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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
ジークフリート戦線
35/68

Frontline Ⅳ



「ヒュルトゲンの森は、損害が増えるばかりですな」


 居並ぶ連合軍の将校たちは、ため息を漏らした。


 「前線からの報告によれば、敵の防衛線打破のための増援の機甲部隊が上空から狙い撃ちにされているだとか……」

 「暗黒ブラック金曜日フライデーの惨劇からというもの我が軍に良い話は一つもありませんな」

 

 ジークフリート戦線は、重厚な防御が敷かれておりジークフリート線にとりついてからの連合軍の損害は右肩上がりだった。


 「それほどまでに帝国軍は有能なのか?」

 「帝国陸軍の残存部隊は600万とも聞く」

 「それは、老人子供を含めた数ではないのか?」


 一人の佐官が地図上に何枚かの写真を並べた。


 「なんだね、これは?」


 白黒のそれに映し出されているのは、飛行機のようなものだった。


 「これは、10月にマジャロルサーグの国境付近で撮られたものになります。ロシャス連邦の駐在武官に送ってもらいました」


 居並ぶ将校たちが、その写真を覗き込む。


 「そしてこれが、暗黒ブラック金曜日フライデーに撮られたものになります」


 さらに数枚の写真が置かれた。

 どれも同じものを写していた。

 

 「これがブラックウォッチ(ロイヤル・ハイランド)連隊を殲滅した悪魔だと言うのか?」

 「おそらくアーツェンに現れたのも同様のものと考えるべきかと」


 ブラックウォッチ(ロイヤル・ハイランド)連隊は、ほとんど帰還した兵士がいなかった連隊だ。

 ブラックウォッチ(ロイヤル・ハイランド)連隊の通信途絶後に後続のカルガリー・ハイランダーズ連隊が態勢を立て直して同地へ急行した際に見たものは、折り重なるように倒れたブラックウォッチ(ロイヤル・ハイランド)連隊の骸だたという報告も上がっていたことから連隊の大多数が死亡したと推定されている。


 「厄介なものを戦線に送り込んできたな」


 一人の将官が重々しく言った。


 「前線の将兵たちは、破壊者デストロイヤーと呼んでいます」

 「たいそうな呼び名だな」

 「だが我々は、この状況を打破しなければ活路は無い」


 地図を見れば、予備部隊が尽きかけていること、前線が膠着状態になっていることが容易にわかる。


 「何か具体案をこの場で示そうではないか」


 そう言った将官の目が周りの将校たちを見回す。

 すると一人の佐官が


 「戦闘機で破壊者を狩る部隊を編成してはどうかでしょうか?」


 と声を上げた。


 「空軍の見解を述べさせていただきますと、現状として帝国空軍との制空権争いと戦略爆撃部隊の護衛だけで手一杯の状況で余力はありません」


 空軍を代表してこの場にいる佐官が勘弁してくれとばかりに言った。


 「だが陸上兵科で奴らを狩るのは、現実的ではないのだろう?」

 「えぇ、ロシャス連邦軍の連絡将校によれば、司令部付近の対空砲火を潜り抜けられたとの報告がきています」


 すると空軍の佐官が、地図の海に当たる部分を指さした。

 

 「海軍に頼るのは、いかがでしょうか?」


 何人かの将校が唸り声をあげる。

 

 「それは思いつかなかったな」


 連合国の海軍戦力は、帝国のUボート狩りを主任務としていた。

 駆逐艦でもそれは、十分務まるが現状、過剰であると言えるほどに空母までを展開させていた。


 「新しく就役したエセックス級空母が確か二隻ほど大西洋に展開しています。それとは別に連合王国海軍にも相当数の空母がいます。それらの艦載機を索敵に回してみてはいかがでしょうか?」


 我が意を得たりとばかりに、航空機によるヴァンダーファルケの撃墜を提案した佐官が言葉を続けた。


 「確かに……敵空軍への戦力を減らすことにもならないな」

 「妙案だな」


 その提案を推す声が次々と上がる。


 「では、海軍に掛け合ってみるとしよう」


 居合わせた中で最高階級の将官が、そう締めくくってその場は纏まった。

 

 「氷解の時は近いな」


 誰ともなく発したその言葉に膠着した戦線を打破する瞬間を多くの将校が想像した。


各話のタイトルを帝国語から日本語にしようか迷っています。

日本語の方がいいなって方がいましたら感想のところにご意見くださいませ


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