王者【鬼没は御守り】
*カンテン*
「あっ! 来た来た! カンテ〜ン。こっちこっちー」
「わりわりー待たせたな」
ニカッと笑って遅れを帳消しにするカンテン。
「帳消しにできるわけないでしょ! アナウンスされるの予測して収集場所の近くにいとく! 鉄則でしょ!」
「あははは〜すまんすまーん!」
「なんか軽い!!!」
「まぁまぁ、落ち着いて」
「………」
「ど、どんまい……」
長身の男がガミガミと怒っている彼女を宥めている。それを見つめる無口なもう一人の女の子とおどおどしながら励ます男。
「よし! じゃあ運営に言いに行こか!」
「私たちはもうしたのよ! あとはカンテンだけ」
「そかそかーんじゃ行ってくるわ」
「カンテン!」
「なんや〜まだなんかあるんか?」
「ナイトメア・ディザスターはどうだった?」
「あ〜……」
そうカンテンは4人で行動してたのだが、『あ、ナイトメアある! ちょっくら行ってくるわ!!』といった調子ではぐれたのだ。
「あのあと私たちは人に流されちゃったけど」
「どんな奴らだった? なんか情報手に入れたか?」
「………」
「き、気になるね。戦う相手かもしれないし……」
次々に質問攻めしていく仲間達。やっぱりみんなも気になってたんやな〜そりゃそっか。
「良い奴らやった!! めっちゃ話弾むしな!!」
「お前は何しに行ったんだよ!!」
「ん……情報なしか……」
「………」
「じょ、情報のない敵!? こ、怖いひぃぃぃぃ!!」
最初の頓珍漢な感想を述べたカンテンに少し不安に思えたが、次の彼の言葉でそれが払拭された。
「まぁ、やけど……俺“たち”の敵やないで?」
いつも陽気に笑うカンテンとは思えない姿を前に集中力が上がる。
まるでカンテンの意志に呼応するかのように。
「派手にかましたろうや! 俺たちの特大ステージに彼ら招待したったからさ!」
「それ宣戦布告じゃない!」
「してきたならしてきたと言いなよ」
「………」
「ぼ、僕には到底できないよそんなこと」
そういや2人に言ってなかったな。多分2人の思ってるダークホースと俺の思ってるの違うわ。
俺の解釈のダークホースは……
“まだ本当の戦いを知らない子馬”
としか思ってへんから。
ま、勝ち上がってきてほしーな。
そのために色々教えてやったしな。
【鬼没は御守り】。彼らは前大会の優勝者である。
「!?あんたまだ運営に行ってないじゃない! 失格になるわよ!!」
「やべっ、行ってくる笑」
なんとも場は締まらないが、彼ら彼女らは兜の緒は締めたままである。
*向井雄馬*
「な、なんだよあれ……」
「すごい爆弾の精度」
俺たちは空いた口を閉じて、とりあえず会場へと向かった。カンテンが言っていたのが本当ならそこに彼がいる。
そしてそこで戦う。敵になるかもしれない相手。この目で見なくてはとすぐさま駆けた。
《おら〜盛り上がってるかぁぁぁぁぁああ!!!》
着くと今まさに本戦が始まるような雰囲気。俺たちは出来るだけ前にいこうと試みた。近くでできる限り近くでと。
《ほいじゃ〜第一回戦の組みを紹介していくぜ〜!!! Bブロック代表!!
第五の基本を知りたいなら俺らを見ろ! シンプルisザ・ベスト!!! 二年連続! 安定して勝ち上がってきた〜!! 安定収入! 別名公務員! 【GMRL】だぁぁぁぁあ!!!》
実況解説者が紹介したと同時にゲート付近から煙が上がり、その中から入場していく【GMRL】の選手たち。そしてそれぞれの椅子に座っていく。
本戦常連組だからだろうか? 佇まいがオーラを発してる。やばいやつを。この人たちとカンテンが戦うって想像付かない……
《対戦相手は〜……Gブロック代表!! 未だ負け無し。二年前に突如として現れた刺客だった……だが今となっては王者!! 勝ったものが王者だ!!
