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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
ジークフリート戦線
32/68

FrontlineⅡ


 森の中にこだまする銃声の位置は変わらずヒュルトゲンの森の趨勢がどちらにも傾いていないことを示していた。

 

 『前方に敵戦車を確認。あれで何台目ですかね』


 パイロット達は、ただ坦々と狩りを行っていた。

 夜から天候は不安定になりときおり小雨が混じる。

 森はうっすらと霧に覆われていた。


 『こちらも見にくいですが向こうからも見にくいのでしょうね』

 『おかげで所在がバレることなく上手くいっている』


 敵は、どこから撃たれたのかもわからないまま次々と鉄の棺桶と屍を重ねている。

 何しろ、どの程度の敵がどの辺りにいるのかを知ることもなく壊滅しているから偵察を止めることができず、偵察部隊を小出こだしにしてきていた。


 『懲りないお馬鹿さんたちですわね』


 嬉々としてアナリーゼは引鉄に掛けた指を引いた。

 戦車の周囲に付き従っていた歩兵小隊を巻き込んで戦車は火柱を上げた。

 ただこの戦力の拮抗した膠着状態は、いつまで続くかはわからなかった。

 あくまでも噂の域を出ない情報ではあるが合衆国陸軍第28歩兵師団が、増援のために自由共和国に上陸しこのヒュルトゲンの森を目指しているらしかった。

 これは、味方の数的劣勢をさらに進めてしまう事案であるのだが自由共和国領において連合国の上陸部隊相手に大敗北を喫した友軍機甲師団に止めることはかなわず今のところなすすべはない。


 『少佐、聞こえているかね?』


 そのとき、第701試験戦闘団の通信に割り込んでくる通信があった。

 それは聞きおぼえのある声だ。


 『……シュタウヘン少将閣下であらせられますか?』

 『おぉ……チャンネルが合っていたようでよかった。いかにも私だ』


 しかし何故、この戦闘団のチャンネルに割り込んでこれたのだろうか。

 管轄はケルンに置かれた臨編ノルトライン方面軍司令部なので、まず国防陸軍総司令部から通信を行うのは無理な話だった。


 『なぜ、私が?と不思議に思っておるようだね』

 『えぇ、その通りです』


 周囲にいる部下たちの顔は、声には出していないが、皆わけがわからないと言いたげな顔だった。


 『今、ノルトライン方面軍将校達と打ち合わせに来ていてね、まぁその内容はいずれ少佐に関わりを持つものなのだが……それは、また後日に話そうか。そのついでに君の戦闘団に一つ頼みごとがあってね』


 打ち合わせの内容が気になることはさることながら、頼み事というのは何なのだろうか。


 『と言うと?』

 『ムーズ川沿いに進撃してきた合衆国第9軍がアーヘン攻略を行っているのは知っているだろう?』


 当初、第9軍はアーヘンを南北に別れて機動していた。

 しかしアーヘン守備隊が脅威になる可能性に気付くに至り、合衆国軍司令部は街を直接攻撃することを決定し10月に入るとすぐに、戦闘が開始された。

 が、地の利を活かした帝国軍の抵抗の前に凄惨な市街戦は未だに続いている。


 『市街戦で膠着状態にあるだとか』

 『そうだ、そうだったのだ。ただ、状況は変わった。今しがた入ってきた情報なのだが、第9軍による総攻撃が始まったのだよ。そこで君たちの出番だ』


 第9軍には戦車部隊も大隊規模で編成されているらしく総攻撃ともなれば友軍は鎧袖一触だろう。


 『出撃ですか?』

 『そうだ。少しばかり救世主になってきてくれ』


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