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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
701戦闘団始動
9/68

接敵



 『第3航空艦隊所属第3中隊、邀撃高度に到達』

 『同じく第2中隊、邀撃高度に到達』


 ヘッドセットに邀撃戦闘機が邀撃体勢に入ったことを知らせる声が響いた。

 ヘッドセットを耳からずらす。

 右手の空を見れば、雲間に煌めくものが見えた。

 下腹が陽光を反射し銀色に煌めいているのだ。

 帝国国防空軍ルフトバッフェの2個中隊32機のbf109Kやbf109Gが編隊を組んで飛んでいた。

 第3航空艦隊は、西部戦線に展開する航空部隊で3個飛行隊9個中隊の昼間戦闘機部隊と少数の夜間戦闘機部隊で編成されている。

 雲間からはbf109の搭載するダイムラー・ベンツDB605エンジンの力強い音が聞こえてくる。


 『これより、邀撃戦に移行する。全機続け!!』


 ヘッドセットから聞こえてくる邀撃部隊の指揮官の声だろう。

 先頭を行く指揮官機が加速するとそれに合わせて、編隊各機が増速する。

 敵の爆撃部隊との距離は、さほど遠くなく俺もあと5分程度で接敵エンゲージするだろう。

 

 『第2航空艦隊所属第4中隊より第3航空艦隊各機へ通達、我、残弾なし。これより帰投する』


 フュッセンの防空指令部が、爆撃機部隊の北上を察知してから敵爆撃機とその護衛戦闘機を相手どって来た地中海沿岸に展開する第2航空艦隊の邀撃部隊は、すでに13㎜モーターカノンは弾を撃ち尽くして空になっているのだ。

 

 『武運を祈る!!』


 定数から幾分数を減らした味方機がバラバラに戦域を離脱していく。

 これでも、確実性、生存性を高めた戦法を採用しているのだ。

 爆撃機に対しての攻撃法は、小隊4機で1機を狙うという方法が1943年から始まった対爆撃機の邀撃戦闘で確立されていた。


 『第3航空艦隊各機、かかれっ!』


 中隊ごとに分かれていたbf109K、109Gがそれぞれに獲物を定めて小隊単位に分かれて大きく散開する。

 そして、機体を翻し背面飛行から機首を傾け急降下に転じる。

 直上から爆撃機に対し痛烈な一連射を浴びせるのだ。

 コンバットボックスを組んだ爆撃機部隊は、旋回機銃から何条もの火箭かせんを伸ばす。

 それに怯えることもなく邀撃部隊各機が両翼に発射炎をひらめかせながら爆撃機の側方を通過していく。

 放たれた弾丸は、寸刻の間を持って冷気を引き裂きながら爆撃機の主翼、胴体とところ構わずに突立つ。

 そして、邀撃部隊各機は、旋回機銃座からの射弾を潜り抜け被撃墜を避けるため爆撃機の下方へと抜ける。

 しかし、火箭にからめとられてしまった不運な戦闘機は、無数の金属片となって散華する。

 旋回機銃の12・7㎜弾は、容易にBf109のエンジンカウリングを切り裂き、または弾倉にあたればそれを誘爆させるのだ。


 『くッ!エンジンがやられた!』

 『うぐあッ!?痛い痛い痛い!』


 冷却器を損傷した機体は、冷却液を噴出させたままエンジンが焼き付き機体を立て直すことなく、白い煙を吹きながら落下していく。

 bf109は、4機が落伍していった。

 爆撃機の方も、主翼に被弾した機体は空気抵抗に耐えかねて翼がげ錐揉み状に回転しながら墜ちてゆく。

 燃料タンクに火が回り、鈍い音をたて爆発四散する機体もあれば、エンジンが停止し高度を下げる機体もある。

 爆撃機の中から這う這うの体でクルーたちが脱出し、白い落下傘が漂う。

 bf109は、反転し急上昇をかけて次なる獲物を狙う。

 爆撃機の機体下部から12.7㎜の曵痕えいこんが伸び機体に近づけんとする。

 機体の前下方からbf109が13㎜を30㎜を放ちながら爆撃機に食らいつく。

 旋回機銃や、エンジン、コックピットなどに命中弾が出て多数の爆撃機が墜落していく。

 それを尻目に、風切り音をたてながらbf109は、機体を左に振りながら上昇し駆け上がる。

 第2航空艦隊の邀撃を受け、数を減らしていた爆撃機は、第3航空艦隊2個中隊の攻撃によりさらに数を減らし緊密だったであろうコンバットボックスは既に、乱れていた。

 コンバットボックスが乱れれば、それだけ旋回機銃による集中攻撃を減らすことができ邀撃機に対しての命中弾が減る。

 既に爆撃機部隊は、6割近くが落とされていたが北上を止めない。

 アウスブルクの空は近いのだ。


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