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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
東部戦線
24/68

weit Donner Ⅴ


 

 『作戦司令部より第701試験戦闘団へ通達、制海権の奪取、および主要飛行場の占領に成功せり』


 陽動部隊の作戦行動により、敵の監視の目をかいくぐり第701試験戦闘団は6隻の潜水艦に分乗し東へと進んでいた。

 

 「明日の夜、いよいよ作戦の最終段階に突入するわけですが」


 と潜水艦艦長は前置きをした。

 階級は少佐で俺と同じだ。

 通常、大尉が潜水艦艦長を務めるわけだが彼は第32任務部隊の作戦参加艦艇の司令官でもあるため階級は、他の潜水艦艦長よりも一つ上となっている。

 長距離の航海を目的に設計されたIXD型潜水艦は、航続距離が長く速度も他の潜水艦に比べれば優速でアドリア海から黒海までおよそ2日で到達することができる。


 「作戦の打ち合わせを再度しておこうかと」

 「そうですね。連携作戦は初めてなので不安な点は多いですからね」


 卓上に置かれた航海図には、作戦の詳細を記した便せんがいくつも貼られている。

 それは、この艦長の性格も理由としてあるのだろうが、入念な確認、正確な情報、そしてそれらに基づいた思考こそが任務につながるのだ、何一つとっても欠かすことはできない。


 「明日の夜半、我々は黒海へ突入しオデッサの軍港の沖合、25㎞にて浮上します」


 オデッサの港に強襲揚陸をするのが一番、701試験戦闘団にとっては最適なのだが周辺には敵基地が点在しているために作戦が終わるまで保持し続けるのは難しかった。

 そのために沖合で偽装輸送船へと乗り換えてからの出撃となった。


 「そこで貴官らには乗り換えていただき、午前1時半の出撃を予定しています。オデッサ、キシニョフへの攻撃にかかる所要時間はどれほどですか?」


 オデッサは、港湾部から少し奥に入ったところに集積されている燃料集積地を焼き払い、キシニョフは連邦軍の南方方面軍司令部と鉄道網の破壊を行うのが任務の内容となっている。


 「オデッサまでは10分、オデッサからキシニョフまでが大凡150㎞なので30分強。攻撃するのにかかる時間を足せば、出撃地点への帰還までが、100分といったところです」


 ヴァンダーファルケの滞空可能時間は、通常60分が限界だが大型増槽の装備によって滞空時間は飛躍的に増加していた。

 さらに増槽の装着によって落ちる速度を、ブースターの搭載で解決していた。

 


 「我々は、基本的には出撃地点に留まり続けますが万が一の場合もあることを考慮してもらえれば助かります」


 万が一の場合というのは、おそらく敵艦艇と遭遇した場合ということなのだろう。

 黒海からは、すでに友軍の艦艇は退却していて制海権は帝国軍側にはない。

 

 「了解です。出撃地点付近で海水浴でもしていますよ」


 ヴァンダーファルケは、機体の各所に燃料タンクが内蔵されているため燃料がなくなった後は大きな浮袋になるのだ。

 そうやって冗談を言うと艦長との間に流れていた出撃前の独特の緊張感が弛緩した。


 「浮袋に穴が開いてないことを祈りますよ」


 少佐は笑いながら、そう返した。

 被弾しないことを祈るということなのだろう。

 そのとき、艦内の空気が変わった。


 「敵艦艇と思われる反応を探知しました!!」


 黒海に入る前には2か所の海峡があって場所は、その1つ目だ。


 「艦長より通達、輸送船を後ろに下げろ」


 偽装輸送船とは言え、中を改められれば作戦の遂行が不可能になるどころかヴァンダーファルケという重大な軍事機密を敵に無傷のまま鹵獲されてしまうことになるのだ。

 それは、避けなければならなかった。


 「各艦は、深度80まで潜航せよ。潜ってやり過ごす!!」

 

 

  

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