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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
東部戦線
22/68

weit Donner Ⅲ



 6機のエンジンを持つ大型の輸送機2機がヴェネジアの港のそばの航空基地に着陸した。

 輸送機の積んできたヴァンダーファルケが次々に降ろされ、待ち受けていた輸送車両に乗せられて輸送船の待機する岸壁へと走り出す。

 『遠雷』の名を冠されたこの作戦では、機材は輸送船で運ぶがパイロットは潜水艦に分乗する手はずとなっている。

 理由は、第一にヴァンダーファルケが潜水艦に積載できないこと、第二にヴァンダーファルケは替えが効くが育成に時間のかかるパイロットたちの替えが効かないというのが理由だった。

 ヴァンダーファルケを積んだ輸送車両が続々とヴェネジアの港へと入っていく。

 そこには連合王国の輸送船に似せた商船が数隻停泊していた。

 輸送車両が船に横付けするように岸壁に停車。

 1機ずつコンテナに積み込まれたヴァンダーファルケをクレーンで積み上げ輸送船の甲板に敷き詰めていく。

 その作業も一時間半余りで終わった。

 輸送船にはためく軍旗は帝国の紋章たる鉄十字ではなく王室海軍の軍旗だ。


 「レーベレヒト・エルンハルト少佐より、作戦司令部へ通達。準備は完了した」

 『作戦司令部、了解。これより『遠雷』作戦を第2段階へと移行。陽動部隊、制圧部隊、奇襲部隊は直ちに作戦を開始せよ』

 

 この作戦の参加兵力は以下の通りで

 

 ・陽動部隊  国防海軍地中海方面軍2個駆逐隊駆逐艦8隻

 ・制圧部隊  第1群 国防海軍航空隊1個大隊、国防空軍第2航空艦隊第2中隊、国防空軍第4降下猟兵師団より2個連隊。

        第2群 帝国国防軍直属第701試験戦闘団、バルカン半島沿岸警備隊2個中隊、海軍地中海方面軍輸送部隊、海軍第33潜水隊群よりIXD型潜水艦6隻


 陽動部隊が、アドリア海を抜けて西進し敵部隊の目を集める。

 それと同時に、制圧部隊の戦闘機部隊で陽動部隊上空の制空権確保を行いつつ、降下猟兵師団によるアドリア海周辺から黒海に至るまでの敵勢力の持つ航空基地を制圧し無力化。

 第2群への敵の目をそらすために航空基地を占領するのが目的となっている。

 第2群を敵部隊から守ることが第2段階での目標だ。

 作戦開始の指示のもと、各部隊の任務行動が一斉に始まった。

 ヴェネジアの港に停泊していたソルダティ級駆逐艦をはじめとする8隻が次々に出港し始める。

 ベルーツォ式ギヤードタービンが駆逐艦に推進力を与え加速していく。

 空軍部隊も次々に作戦行動を開始した。

 夜半、アペニン半島(サルディニア王国本土)の東側、アドリア海、イオニア海沿岸の航空基地上空には多数の落下傘が舞う。

 前線拠点的な航空基地ではなく前線後方の航空基地だ、警戒もそこまで厳しいものではない。

 前段階の準備とし降下の始まる前に現地の帝国軍を支援する組織によって各地で電話線が寸断されていた。


 「降下時の損害はあるか?」


 作戦行動前に部隊の指揮官が小声で各小隊ごとに点呼をとるように命じた。

 どうやら、着地に失敗した兵数は10本の指にも満たないらしい。


 「事前の打ち合わせ通り、第1中隊、第2中隊で兵舎、第3中隊、第4中隊で格納庫にあたれ」


 小隊ごとに纏まっていたの移動するうちに各中隊ごとの纏まりへと変わった。

 基地内に侵入すると歩哨の喉笛を斥候の兵士が切り裂いた。

 敵の監視の目を消すと、そのまま目的とする兵舎や格納庫を目指す。

 兵舎では、パイロットたちがいてそれを押さえることで基地を無力化するのが狙いだった。

 基地があっても機体に乗るパイロットがいなければ、航空基地は存在したところで意味がなかった。

 小銃を一連射した後、起きてきたパイロットに対し


 「降伏せよ。すでにこの基地は、帝国が接収した。おとなしく降伏する場合は、その命を保証する」


 寝起きでろくな抵抗を見せないまま、ほとんどのパイロットが捕虜となった。

 格納庫では、機材の破壊が行われ航空基地としての能力は、大きく損なわれた。

 その後、パイロットらを人質に管制施設も占拠し基地を無力化する。

 沿岸部の航空基地では、同時刻に帝国軍によって基地を制圧された。

 そのために、組織的な抵抗を見せた基地は無かった。

 作戦司令部にある戦況を示す地図には、沿岸部の各所に帝国の軍旗が置かれていた。 

 

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