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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
プリーエフ攻勢
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偵察


 代わり映えのない地形を眼科に見ながらひたすら東へと飛んでいる。

 オデッサ、キシニョフの間の距離が100kmもあるからその前線を偵察しようとするとかなりの距離を飛ぶことになる。

 ルートを数本策定してそれに沿って各中隊ごと偵察することにしたのだが、いずれにせよ面積は広大だ。


 『燃料のことを考えるとそろそろ戻った方がいいかもしれませんわね』


 オデッサからだと直線距離で100キロも離れていないから、まだ敵はこの一帯に進出してきていないのかもしれない。


 『そうしよう。燃料を補給して再度、偵察を行う』


 これだけ開けていれば、回線の調子もよくヘッドセットから聞こえる声はクリアだ。

 

 『各機反転――――いや、待て』


 反転しろと命令をだそうとした矢先、東の方から航空機のエンジン音が聞こえてきたのだ。


 『おそらく連邦の機体ですわね』


 未だこの地区に敵の地上部隊が見えていない、ということは偵察か?

 

 『高度を2000まで上げて様子を窺う』


 スロットルでエンジン出力を上げて上昇する。

 その間にも双眼鏡で、航空機を探すが曇り空で発見は難しい。

  計器が2000mを示したのでエンジン出力を落とした。

 航空機のエンジン音は、下方から聞こえる。

 

 『敵は下だ。探せ』

 

 どんな些細な情報でも持ち帰らせるわけにはいかない。

 

 『いました!敵航空機は、双発機4機です!』


 完全に方向さえ分かれば、敵はすぐに見つかった。

 双発機だと爆撃機の可能性が高いな。 

 長距離偵察に敵がよく使用するのはIl-4だ。

 

 『速度はどれくらいか?』

 

 速度によって爆弾を積んでいるか積んでないかがわかる。


 『速度は、300程度かと』


 最高速度は、軽く400キロを超えるはずの機体だ。

 ということは―――――爆弾を満載しているということだ。


 『よし、各機に通達。奴らを撃墜しろ』


 敵部隊が進出してないことから察するに、敵爆撃機はおそらく偵察任務にあたっているのだろう。

 まさか、偵察任務に爆弾を搭載してくるとはな……。

 最初から威力偵察だったというわけだ。

 それも、空軍ルフトバッフェが戦力温存で戦闘に消極的で制空権の維持すらままならないことをいいことに、丸腰の爆撃機だけでだ。

 一斉に、第1中隊のヴァンダーファルケが降下していく。

 重力を推進力に変えてヴァンダーファルケが最高速度を越え加速する。

 敵爆撃機との会敵位置を想定して進路を微調整する。

 敵の斜め上から降下しつつ一瞬で仕掛ける。


 『射撃の機会は、一瞬だ。逃がすなよ!?割り振りは各小隊で1機だ。かかれ!』


 小隊が3つしかないから、俺単独で1機片付けることになるな。

 

 『了解』


 全員がスコープを覗き照準を合わせた状態で、一直線に敵に降下していく。

 即座に先頭の1機がエンジンに火を噴いた。

 黒煙を靡かせて、飛行姿勢はおぼつかないものへと変わる。

 2機目は、燃料タンクを撃たれたのかミストのように燃料を空へと撒きながら、引火し火だるまに変わった。

 きっと誰一人としてパイロットは、助からないだろう。

 さらに積んできた爆弾に引火したのか、耳を劈くような轟音をあげて爆散した。

 3機目は、機体の翼部を根元から撃たれて翼が折れ飛び回転しながら墜落していく。

 これがほぼ同時に起きた出来事だ。

 俺も照準には4機目の敵爆撃機をおさめている。

 偏差を考慮して、やや狙う箇所をずらした。

 狙いは、翼部だ。

 1番的確に敵の機体を撃墜することが出来る。

 何しろ、翼がなければ飛行機は飛べないのだ。

 ドットサイトを航空機の翼にある連邦を示す赤星のマークにあわせる。

 敵機はやや前方なので偏差を僅かに考慮した。

 そして躊躇うことなく引鉄を引いた。

 撃ち出された30ミリの弾丸は狙いどおりに翼部に命中したのか、敵機の翼が見事に折れ飛びきりもみ状に、敵機は墜落していった。


 『各機、帰投せよ』


 4機の墜落は、火を見るよりも明らかだ、撃墜の確認は不要だろう。

 

 

 

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