存分に教えてあげるわ!」
「共感覚……おヌシ……!?」
「さあ見惚れなさい!」
剣を大きく振って空気を鳴らす。すかさず音のする箇所へアタシは強引に足を突っ込む。側から見ればただの奇行。
けれどもこれは奇行と吐き捨てるには惜しいマジックだ。
「《暴風の緑》!」
空中に突き刺した足から風が吹き、アタシはトレミューの元へミサイルのように飛んでいく。
「ヌ……ウン!」
トレミューの刀とアタシの剣が衝突する。
「まだまだっ!」
ギシギシと刃物が軋む音を聞きながら、空いた手をトレミューの刀へ向ける。
「吹き飛びなさい!」
「グヌ……ッ!」
またしても何も触れていない手から《奪色》を発動させる。
緑の風が荒れ狂う。不意をつかれた暴風に刀を吹き飛ばされるトレミュー。
ザリザリと足で地面を撫でてから追撃に移る。
「この子で仕上げよ!!」
右足を大きく振ってトレミューの腹部に叩きつける。その足は衝突寸前に銀色の鎧でコーティングされる。
《奪色》の銀、その応用だ。
「はあああっ!!」
「ク……!」
鎧に亀裂が入り、さらに勢いを殺しきれずトレミューは後ろへ押し飛ばす。
「おヌシ、やるではないカ! 拙者の力と渡り合ウとは見どころノ――」
「力の押し合いなんかに付き合うつもりはないわよ?」
ぴっとトレミューの腹部に指を指す。亀裂の入った鎧についた褐色の何か。血ではない。アタシの仕込んだ橙の色。
「いつの間ニ!」
「遅い! ――《爆破の橙》!」
付着した色へ対策される前に橙を爆破させる。爆発は鎧の亀裂に入り込み、内側から鎧を損壊させていく。もちろん鎧だけじゃなく、肉体にも直接ダメージを与えられる。
「グ……クハッ……カヨウな戦法ガ、できるトハ……! なるほド、これは拙者に真似できぬ……!」
共感覚。数字や音に色がついているように感じる感覚のこと。誰でも持っているわけではない、アタシの少し特別な何か。
普通に生きてたらあの音はこんな色、みたいな話の種にしかならないかもしれない。
でもアタシに限ってはそれが切り札の武器となる。
「アタシは他の誰かが見えない色をも操れる。これは模倣も何もできない、アタシだけの特権よ」
近くの鉄パイプをピンと指で弾き、響いた音の色を奪う。奪ったのはさっきと同じ銀の色。
《奪色》を身につけてからそれなりの時間は経っている。好きな色の音を出す技術は身についているのだ。
「もちろん奪った色の使い方だって……ね!」
ささっと手を振って鉄パイプに色を付着させる。硬い刃を薄く伸ばすように。作り上げる形は――
「鎌ときたカ……!」
宙へ飛び、体を一回転ながら鎌を振るう。遠心力を味方につけて威力を上げる。
「威力ハ申し分ナイガ、大振りを素直ニ受けルつもりはナイ!!」
身を翻して避けようとするトレミュー。けれど、そのパターンは織り込み済み。
「《氷結の水色》! その状態で逃げられるかしら!」
トレミューの足元を分厚い氷が覆う。コートの内側から取り出した水色の絵の具。アタシの手にはそれが握られている。
即興で高い出力を出すなら共感覚よりも自前の道具に限るのだ。
「受けてみなさい!」
「ヌ……いいだろウ!」
避けきれないと踏み、大楯で受け止めるトレミュー。
「ヌゥ……オオオ!」
それでも足が凍りついて踏ん張りが効かない今、防御力は落ちている。
