【カメレオン】
俺たちは小田川さんに連れられ会場から離れた。
「小田川さんも見てたん? 【鬼没は御守り】の試合」
「見てたよ。すごかったね」
「すごかったねって……そんな次元じゃ」
「………」
「もう! クヨクヨしない!!!」
下を向きながら歩く俺たちに向かって叱責する小田川さん。
「そんな調子じゃ勝てるのも勝てん! それにあいつらと戦うの決勝だよ!! 今から気にする方がおかしいよ!!」
「そ、そうやけどな……ま、うんそうだよな」
確かに今更気にしたところで意味ない。俺たちは先のことを見据え過ぎたかも……
「あおり、悪い。結構取り乱した」
「俺もごめん……」
「喧嘩は終わったね! じゃあやるよ! 敵チームの対策!!」
こんな簡単に修復された。何という聖母力なのだろうか。
けどそういや……
「2人ほど足りなくない?」
あのあおり目当てで来た二人。えっと……名前なんだっけ。
「えーことびーこなら逆ナンしに行ったわ」
「逆ナン!?!?」
「蒼君が望み薄だから大会会場でいい男探そうって」
逆ナンってマジであるんや!! あと大会を合コン会場とでも思ってるの!?!? その勇気を讃えたいんだが!?!?
「あっ、帰ってきた」
我々の英雄たちの凱旋である。が、なんかすごい落ち込んでいる。
「【GMRL】の人たち爽やかイケメン集団で狙ったけど……」
「負けたあとのタイミングだったからかな? 邪険な態度取られた……」
「いや、けどあれがベストしょ? うちらの包容力で慰めて頂いちゃう。的な?」
「良いと思ったんやけどね」
「君たちの初セリフそんな会話でいいの!?」
「大丈夫す。多分もうセリフ無いんで」
「平気よ。それより早く探しに行こう! こんなに人いる! イケメンたくさんいるはず!」
「そうね! 早く行きましょう!!」
そう言いさっそうと駆けて行った2人。
「始まるわよ。彼女たち気分屋だからやりたいことできなかったら出場しないかもしれないから。放置が賢明よ」
「そ、そっか」
不安要素二人を除いて俺たちの作戦会議が始まる。
****
「一回戦の対戦相手は【カメレオン】。自分のやりたいことを優先的に戦ってくるチームよ。勝ち負け関係無しに。
だからその日によって戦術もキャラも全部ランダム。だから特に対策という対策はできない」
「自分のやりたいことを優先してくるか……」
「そういうチームが一番対策取りづらいよな……」
「今までの傾向とか調べてみるか」
「それなら調べてある。めっちゃ単純だった」
小田川さんがタブレットの画面をスワイプさせながら見せてくれる。
《対戦相手への感情》
喜‥サバイバーたち意気揚々とプレイ。ハンターも然り。→勝ちを狙う。
怒‥サバイバーたち粘着キャラを使用。ハンター、怒りの対象を地獄の果てまで追い続ける。→勝ち負けどうでもよし。
哀‥サバイバーたち解読キャラを使用。ハンター、比較的早く終われるキャラを使用。→とりあえず早く終わらせたい。
楽‥喜と同じ。
*粘着キャラ‥ハンターの行動を制限してくるキャラ。気絶させたり、攻撃できなくしたり、叩かれたりするぞ!!キラーん
「え!? これ全部小田川さんが調べたの!?」
「当然でしょ。大会なんだからこれぐらい普通よ」
俺……大会舐めてたかも。
「とりあえず! この人たち大会の常連だから情報いっぱいあって色々調べれた。向こうが自分達のことどう思っているかが分かれば完璧なんだけど……」
「そう簡単に分からんな。それは」
「こういう時、俺に人の心を読む力があればな」
「非現実に頼ろうとすな」
公式は分かる。けどこれをどう活用すれば良いか分からない。まさにそんな感じだった。
今までは公式すら知らず捨てていた数学だったが、今は公式は知っている。正解の一歩手前まで来ているのに解けないこのもどかしさを、まさかゲーム関連で感じるとは。
やっぱりゲームは勉強より大切なことを教えてくれる!!
「おいおいおめぇーだよなー? 【カラスは巡視者】チームはよー?」
突然声をかけられ俺たちは立ち上がる。誰だ? ヤンキーみたいな雰囲k………いや、メガネ集団??
俺たちの目の前にはヤンキーの絡み方をするメガネ集団がいた。
「そ、そうですけど」
「やっぱりそうだよなぁ〜……初出場ながら……」
お? 知ってくれてる。カンテンが言ってた通り、俺たちかなり有名になってるのかもな〜なんか嬉しいな。
「“女子”入れてチーム組んでる奴らだよなぁ゛!!!」
「……ん?」
「それもこんな美人な女の子とゲームしてよぉ……ぶち殺◯てやろうかぁ゛!!」
「………」
思ってたんと違う……来たのは黄色い声援ではなく、どす黒い怒号でした。
怖かったんか、小田川さんが俺の背中に隠れる。
「うわ! 見せつけですか!?!? カレカノ関係ですか!?!? いやーね! 大会にまでいちゃつきにくるなんて!!」
「待て! 彼女たちに非はない! 怒りの矛先を間違えるな!! 悪いのは……こいつらだ!!!」
と、俺とあおりを交互に指差しながら言ってくる。え、俺たちにも非なくない? どうしてもって言うならあおりだけで許してくださいよ……
「お前たちを絶対成敗してくれ「ウラヤマシイ」る!! 我らリア充撲滅委員会【カメレオ「ウラヤマシイ」がな!! 痛い目見せてくれよう!!」 「ウラヤマシイ……羨ましいぞ!!!」
「ところどころを『ウラヤマシイ』うるさすぎだろ!!」
彼らリア充撲滅委員会たちはなんか叫びながら去っていった。
な、なんだったんだ……言いたいことだっけ言って消えやがった。
「あれよ」
俺の背中で隠れながら彼らを指差す小田川さん。
「あれが【カメレオン】よ。インタビューとかで見た」
「え、んじゃ。あいつら俺たちに……」
嫉妬? んじゃ、怒りってことじゃん。
「あおり、多分お前ずっと追われるぞ」
「うん、そんな気がしてならないね。雄馬は……ま、耐えたらなんとかなるんじゃない?」
「そだな。多分勝ちより俺たち男をボコボコにしにくるから……落ち着いて戦おう」
問題が解決した瞬間だった。