第五界における革命家集団!! 【鬼没は御守り】!!!!》
ほ、本当に出てきた!! カンテンを先頭に5人が入場してくる。
「ゆ、雄馬。お、王者だってよ……」
「き、聞いたよ……」
「そ、そういやそういう情報全く調べてなかったな」
「と、とりあえず練習ばっかで相手の研究とかしてないな……」
なんか一気に優勝が遠のいた気がする。井の中の蛙 大海を知る。とはこのことだろう。
別に大会を舐めていたわけではない。けど、楽しさだけで乗り越えれないのが大会。もっと準備しておくべきだったと痛感する。
《両リーダーからそれぞれ一言もらいましょう!! それでは【GMRL】から!》
マイクを差し出され受け取る1人の男子。
「えーと……いきなり王者・【鬼没は御守り】さんたちと当たるとは思ってませんでした。なんやかんやいって、初めて戦わせていただけるので胸を借りるつもりで頑張ります!」
【GMRL】の一言を終え会場が拍手に包まれる。
《ありがと〜ございました!!! 一言もシンプルでしたね!笑 では次!! 対戦相手の王者である【鬼没は御守り】!! お願いします!!
カンテンがマイクを持つだけで会場が拍手で包まれる。拍手に混じって黄色い声援も送られている。
「どうもおおきに〜! 【鬼没は御守り】のカンテンやで〜!!!」
この親しみがある大阪弁が会場の空気を軽く軽くする。そういやここ東京やけど関西から来てるんかな?
「今日は沢山の方々がいますね〜!! めっちゃ嬉しいですわ!! 今日の大会もいろんな特色をもってるチームがゾロゾロいてはるんで! みんなたのしんで見てくださいね〜!! とまぁ〜もっといろいろ喋りたいところではあるんやけど! こんなとこでベラベラ喋られても皆さん困るやろうからね! 最後の締めは手短にするな!」
「十分長いわ」と横にいる女の人にスリッパで頭を叩かれる。そんな光景に観客は笑いで包まれていた。す、スリッパって家の中限定芸じゃないんだ……
「見とけ」
!? 笑いに包まれていた会場が一気に静まる。
「俺が魅せたる」
カンテンから放たれた言葉で静まり返った会場が祭り会場へと豹変する。や、やばい、盛り上がり方が異次元すぎる。
こ、これが大会。
俺とあおりは会場の熱に呑まれた。言葉が出ない。出るのは額からの汗だけだった。
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結果はカンテン達の圧勝だった。本戦も予選と同じルールでそれぞれ試合を行いサバイバーが逃げた数の多さで勝ち負けを決める。
【GMRL】チームは【鬼没は御守り】のサバイバーを一人も違えることができなかった。
素人が見ても分かるような神連携。全員上手いのは当たり前なんだが、さっきスリッパでカンテンを打っていた女の人が司令塔かな。状況をしっかり共有して慌ててる姿が一切見受けられなかった。
ま、けどもっとやばいのは……
「なんだよ……えぐすぎだろカンテン」
「“通電させず”に4吊りか……」
このゲームで逃げるにはマップ上に存在する暗号機と言うものを解読しなければならない。それを5台解読するとマップから出られるゲートを開けるようになる。
5台の暗号機の解読を終えてあとはゲートだけ! ってのを通電したという。
そう、【鬼没は御守り】のハンターは逃げれるという希望も与えず全滅させたのだ。
そのハンターは言わなくても分かるだろう。
カンテンだ。
「ガチでやばいな」
「あんなん見せられたらちょっと……」
「あきらめんなよ」
「は? 誰が諦めたなんて言ったよ。あんな化け物ハンター相手するのは俺だぞ。人の気も知らないで」
「そんなこと言ったら俺もだろ。あんな神連携ばっかしてくるサバイバーたちに1人で立ち向かわないといけないんだよ。良いよな、そっちは4人で団体戦で」
先程の試合で余裕がなくなったのだろう。初めて突きつけられた負けという概念が向井たちを焦らせ、結果軋轢を生むこととなった。
だがそのヒビがはいったチーム関係を彼女が治す。
「こんなところにいた!! 早く来て!!」
小田川乃音の登場。
「な、なんだよ」
「今から何するって……「決まってんでしょ!!!」
小田川さんはバックからタブレットを取り出して俺たちに向ける。
「対策よ! 次の相手の!!」




