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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
プリーエフ攻勢
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オデッサ空戦


 『こちら鴨嘴シュナーベルティー、敵の航空機部隊西へ向かう。高度3500で侵入せり。規模は、戦爆連合100機以上!現在地点ムィコラーイウ北方。繰り返す……』


 キシニョフ攻囲戦2日目、キシニョフ方面の制空権を巡る航空戦が帝国軍不利で収束中に向かいつつあるさなかに偵察機からもたらされた報告は、敵航空部隊に余力があることを意味した。


 「ムィコラーイウとは、随分と進路が南寄りだな」


 キシニョフの友軍支援のために出撃しようと思っていたが、どうやら話は変わりそうだ。

 ムィコラーイウは、キシニョフ東と言うよりオデッサの東に位置する都市で、ここオデッサから距離もそう遠くない。

 ムィコラーイウ付近に敵航空機部隊を発見したということは、つまりはオデッサへの航空部隊による襲撃が濃厚ということだ。


 『第701試験戦闘団、任務内容は変更だ。目標は、接近中の敵戦爆連合に変更する。出撃!』


 激闘の東部戦線にあっても俺の部隊は、あくまでもシュタウヘン少将が指揮権を持っているのだ。

 そしてその少将からは、犠牲を出さないことが命令されており加えて行動の自由が保証されている。

 第701試験戦闘団は、前線に置いて基本的にどの指揮権にも属さず遊撃戦を展開する戦力なのだ。

 今回の出撃も無論、上からの命令ではない。

 あくまでも俺の独断専攻によるものだ。

 格納庫から滑走路を使わずに、エンジン噴射で出力を得て上昇する。


 「高度は、4000まで上昇、敵を見つけ次第、爆撃機を優先的に狙え」


 爆撃機の狙いは、オデッサの基地機能喪失にあるのだろう。

 そんな敵を放って置く訳には行かない。


 『オデッサ管制より友軍航空部隊へ通達、第2大隊全機、離陸完了』

 『手隙の機体もすべて回せ!夜間戦闘機でも軽爆でも構わん!』

 『キシニョフに向かった部隊を呼び戻せるか!?』

 

 

 友軍の通信チャンネルは、突如の敵航空機部隊の出現で混乱している。

 

 『こちら、第701試験戦闘団。我々も敵航空機部隊の邀撃任務に就く』


 戦闘が始まった後から、味方を困惑させるわけにも行かないので俺も友軍への通達をしておいた。

 下方からは、同じく上昇していく友軍機がちらほらと見える。

 1個飛行大隊27機でどこまでやれるか、と思わないでもないが何もしないよりマシだ。

 そして第701試験戦闘団も定数を割って20数機しかいないが合わせれば50近い機数がいることになる。

 もっとも、ヴァンダーファルケで乱戦に飛び込めば速度差と武装の差で狩られるのは、こちら側なので距離を置いての戦闘をせざるを得ないが……。

 装備は、キシニョフに進出した敵装甲部隊との戦闘を想定していたために30ミリの対戦車ライフルなので口径差で負けることは無いのが幸いだ。

 そんなことを考えているうちに雲間を抜けて高度は、4000に到達した。

 友軍の戦闘機隊は、さらに高度を稼ぐべく上昇を続けている。

 敵は100を超える戦爆連合だ、戦闘機の数で行っても最大で半数いるだろうから50機程度という見立てだ。

 ほぼこちらと同数。

 第6航空艦隊の1個飛行大隊が先行して攻める状態になれば、数の差で押し切られる可能性が濃厚だ。

 現状、敵の装備機は徐々に更新されており開戦時は帝国国防空軍に劣った機体性能も連合国の技術の模倣により高い水準のものへと変わってきている。

 例えば現在の赤色空軍の主力低高度戦闘機Jak-3(ヤーク・トリー)で言えば最高速度は、640キロを超え旋回性能は帝国軍機と遜色ない。

 ただあくまでも低高度における戦闘において遜色がないと言うだけで、高高度及び中高度においては友軍機の方が優位を保てる。

 

 『こちら6航艦第1大隊、敵を捉えた。高度3500、これより攻撃を開始する』


 早くも敵のお出ましか……。

 なら、俺達も攻撃に移るか。

 

 『第701試験戦闘団各機、散開しつつ友軍機との距離を縮めろ!基本の戦法は有効射程ギリギリからの狙撃だ!足を止めて敵に撃たれるなよ!』

 『了解!』


 元気の良い復唱、指揮はまだまだ旺盛だ。

 

 

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