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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
東部戦線
28/68

 weit Donner Ⅸ


 『各員に通達、高高度へ離脱しろ』


 眼下からすさまじい量の火箭が伸びあがる。

 

 『さすがに司令部は、備えもいいですわね』


 低空を飛びレーダーによる探知を避けてはいたものの、司令部を守るように配置されていたトーチカなどに見つかったらしく熾烈な対空攻撃を後、敵司令部まで2㎞といったところで受け始めていた。


 『だな、まぁグリオノフの7.62㎜機関銃程度なら装甲で跳ね返せるが12.7㎜機銃だと話は変わってくる』


 各員に装備させている小型爆弾を投下して対空機銃陣地を潰すことは、できなくもないが手榴弾は司令部攻撃のためのものでここで使うわけにはいかない。


 『高度を500に保て、急降下して敵司令部を潰すぞ』

 『了解』


 急上昇するヴァンダーファルケに追いすがるようにして火箭が上がってくる。

 

 『第2中隊、サーチライトを狙えるか?』


 急上昇したタイミングで今度は、探照灯が俺達を照らそうと点灯したのだ。

 サーチライトに俺たちが照らし出されれば、対空機銃の射撃精度は一気に上がってしまう。

 部隊をパイロットを守るためにも軍事機密であるヴァンダーファルケを守るためにもそれは避けなければならなかった。


 『やります!!』

 『頼んだ』


 第2中隊は、射撃の精度を上げるべく移動射撃ではなく、一時的にその場に留まって射撃する道を選んだ。

 その第2中隊を置いて残りの3個中隊は前進を続ける。

 敵司令部までの距離は、もう1㎞あるかないかだ。


 『各員、散開して降下、爆弾を投下次第、全速上昇し南に向かって離脱せよ。合流の指揮は各小隊長に一任する』


 近づくにつれ激しさを増す対空攻撃は、しかしだんだんとその精度を低下させた。

 第2中隊が、サーチライトを潰すことに成功したのだ。

 

 『突撃せよ』


 攻撃目標への突撃を下令した。

 その命令に3個中隊27機のヴァンダーファルケが一斉に機体をひるがえす。

 そして機体に牽引してきた15㎏程の重さの爆弾を投下していく。

 急降下爆撃だからその精度は高い。

 幸いにして、目標の施設には明かりもともっている。

 目標にとって不足はない。

 次々に投下される鉄塊は、建物の壁面や停車していた車両に次々と命中して火炎を踊らせた。

 連邦軍南方方面軍司令部の幕僚たちがどうなったのかは言うまでもないだろう。

 さらに後から遅れて来た第2中隊の9機が、追い打ちをかけるよう爆弾を投下していく。

 

 『第一中隊各機は、各個にて線路を寸断せよ』


 司令部を潰すことだけではなく、鉄道による輸送網を破壊することも今回の任務だ。

 輸送網を破壊することは、物資の輸送を遅らせ攻撃を鈍らせることにもつながる。

 やらないわけにはいかない。

 

 『第1中隊各機、低空飛行に移り線路をピンポイントで撃て』


 ヴァンダーファルケ専用装備の30㎜対戦車ライフルであれば、鉄のレールを切断してしまうことぐらい造作もないことだ。

 散開している9機が各々、線路を十分に狙い撃てる低高度まで降下し線路をレールを破壊していく。

 これで復旧には、相応の時間もかかるだろう。


 『各機、そのまま低高度で戦闘域を離脱するぞ』

 『了解』


 司令部を失った部隊は、混乱状態に陥り統制を失っていて消火すらままならない。

 それを横目に見つつ9機のヴァンダーファルケは、南に向かって飛ぶ。

 これで『遠雷』作戦は、完遂だった。


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