「力押しで突破できるわよ!」
盾と鎌とが衝突する。殺しきれないエネルギーを盾に流し込み真っ二つに割るように。
その意志を込めて鎌をぐぐぐと押し込んでいく。
「ク…………!」
「いける……!」
盾に亀裂が入るのを感じる。今その盾は絶対不動の守りではない。亀裂を起点にしてアタシの鎌はただの守りを無理矢理食い破っていく。
「はああっ!」
「ヌォッ……!?」
盾を砕き、その勢いのままトレミューを斬り裂く。斬り払った反動を利用し、さらに追撃の蹴りを放つ。
「クッ……!?」
「いいプロテクターなのかしらね。かなりダメージは入ってはいるけれど、とどめまでは刺せないなんて」
斬撃に蹴りと立て続けに浴びせたものの、トレミューはまだ膝をつかない。盾とプロテクターとが鎌の威力を削いだのだ。
「異能もプロテクターも等しク戦闘の道具でゴザル。全てにおいて妥協ハありえヌよ……!」
「それでも苦しいことには苦しいでしょ?」
準備が万全でもダメージは確実に積み上がっているはず。トレミューの顔に消耗の色が見えているのが何よりの証。
王手には近づいている。最後に必要なのは決定打――。
「……確かニ、追い込まれてイルことは否定せヌでゴザル。シカシ! 勝利するのは拙者でゴザル!!」
両腕を天に掲げるトレミュー。その手にはそれぞれ赤と緑の刃物が握られている。
「いくつ異能をコピーしてるのよ……!」
「これらハ使えヌ異能だと思っていたガ、全てハこの時ノ為だったカ! さあ《奪色》よ、拙者に応えるでゴザル!!」
そう叫んだトレミューの両手が白く光る。そしてどろどろに溶けていくふたつの刃物。
「…………」
あの白い光はトレミューの異能。あれと刃物が溶ける現象には関係がない。そもそも刃物は溶けて消えたわけじゃない。色を奪われただけ。……コピーしたアタシの異能で。
赤と緑を合わせると……えっ。
「受けてミヨ!」
トレミューは右手の赤を振るった後に、少し遅れて左手の緑を振り下ろす。
炎が立ち込め、風がそれを煽り強大にする。理屈は分かるし、アタシも使ったことのある戦法だ。けれど、
「どうしてひとりで二色も使えるのよ!?」
しかし今は考えている時間はない。燃え盛る炎は、アタシが《奪色》で出したことのない威力を秘めている。
止まっている時間はないわね……!
「強力な水で掻き消す……!」
青い絵の具をたっぷりと使って能力を発動させる。
「使い方は……こう!」
作り出した水を自分の体を隠せるようなバリケードにして、それを何層にも重ね塗りするように増やしていく。
アタシの体、その一点だけ守れればいい! とは言ったものの、
「……っ、なんなのこの火力!」
水のバリケードと正面衝突した炎はあっという間に水温を上げる。シューシューと音を立ててバリケードが蒸発し、その蒸気が肌に触れる。その熱だけで力の差がはっきり分かってしまう。
「無駄でゴザル! 二色を扱ウ《奪色》と一色シカ使えなイ《奪色》、どちらが強イかナド一目瞭然!」
「この……!」
何層ものバリケードを用意したはずなのに一層、また一層と消えていく。
消えていくペースに追いつかれないように新たにバリケードを乱立させるも、それも勢いを増す炎の前ではまるで無力。
――防げない!
