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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
ジークフリート戦線
36/68

Falcon hunt 1



 輪形陣を組む多数の護衛艦艇に囲まれた空母から多数の艦載機が飛び立っていく。

 ドーバ海峡の洋上に姿を現したのは、合衆国海軍の新鋭空母『ランドルフ』『ベニントン』、連合王国海軍ロイヤルネイヴィーのフォーミダブルといった空母で艦載機の合計は240近くにも膨れ上がった。

 そしてその周りを取り囲む無数の護衛艦艇。

  連合王国海軍ロイヤルネイヴィーのダイドー級防空巡洋艦、ベローナ級軽巡洋艦は、その主砲を南の方向に突き上げ発砲のときを待っている。

 さらには合衆国海軍のフレッチャー級駆逐艦が1個駆逐隊ごとに纏まって周囲の海域に展開しUボートによる奇襲攻撃に備えている。

 

 「なんて数なんだ!?」


 海面すれすれを飛ぶ1機の偵察機が見ていた。

 Fi 156 に乗る二人のパイロットは、敵艦船のレーダー網をかいくぐるために低空を飛んでいたのだ。

 Fi 156 は、最高速度が200キロにも満たない複葉の偵察機だ、レーダーに見つかり敵の航空機に襲われれば、ひとたまりもない。


 「敵空母3、巡洋艦を含む護衛艦艇多数を確認。現海域からの離脱の許可を」 


 後部座席に座るパイロットが無線機に向かって叫ぶ。

 いつ見つかるともわからない危険な海域に留まり続けたくはないのだ。

 無線の向こう側で許可するとでも言われたのか機体は、踵を返し元来た方向へと戻っていく。

 とそこへ、上空からダイブブレーキ音を響かせながら3機の尖った機首を持つ機体が両翼に機関銃炎を煌めかせて突っ込む。


 「クッソ、当たれよ!!」


 後部座席のパイロットが半狂乱になりながら取り付けられたMG15機関銃を撃ちまくる。

 しかし撃ちだされた射弾は、掠るどころか一発さえも敵機には当たらない。

 敵機との間に速度差があるものの、高度を下げると3機は、再上昇し反復攻撃を行ってくる。

 風切り音が響いて水面に小さなしぶきが幾つも立ち上がる。

 ここまで回避出来ているのは一重に巧みな回避機動のおかげと言ってもよかった。

 

 「おかまであと少しだ!」


 操縦桿を握るパイロットが叫んだ。

 機体の前方には、東フリージア諸島とエムス川の河口が朧気に見えた。

 友軍の制空権に入るまでは、それほど時間がかからない。

 ちらりと燃料計に目をくれると操縦桿を握る手に力を入れた。

 

 「燃料は、まだ余裕だ!少し暴れるぞ!」


 スロットルを手前へ引きエアブレーキをかける。

 後方の3機との間に速度差ができ一気に前へと抜けた。

 だがFi 156に前方を攻撃する火器は、搭載されていない。

スロットルを前へ押し出し加速ーーー推進力を得ると再びスロットルを手前へ引き上昇に移る。

 アルグス As 10が力んだような音を立て最高速度の175kmを発揮して高度を稼ぐ。

 前方へと抜けていった敵機が減速してロールをかけるとFi 156へと向かってきた。


 「すれ違いざまの一瞬が射撃機会だ。1機でも落とせば振り切れるかもしれん」

 

 操縦桿を手前へ引きながら操縦席に座るパイロットが言った。


 「おうよ!」


 後部座席の銃手がMG15の引鉄に指をかけ直し頼りにしろとばかりの声で復唱する。

 機体がゆっくりと回転すると3機の敵機の射線上に入った。

 急速に近づく距離ーーーFi 156は、伸びる火箭を全てを後方へ振り払うと機体を掠めるように3機とすれ違う。

 

 「ほらよっ!」


 すれ違った直後から吐き出される無数の弾丸。

 そのうちの数発かが敵機の風防ガラスを叩き割ったのか、太陽光を反射して煌めくものが空に舞う。

 そしてその機体は、制御を失い機首を下に向け真っ逆さまに急行していく。


 「よしっ!」


 銃手は、喝采をあげたがそれも束の間ーーー反転してきた残りの2機が敵討ちとばかりに両翼から火箭をのばし、その一条がFi 156の翼の根元部分を捉えた。

 骨子を20mm弾に撃たれた翼は、そこから折れ後方へと飛んでいく。

 

 「なっ!?」


 何が起きたかも分からないパイロットの声を残して機体はきりもみ状に高度を落としていく。

 この日から、連合軍による【ファルコン・ハント】作戦が始まった。


 


 


 



 


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