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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
プリーエフ攻勢
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出撃



 ―新暦1944年12月16日午前5時30分―



 それまで幽霊戦線ゴーストラインと言われるのほどに静かだったアルデンヌの森に、けたたましくエンジン音が響いた。

 帝国軍の乾坤一擲の大攻勢が始まったのだ。


 『こちら、バイパー中佐だ。第1親衛装甲師団ライプシュタンダルテ所属、バイパー中佐だ。指示系統は、異なるが良い連携を組めることを願う』


 秋霧作戦開始と同時に、作戦の主力部隊の先鋒であるバイパー戦闘団を指揮するバイパー中佐から通信が入った。


 『こちらこそ、道中の安全確保に力を尽くします』


 秋霧作戦の主目的は、ベルジャン王国にある軍港アントワープを占領することで西部戦線に展開する連合軍の補給を断つことにある。

 【第701試験戦闘団】の任務は、主力部隊の道中の安全確保。

 

 『戦闘団各機、出撃!』


 雪煙をあげて一斉にヴァンダンーファルケが上昇する。


 『行動200まで上昇した後、編隊を形成しろ』


 風が吹かず霧が晴れていない現状、高度を上げすぎると視界が悪化してしまう。

 そうなれば、斥候の役割を果たせない。

 帝国軍に味方したこの天気、しかしいざ戦闘となれば連合軍にとっても帝国軍にとっても敵なのだ。


 『各中隊ごと、事前に索敵した哨戒線に沿って進め!』

 『了解』


 無駄なく斥候の役割を果たすためにあらかじめ索敵する場所を決めておいた。

 俺の第1中隊が中央、そこから3キロ離れて左が第2中隊、右が第3中隊だ。

 充足率100%の4個中隊編成でないのが悔やまれる。

 そのせいで12キロ幅が9キロ幅に変わってしまっている。

 左右に分散していく中隊は、あっという間に姿を霧の中に消した。

 空軍ルフトバッフェの事前の偵察では、この先に敵の前線基地があると言っていたな。

 いても精々、歩兵1個中隊かそこらだとは思うが、味方の進撃をなるべく隠すためにも潰しておくか……。


 『第1中隊、ここから2キロ進むと敵の前線基地だ。潰しに行くぞ』


 味方の戦車部隊の車列を追い越して先行する。

 森の切れた場所で小高い丘にそれは設けられていた。


 『幸運だな、戦車が2両いる』


 少し広めの家屋のそばにジープが3両止まっていることからも報告通りの前線基地で間違いなさそうだ。

 そして傍には、シャーマン中戦車まで停まっている。


 『機関銃であぶり出してやれ』


 MG42の猛射が家屋やジープに撃ち込まれる。

 その間に俺は、シャーマンのエンジンを狙って30mmの対戦車ライフルを撃ち込んだ。

 これで使い物にならないだろう。

 ついでに煙が上がるまで機関銃を浴びせた。 

 

 『撃ち方止め!』


 生き残っている敵兵もいるだろうが機関銃を恐れて外に出てくる様子はない。


 『手榴弾でも放り込んでおけ』


 ここで逃して味方部隊の進撃を報告させる理由は無い。

 アナリーゼが、空いてる窓から手当り次第に手榴弾を放り込んでいく。

 そして悲鳴じみた声と爆発音が響いた。


 『次の目標はローゼンハイム駅だ』


 ローゼンハイム駅には、戦車部隊の燃料が鉄道輸送される予定になっている。

 よって早急に確保しておく必要があった。


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