「っ、ああ……っ!!」
圧倒的な熱を全身に受ける。炎や爆風の熱は自分の能力で感じたことはある。
けれど《奪色》の技をふたつ同時に使うとここまで威力が上がるなんて。相手を倒すために使われる赤の色がここまで熱いなんて。
「知らなかった……わ……!」
「全身を氷で覆うトハ。大火傷は免れテモ凍傷にナルのではないカ?」
炎に包まれる寸前、アタシは水色で自身の体を氷漬けにした。水は蒸発してしまうけれど、氷ならもうしばらく耐えてくれると思ったから。
「その強い炎ですぐに溶かしてくれたから大丈夫よ……!」
水のバリケードが消える速さから、どのくらいの氷の厚さがあれば丁度溶けてくれるかは予測ができた。
そのおかげで氷漬けになって何もできなくなる、という状況は回避できたけれど――
「シカシ、自身の氷ノダメージは大きイと見えル」
トレミューは炎を何で防いだか、結局アタシには何が起きているのか、それを冷静に分析している。
その指摘通り、火だるまになるのは回避できたけれど代わりに手足の感覚が大雑把にしか感じられなくなっている。
「この状態じゃ、土壇場での二色使用も狙えないわね。どのみち、アタシにはできない芸当だけれど」
《奪色》で色を二色奪ってそれぞれの能力を使用する。アタシも考えつかなかったわけじゃないけれどモノにできなかった技だ。
理由は単純。アタシにはふたつの色のコントロールが難しかった。両方の色を操ることに意識を集中させることがどうしてもできなかった。
その代わりに、二色を混ぜて優れた一色を作る戦い方を重視した。様々な色の特色を合わせ持つ技を使おうと思ったわけね。
この二色から一色を作り出す技法はアタシの性に合っていた。見据えるべきは完成後の一色だけ。分かりやすかったわ。
そうして二色同時使用のことは忘れていたのに――
「……ほんと、まさか即興でコピーしてそこまで能力を引き出されるなんて」
恐らくコピーした異能を強化する、という効果を受けてのものだと思う。それでも、アタシがアタシの異能でできないことをさらりとやられるのは……腹が立つ。
「ナニ、そう難しイものでもナイ。右手で赤ヲ、左手で緑ヲ振り回ス。そう考えるだケで簡単に使えルでゴザルよ?」
「簡単? ……言ってくれるじゃない」
それは怒りか失望か。黙って聞いているのは我慢ならないという気持ちが込み上げてきて歯と拳に力が入る。
「《奪色》という異能は芸術のひとつなのよ! 同じ赤の力を使うにしても、威力や持続時間が同じなんてことはないの! 絵の具の色、奪った色、その色だけが持つ微妙な違いを理解し、能力に反映させてこそなのよ!」
同じ色でも効果範囲を狭めるべきか広げるべきか。触った時点で判断して利用する。
この異能に必要なのは戦闘センスじゃない。色彩を解釈する芸術的センスだとアタシは信じている。
「赤とか青とか単一の名前でしか色を認識できない相手に、《奪色》の使い方で負けるわけにはいかないのよ!」
「そうは言うガ、おヌシの戦い方デハ拙者に勝てヌダロウ! 《奪色》の力を引き出せテいるのは拙者でゴザル!」
挑発的な物言いと共に、再び赤と緑をそれぞれの手に灯すトレミュー。
「…………っ」
素直な色のぶつかり合いでは間違いなく勝てない。トレミューの言ったことは何一つ間違っていない事実だ。
この瞬間を切り抜ける色はあるにはあるけれど、その後のプランが思いつかない。
一度きりのチャンスは無駄にはできない。けれどもここで使わなければ確実に負ける。絵の具だって残り少ない、長期戦なんてやってられない。
「今ここで、あの紛い物を上回る威力さえ出せれば――」
「そこで《奪色》の強さを引き出せそうないいお土産があるんだけど。使うか?」
そんな声と共に投げつけられる紙袋。ここにはいないはずの声の主に戸惑いながら、とにかく中身を確認するとそれは――
「これって……! というか! いつの間に帰ってたのよ!」
「それは後だ! 今は勝つのが先だろ!」
「! ええ……そうね!」
