素晴らしい可能性に出会い新たな決意
「え!? なにそれ! 酷すぎ!? 向井くんもかなりやばいね!」
「ですよね……まじで辛いっす」
あれから立場が逆転し、俺が話を聞いてもらっている。
枚田さんはすごい親身になって話を聞いてくれる。やっぱ誰かに話をしてよかったな。
あのまま抱え込んでる時より断然いい。
「けどさ、配信休止ってファンには言ったの? かなりの配信事故だし心配してんじゃないの?」
ちょっと俯く。俺にとってそれが一番の悩みの種だからだ。
「コラボ配信以来……スマホの電源つけてないんです。コラボ日の時はそのまま寝てしまって……んで、今日呼び出しです。
活動休止の旨は会社からやっとくと……」
「うん、それで?」
「……え? それでってどういうことですか?」
「? まだ続きあるだろ? なんかそんな気がする」
なんだ、この見透かされた感は……2回しか会ったことないのにこの理解度とは……恐れ入る。
「ぶっちゃけ言うと、こんな罪を着せられてVtuberの業界をやめる前に今まで俺の活動を応援してくれてた方には俺から説明したかった。
けど………怖いんです。部長から炎上してるって言われて、ファンも俺のことをネットで叩いてるんじゃ? DMでアンチ送ってきてるんじゃ? と悪いことを考えてしまうんです……
ファンを信じたい! 絶対俺の味方だって!
けど……怖いんです。つい先ほど尽くしていた会社から裏切られたんで」
自分を雇ってくれた会社が自分を切った。この事実は向井をかなり苦しめる。
「……向井くん、怖いならやらなくていい。けどね……怖いからといって逃げていいわけではない。
何事にもいろんな可能性が存在するんだ。
今回ならファンがアンチになっている“かもしれない”やファンが今でも応援してくれている“かもしれない”。いろんな可能性がある。
それなのにやらないって選択肢は面白くなくないか? 人生は長いんだよ? いろんな可能性を秘めた出来事をたくさん体験したやつが一番人生してるよ。 失敗は引きずれ! けど進むのはやめるな!! 道はどんな時も広がっている!!」
なんだ、この胸に刺さる言葉は……枚田さんがクビになったのはつい先日。それなのにもう就活を始めている彼女。
だからこそ言葉に重みを感じる。
彼女の今の現状を知っているからこそ感じる。
「だから大丈夫! 思い切って見てこ! なぁ〜に! やばかったら私を見ろ! めっちゃヨシヨシしてあげる!」
「え、大丈夫です笑」
「なんでよー!!」
なんか吹っ切れた気がする。今はなんも怖くない。自信を持って見れる。
「できればファンが今でも応援してくれてる方がいいから、そっちの可能性を信じようかなー!」
「うん! そうだね! その調子だよ!」
俺はショルダーバッグの中に入れていたスマホを取り出す。
画面は当然真っ暗。そのスマホの両端を長押しする。
真っ黒な液晶画面の真ん中にリンゴが出現する。
それがふっーと消えると、ホーム画面が開かれた。タイムラグにより電源を切っていた間の通知が表示されない。
だが、ものの30秒。変化は急に訪れた。
ぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶーぶー
通知音が乱波する。
主にツウィッターから。
開くと最爽のファンからだろうか? 配信で見たことない名前の人たちからアンチが大量にDMに送られていた。
《お前なんかがエリーとオフコラボとかおこがまし。ガチ消えろ》 《オフコラボはまじで考えられない。人気になりたいからって炎上は草》 《何も考えず先のことを見通せないバカが調子乗るな》 《お呼ばれしてもらってる立場で勝手な行動って非常識すぎないですか〜? 頭おかしいんですか〜?》
といったアンチ。まーなんかここまできたらなんも思わん。まーこう言う可能性も予想してたしあまりダメージはない。
俺はどんどんスクロールしていく。その中で見つけた。俺の求めていた可能性を。
《大丈夫ですか? 活動休止残念ですが、私はレンを信じています!》 《活動休止ってガン泣きなんですけど(泣) 人生の生きがいがなくなります……》 《あの様子見るにレンはオフコラボが炎上発火材って知らなかったようだし、最爽エリーからの申し出じゃないんですか? レンはしっかり者だからそう言うの知ってたら絶対やらない人だと分かってる》 《レンはそんな人じゃないって分かってます。絶対何かの手違いですよね!? 会社凸っていいですか????》 《私はいつまでもレンが推しです!! いつまでも待ってます!!! そしてまた配信見れる日を……(泣)》
ファンからの応援DM。やはりファンのみんなは俺を信じてくれたんだ……あかん、まだ涙が込み上げてきた。
「向井くん見て」
枚田さんがむけてきたスマホ画面にはぐらぶるダクション公式からの狡噛レンの活動休止という内容のツイートだ。
「リプ欄、アンチも多いけど擁護している向井くんのファンも多数いるよ!」
あかん、もう俺の目で洪水起こってます。信じていたけどこの目で見ると本当に我慢ができない。
俺は短時間で2種の涙を流した。枯れることはない。
「んで、どうするの?」
落ち着いた俺は冷めたチキンステーキを食べていた。冷めてても美味しい。
「ん? 何が? 俺はこのまま一日中優しい世界を感じてようかと」
「そう? なんか向井くんは「こんなの見てうじうじしてられっか!? 俺を信じてくれる限り俺は突き進む!!」とか言ってなんか普通では考えられないこと知ると思ってたんだけど」
「どこの世界線にそんな熱血野郎存在するんですか……」
俺は改めてファンの大切さを知った。だからこそ、ほとぼりが冷めるまで……
いや、違うな。みんなは待っていると言った。けど、俺がぐらぶるダクションのツイートをしたと思ってない。
それなのに俺はぐらぶるダクションが公開した無実に屈していいのだろうか?
否! そんなことファンが許さない! 俺自身もだ!
じゃあ俺がやることは一つだ。
「枚田さん……俺配信します! これからもずっと! ファンが待ち続けるかぎり!」
「ほらーいるじゃん熱血野郎〜」
最後まで読んでくださりありがとうございます! 次回も読んでくれると嬉しいです!
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