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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
オペレーション【ワルキューレ】
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ロレーヌ十字



 『敵の航空機の姿は無いか?』

 『敵のレーダー網は、低空侵入で回避しましたから問題ないと思いますが?』


 3個中隊27機に再編成された第701試験戦闘団をエルンハルト少佐に変わって率いるのは、ノルトマン・シュナイダー中尉だ。


 『そうか……なら各中隊ごとに分かれて、対戦車戦闘を展開してくれ』

 『野戦砲陣地の索敵は行いますか?』

 『そうだったな…それも併せて頼む』


 なかなかうまくいかないな、とシュナイダー中尉は一人ごちると視線を眼下の敵へとやった。

 エルヴの街に迫る敵は、徐々に包囲の輪を狭めてきている。


 『前方、敵戦車集団!!』


 第一中隊の誰かしらの報告に全員が反応し即座に鉄槌の名を持つ対戦車ライフルを構えた。

 

 『M4だな。車体下部でもこいつじゃ抜けない。砲塔上部を狙え』


 帝国国防陸軍の装備する主力戦車に比べれば装甲は貧弱で主砲の威力は低いが、車体前面の傾斜を考慮すれば30mmの対戦車ライフルを弾き返すくらいの装甲厚は確保されている。

 幸いにして敵は対空戦車を伴ってはおらず敵上空で留まることにためらう理由は無かった。


 『照準次第、各個にて撃て』


 断続的に短く鋭い射撃音が鳴り響く。

 エンジングリルを撃ち抜かれた車両は、その場で黒煙を上げて停止。

 砲塔上部から弾薬庫を抜かれれば、誘爆を起こし激しく燃える。

 エルヴに立て籠もる友軍の防衛線に迫っていた敵車両は、見る見るうちに数を減らした。

 戦車を片付ければ次は随伴歩兵へと目標を変更する。


 『武装を換装しろ。対歩兵戦闘に移る』


 ミッションパックに取りつけられていたグロスフスMG42機関銃へと補助アームの武器を取り換える。


 「マズい、散開しろ!!」

 「ブラックフライデーの悪夢だ……」

 

 その様子を見て察しのいい敵兵が声を上ずらせて叫ぶがすでに遅かった。


 『元来た位置まで敵を押し返せ』


 戦車の後方から出てきた敵兵に対し引鉄を引けば、瞬きほどの瞬間に幾人かの敵兵が血溜まりに沈んでいく。

 その惨劇は、ジークフリート戦線北方ホーゲルヘイデで繰り広げられたものであるはずなのに遠く離れたエルヴ西方に展開していた敵までも知っていたらしい。


 『降伏の意思を示すまでは敵を掃討しろ』


 来た道を血で染めながら敵は後退しようとするものの、後退できるはずもなかった。

 僅かにグロスフスMG42機関銃の照準を動かしただけでその後退が意味をなさないものになるからだ。

 残存していた戦車が、歩兵の盾になるべく前に出るが27機のヴァンダーファルケは、その戦車に構うことなくひたすらに歩兵に対し銃撃を浴びせ続ける。

 他の中隊も同様に敵戦車と歩兵を刈り続けている。

 そして野戦砲陣地を弾薬集積所ごと吹き飛ばしたのか数キロ先で大きな爆炎が上がった。

 しかし一方的な戦闘は長く続かなかった。


 『北西方向よりエンジン音!!』


 その声にFernglas 08を覗いたシュナイダー中尉は、即座に命令を下した。

 

 『総員、反転離脱!!低高度で現空域を離脱せよ!!』


 エンジンをフルスロットルにして離脱していったヴァンダーファルケの後を追うようにエルヴの街の上空に姿を表したのは、白地に赤のロレーヌ十字を国籍マークとして塗装する自由共和国軍戦闘機隊だった。


 

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