今は頭を切り替える。袋の中の絵の具の瓶を、蓋を開けて正面にずらりと並べる。それはまるでポーカーで強力な役を見せつけるように。
待って、これなら……。
「これなら……勝てるわ」
「絵の具を増やしタところデ何ガ変わル! おヌシが使えるのハ一色ノミ! 拙者の業火の前には無力でゴザル!!」
アタシには防げないと思っている――実際に普通にやれば防げないけれど――猛火と暴風の合わせ技を発動させようとするトレミュー。
――先手は取らせない。
「うるさいわね! 戦いの主導権を握るのはこのアタシよ!!」
並べた絵の具の一つを掴む。そのままトレミューの足元へと即座に飛ばす。
それは光を通さないまさに漆黒。普段使いの絵の具や手近な物には見られない本物の黒。
「――《吸引の黒》!!」
「ヌッ!? この色ハ!? 何ダこの力ハ!? 体が動かせヌ……!?」
トレミューの足元の小さな黒点は、その大きさに見合わない強さでトレミューの足を引きずりこみ、固定する。
「コピーができるその異能! 何ができるかはともかく、詳細な色の効果までは教えてくれないみたいね!」
あの能力は奪った能力の基本的な使い方しか教えてくれない。これはなんとなく予想がついていた。
もし全ての色の効果が分かるなら、最初から黒で動きを封じればいいのだから。
けれども黒を使うそぶりは見えなかった。ならそれは黒の効果を、各色の持つ効果を知らず、推測もしくはアタシの技を見て使っていることになる。
もしも黒の効果を知られて、黒同士の綱引きになれば負ける。だからぎりぎりまでこの技を見せるわけにはいかなかった。
「グ……! 拙者はこの程度デハ負けヌ!」
それでも。吸引に抗いながら腕をじわじわとこちらへ向けようとするトレミュー。高い身体能力で強引にこちらへ照準を合わせるつもりね。
「この力は知らなかったガ……拙者の動きを止めルこと能わズ! この程度ノ妨害、すぐニ蹴散らスでゴザル!」
「別に止められなくてもいいのよ。……遅延さえできればそれで」
アタシは《奪色》の力を二色同時に撃ち出せない。それは防御しながら同時に反撃できないということでもある。
色を奪う。能力を使う。そして別の色を奪う。能力を使う。みたいにワンテンポ遅れて隙ができてしまう。
強化されて上位互換となった《奪色》相手にそれは致命的な隙になる。だから先手を取られるのは避けなきゃいけない。
でも《吸引の黒》で足止めができる状態なら?
「じっくりと攻撃準備ができるのよ!」
深呼吸して絵の具を眺める。これをもらった時に閃いた、今まで試したことのない方法。
もしかしたら二色の能力の同時使用を超えられる方法。
「おヌシ……そんな真似ガできルと思っていルのカ!? 無謀でゴザル! そんナ博打に出ルしかナイ者ニ負けル道理はナイ!!」
叫ぶトレミューの目に映るのは7つの絵の具。色は左から赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。瓶の色だけで何がやりたいかなんて一目瞭然。
描きたいものが分かったからといって、そこに至る方法まで理解されたとは思わないけど。
「七色の同時使用をするとでも思ったわけ? 準備のない挑戦よりも……アタシは! 磨いた自分の技術を信じる!」
七色の絵の具をそれぞれ取り出し、ひとつに融合する。
「アタシが使うのは七色じゃないの。……虹色という、鮮やかな一色!」
七色全て混ぜ合わせて最高の一色を。言うは易しでも実際には集中力が必要な繊細な作業。
色を平等に扱って虹色の各パーツにしていかなくてはならない。
「面白イ! おヌシのその技、受け切ッテ我が手中に収めて見せよウ!」
突如、こちらに向けようとしていた腕を止める。赤と緑の能力を解除し、空いた手をそのまま自分の服へと運ぶトレミュー。その狙いは――
「自分の軍服……! 黒を使う気ね……!」
手を伸ばしたのは身に纏った黒い軍服。その色を奪い《吸引の黒》を発動させるつもりだ。
――それも私よりも上の出力で。
「この強力ナ技、拙者ガ使えバどうなるカ! いざ、試そうゾ!!」
