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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
プリーエフ攻勢
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プロパガンダ部隊VSプロパガンダ部隊



 「見つけた」


 弾薬の集積地点ををお前たちに襲撃されて以来、ずっと探して来たのさ。

 他の作戦に参加中も少しでも手掛かりがないかってね。

 味方の戦闘記録も漁ったさ。

 そしたら、オデッサ付近にお前たちの撃墜された機体が落ちてるじゃないか。

 あたし以外に落とされてるなんて悔しいね。

 でも、あたしもようやく今日、お前たちを落とせそうだよ。

 翼を奪われた隼がどう飛ぶのか見ものだね!!


 「お前たち、地上標的に構ってる場合じゃないよ!ようやく見つけた獲物が逃げちまう!」



 最近になって至る所で猛威を奮っているという帝国のヴァンダーファルケとかいう機体を装備するプロパガンダ部隊。

 そしてあたしもプロパガンダ部隊の隊長さ。

 あいつらを撃墜すれば、国威高揚に繋がる。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 あたしは、ただあいつらを墜としてみたいだけなのさ。


 「チッ、上を取られてるか!一旦、連中の下を通り抜けて高度を稼ぐ!」


 速度差は、歴然。

 3倍までは無いにしても圧倒的にこちらが有利。


 「了解!」


 後続のヴォリセンコ達が一気に加速して上昇する敵の足元を通過していく。

 さすがにこの速度差、正面から以外ならやられないか。

 しかしそれは油断だった。

 後方から爆発音が聞こえた。


 『リディア!アレクセイが撃墜されちまった』


 2番機のヴォリセンコの隣を飛ぶ3番機が撃墜されたのだ。


 『どうしたってんだい!』


 相手は、あたし達のYak-1に性能で劣るとは言え数はざっとこちらの3倍だ。

 こちらは銃撃の機会さえ得てないのに損失を出すのは痛手だ。


 『敵の機銃掃射に突っ込んじまったみたいだぜ』

 『歯痒いねぇっ!』


 ようやく見つけた獲物に、いいようにやられていると思うと腹が立つ。


 『まぁいい、勝負はここからさ』


 一気に高度を稼ぐ。

 1000馬力のクリーモフエンジンが猛々しく唸る。

 

 『5番機、被弾!燃料タンクをやられた!』


 上昇に転じる瞬間を狙われた!?

 燃料タンクを撃ち抜かれれば、発火する確率は高い。


 『機体は持ちそうかい!?』

 『燃料が噴き出していて、持ちそうにありません!』


 それなら、燃料タンクを空にさせて後方へ逃がすか?

 だが対空砲火を避けられるとは思えない。


 『海上へ離脱しな!あとは泳いで離脱!いいね?』

 『りょ、了解!』


 編隊からまた一機が落伍していく。

 だが、海上に離脱することは出来なかった。

 手負いの機体を狙い目と判断したのか翼を折られて撃墜された。


 『リディア、あと4機しかいねぇ、また後日にしよう』


 ヴォリセンコが撤退を進言する。


 『弱気なことを言うんじゃないよ!1機も殺ってないのにどの面下げて帰るって言うんだい!』


 それに高度は、4000に達した。

 ここで反転して一気にカタをつける。

 あとは反復運動で徐々に敵を削ればいい。


 『全機反転!かかれぇっ!』


 何がなんでも敵を墜とす!

 機体を無理矢理曲げて敵とのヘッドオンを狙う。

 急降下で増速する機体は、振動が増して照準がブレル。

 だが、そんなものは数で補えば問題ないはず。

 

 『勝負は一瞬、逃すんじゃないよ!』


 敵の姿は、既に照準に小さく捉えている。

 戦闘機よりも小さく狙いにくい。

 相対速度は700キロを超えている、狙いにくいのは敵も同じはず。

 そろそろ500メートルか。

 

 『撃て!』


 バリバリとウラジミロフ機関砲から20ミリ弾を撃ち出す。

 だがこちらが敵を撃ったのと敵がこちらを撃ったタイミングは等しかった。


 『リディア、被弾したぜ!』

 『ヴォリセンコ!?』


 よりにもよって、最も頼れる2番機が命中弾を浴びたらしかった。


 『こりゃダメらしい。エンジンがイカれちまった』


 そう言い残してヴォリセンコ機は、エンジン爆発を起こして散華した。

 ちくしょう、あたしがヴォリセンコの言う通りにしなかったばっかりに……。

 込み上げてくる自責の念、だが過ぎたことはどうしようもなかった。

 

 『全機、退却する!』


 振り返りざまに見たオデッサの基地、火達磨になりながら落ちていく敵機一。

 頼れる2番機含めて3機の損害を出したにもかかわらず、撃墜は僅か1機だ。


 「ヴォリセンコ、あんたの仇は必ず打つ!」

 

 この後、ヴァルシャヴァ方面に転属になるが必ず奴らに出会う、そんな気がした。

 

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