模倣と昇華
「先程の戦い、見ていたでゴザル! 素晴らしイ異能、ぜヒ手合わせ願いたイ! そしテ、そしテ! ソレを我が手に収めたイ!!」
異能でできたゲームのような剣、この国の人間とは思えない人種の顔。そして珍妙なしゃべり方で乱入者は叫ぶのだった。
「な、なんなのこいつ……? 外国人?」
外国人に見えるけれど操る言語はこの国のものだ。まあ、喋り方はあまり聞かない感じだけれど。
それよりも問題はいきなり襲いかかってきたということ。まず間違いなくこいつは敵。後腐れなく痛めつけることができる。
もっともアタシが動く必要は無いかもしれないけれど。
「余所見はさせません。それに、空無色さんばかり戦わせるわけにもいきませんしね!」
レイピアを持ち上げ、互いの武器がふわりと浮く。その最中、レイピアは限界がきたようにぽっきりとその刃を地面に落とす。
元々急造のレイピアだ。保たないことは先刻ご承知だろう。折れた得物に視線も向けず、即座にチョークで籠手を描く。
「《白亜の籠手》!!」
左手で描き、右手に装着。その動作を武器が持ち上がった反動を利用することで、生じる隙を短縮する。
「なんト!」
「はああああっ!!」
浮き上がった拳を反転、振り下ろす。重量と速度の掛け算は強い爆発力を生む。
「……っグ、いい一撃でござるナ……!」
それを大きな盾で受け止める闖入者。持っていた剣とは雰囲気の異なるシンプルな大楯。衝撃は届いていても、爆発力は大きく減衰されたことだろう。
「防御用の装備……! しかしその意匠は……!?」
「この伝わってくる衝撃……ウム、その異能、ぜひトモ借り受けタイ!!」
盾を投げ捨て、空いた手で先生の腕を強く掴む。しっかりホールドされていてパンチを繰り出すために引き戻すことも敵わない。
逃げられないまま男の声が響き渡る。
「――《借りる八合、成す一升》!!」
「…………!」
男の手が光り、先生から見えない何かを奪っていった――ように見えた。
「フム……このように使えということでござるナ」
納得したように男が呟くと、どこからともなくチョークが現れる。そして見えない力に引っ張られるようにして立体物を描いていく。
嫌な予感がしたところで男はとんでもないことを口走る。
「――《白亜の籠手》!!」
「嘘でしょ!?」
「くっ――《白亜の籠手》!」
男が作り出した純白の籠手は先生が身につけているものと瓜二つ。それに呆気に取られつつも即座に先生は反応する。
拳と拳がぶつかり合い、それぞれの力が逃げ場所を失い爆発する。その衝撃でふたりはお互い背後へ飛ばされる。
「ヌ……本家の力はやはり侮れなイでゴザル」
「この異能……こんなことが……!」
さっきの攻防、相手が何をしたのかは一目瞭然。
「他人の能力をコピーできるなんて厄介ね……」
あのパンチは紛れもなく進藤先生の異能だ。さっき掴まれた時の光から見て、触られるとコピーされると思っていいかしら。
「それだけではありませんよ、空無色さん」
けれどアタシの分析を補足するように、驚きで満ちた声で先生が告げる。
「コピーされた異能ですが、幾分強化されています……! 彼が使う《教育》は私のものより出力が上です……!」
「よくゾ気づいタ! 重ねて見事でゴザル! 《借りる八合、成す一升》は他人の異能を強化し、我ガ物とスル! お主ラの異能の強さの果テ……それを拙者は手にスル!」
カカカッと手にしたチョークで何かを描く男。奪った異能なのにぎこちなさが全く感じられない。
「名前はそちらに合わせるでゴザル! ――《白亜の甲冑》!!」
程なくして完成したのは白い甲冑。しかしそれは先生の使う西洋風ではなく、戦国武将のような和風のもの。
「自分で技を作ることすら可能とは……!」
「フハハ! 拙者のコードネームはトレミュー! お主ラの鍛えし異能をさらに昇華セシ者――!?」
「……うるさいわね。他人の異能で誇るなんてプライドはないのかしら?」
聞くに堪えない口上についカッとなって異能を使ってしまった。選んだのは銀色。技名は《刺突の銀》。全てを貫く輝く槍。それは純白の甲冑の肩の一部を貫通し、破壊した。
……これなら勝負になるわね。後でまた先生に説教されるかもしれないけれど。
「ま、いいわ。芸術性のかけらもない異能を塗り潰さないと気が収まらないし。その後はその後ね」
先生の前に歩み出る。ここは今からアタシの舞台だと言わんばかりに。
「模倣なんかよりも創作の方が強いってこと、このアタシが教えてあげるわ」