《吸引の黒》の効果も弱まってきている。あの宣言通り、程なくしてあっちも能力を発動させると思う。
だったら、受けて立つまでよね。
「上等じゃない! もうアタシは撃ち負けないわ! アタシの芸術の完成形で迎え撃つ!!」
七色を混ぜてできた虹の塊を掴み取る。一色の力を解放するのとは比較にならないエネルギーが詰まっているのを感じながら、それを解き放つ準備をする。
――この世界はアタシのキャンバス。アタシの存在を主張するように、強く、鮮やかに、
「鮮烈に染める!! ――《彩上の虹色》!!」
何条もの様々な色の光が伸びる。七色を湛えた光が相手を焼き尽くさんとばかりに直進する。
その周りを赤や青といった虹色を構成する光が衛星のように付き従う。それはまるでひとつの宇宙を作るように。
「天晴れでゴザル! その輝キ、拙者が食らウ!! ――《黒》ヨ!!」
トレミューの正面に漆黒が広がっていく。それはアタシの虹を包むように、侵食するように、形を変えて広がっていく。
「虹が喰らい尽くされたらアタシの負けってことね……やってみなさいよ!」
黒と虹が激突し、辺り一面に様々な色が散らばっていく。鮮やかに絶えず変化し続ける虹色とそれを塗りつぶそうとする黒。
「素晴らシイ、素晴らシイ輝キでゴザル! これを制しシ、糧とシ、更なル高ミへ至ろうゾ!」
「く……どこまで吸い込めるのよ……!」
アタシは《吸引の黒》を、相手の動きを止める、攻撃しやすい位置に引き寄せるものとして多用してきた。
けれどトレミューの使い方はそれとは違う。対象をどこまでも吸い込んで我が物とする。彼の異能そのもののような技に変貌している。
あれはアタシの知る《吸引の黒》じゃない。見た目は同じでも本質が根本的に変わった何か。
「く……!」
そんな不気味な異能を倒すための虹色なのに。本当に打ち倒せるのか不安がよぎる。
信じて作ったアタシの色が、無限の黒の中でも主張できるのか? それだけの輝きをアタシは出せるのかしら……?
「エマ! その絵の具は質が良いものを買ってきたつもりだ! アンタの普段使いのものよりもな! それなら《奪色》の強さも2倍くらいになるんじゃないのか!?」
背後からの声にはっとする。
ユウの言う通りこれは普段のもの以上の高級品。それは扱っているアタシが一番よく知っている。
けれどその品質が威力に影響する、なんてことはそこまで考えたことはなかった。弘法筆を選ばず、がアタシの好きなスタイルだから。
でも。もしも弘法が筆を選んだなら――?
そこまで考えた時には勝手に言葉が口から出ていた。
「馬鹿言わないで! 100倍強くなるわよ!!」
叫んでからさらに力を込める。色を深く感じて……余すことなく使い倒す!
「アタシの芸術の真髄、見せてあげるわ!」
《上書き》による後押しで《彩上の虹》の勢いが増すのを感じる。
でもそれだけじゃない。アタシ自身は今、奪った色とこれまで以上に向き合えている。
「これが《奪色》の本当の力よ! ただ色を奪ってコピーするだけじゃ到達できない領域、受けてみなさい!」
虹が黒を塗りつぶしていく。漆黒を自身の引き立て役にするように、虹は黒のキャンバスを泳いでいく。
吸引の力をものともせず、自由に駆け巡る虹はもう誰にも止められない。
「グ……拙者の強化デ、なぜ吸えヌ!! オリジナルの異能ニ……拙者が負けるナド……!?」
トレミューの《黒》の勢いは衰えていない。単純にアタシの異能がそれを凌駕しているだけ。
「理由が分からないなら教えてあげるわ。……《奪色》は奪った色を使う異能。奪った色を思考停止で強化するだけじゃ、能力は応えてくれないのよ!!」
「グ……ヌオアアアアッッ!!」
暗闇から光が生まれる。それは黒の障壁を突破し、他人の絵筆を取っていた男を包み込む。
花火のような爆発の後に残るのは倒れた男。周囲に飛び散った絵の具が引き立て役になり、ひとつの作品を作れたように見える。
「ク……馬鹿ナ……!?」
それを見てアタシは満足気に口を開いた。
「アタシの勝ちよ。異能を使った芸術、少しは勉強になったかしら?」




