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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
プリーエフ攻勢
58/68

キシニョフ炎上


 遠くに聞こえる砲撃の音。

 ロシャス連邦軍による攻勢は、ついに始まったらしかった。

 【第701試験戦闘団】は、キシニョフからの援軍要請を受けると増槽と持てるだけの弾薬を機体背部のミッションパックに吊り下げて針路を北西、つまりキシニョフ方面へと向かっている。

 今回は、27機全てがグロスフスMG42機関銃を二丁装備している。

 装甲車や戦車相手では、心許ない貫通力のグロスフスMG42機関銃ではあるが、歩兵や野砲陣地を奇襲するなら十分だ。

 弾薬の消費が多い機関銃は、マガジンではなくベルト給弾式になっていて、ミッションパックに取り付けた大型のマガジンから弾が連なっている。

 いつもなら対戦車ライフルと機関銃という装備だが今回は、歩兵を狩ることを主目的としているため弾詰まりやオーバーヒートを考慮しての二丁装備となっている。


 『やはり、敵部隊の北上は欺瞞行動だったな』


 もう少し強くフリースナー上級大将に対して発言すべきだったか……。

 にしても、連日の偵察でもここまで多数の敵部隊がキシニョフに迫っているなど、予想することは出来なかった。

 退却時にどこかに武器を埋めていたか……?

 連邦軍が退却時に戦車を埋めていたという話を以前、聞いた事がある。

 その可能性は、十分にあるだろう。

 この攻勢を最初から企図した上での撤退であると言うなら納得のいく話だ。


 『連邦の司令部は、恐ろしいですわね』


 アナリーゼが俺の気持ちを代弁して言った。

 全くその通りだ。

 北への欺瞞行動にまんまと騙され油断したあげく戦いの火蓋を連邦側に切られて防戦一方のキシニョフ戦区。

 戦いの主導権を取られている以上、戦いの趨勢は決まったと言ってもいいかもしれない。

 救援の命令を受けている以上、最善を尽くすつもりではあるが、シュタウヘン少将からは無理するよりは部隊の戦力温存を優先しろとも言われている。


 『二時の方向に敵の砲撃陣地を確認!』


 二時の方向には、報告通りに砲撃で煙る敵の野砲陣地がある。

 あの煙の量、軽く数十門はあるだろうな。

 だが、敵の砲兵部隊に手こずっていてはキシニョフで敵の先鋒と衝突しているであろう味方の救援に遅れを生じかねない。


 『シュナイダー中尉、第二中隊を指揮して早急に敵砲兵を黙らせろ。俺は、先に行く』


 野砲陣地は、第二中隊と信頼のおける戦闘団の副指揮官に任せれば問題ないだろう。


 『了解!!第二中隊、続け!!』


 9機が編隊を離れ敵野砲陣地へと突貫していく。

 戦果は、見なくても音を聞くだけで十分に把握出来る。

 野砲の弾薬集積箇所の爆発が知らせてくれている。

 

 『前方、敵部隊!!規模は、歩兵2個師団と言ったところですわね』

 

 敵は、友軍の砲撃を浴びながらキシニョフの街へと肉薄している真っ最中だ。


 『呑気に横っ腹を晒す敵にに鉛弾をお見舞いしてやれ、各個にて射撃開始!!』


 俺達の接近に気づいていないのか全くこちらが眼中に無い敵を射線上に捉えて引鉄を引く、簡単な仕事だ。


 『暴れてもよろしくて?』


 アナリーゼの許可を求める声がヘッドセットから響く。

 見たところ敵は統制射撃もとれてなければ、対空兵器もさほど見当たらない。


 『好きにしろ』

 

 アナリーゼに好きに暴れさせても問題は無いだろう。


 『では、お言葉に甘えて』


 アナリーゼは、機関銃を両のアームに装備して恍惚とした表情を浮かべて言った。


 『Привет, враги! И спокойной ночи навсегда《敵の皆さん、こんにちは!そして永遠におやすみなさい》』


 敵上空に躍り出たアナリーゼは、拡声器で足下の敵兵に聞こえるように連邦の言語を使って言うと、躊躇なく引鉄を引いた。

 絶叫と血飛沫をあげながら同胞の血溜まりに倒れていく敵兵の上空を縦横無尽に駆け抜けるアナリーゼは、酷く機嫌が良いのか、ヘッドセットには、彼女の口から漏れる鼻歌が響いた。

 


 

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