weit Donner
ここから序盤部分では、最大規模の作戦になるかなと思います。
「我々、【帝国国防軍直属第701試験戦闘団】に新たな命令が下された」
10月6日―――――早朝―――――凛とした空気に声がよく響く。
滑走路のそばにパイロットたちを集めての作戦行動開始前の訓示だ。
「先日、連邦軍の第2ウクラツィア軍が帝国領マジャロルサーグ王国に侵攻してきたことは各員知っているだろう。現在、国境近くのデブレツェンで友軍が必死の戦闘を行っている。俺たちが睡眠をとり朝食をとり、こうして話している間にもだ。友軍はおよそ3倍の敵を前に善戦をしているがこのままでは戦況は悪化する一方だ。そこで第701試験戦闘団に命令が下令された。作戦名は『遠雷』だ。本作戦の概要を説明する。本作戦は、第一段階としてアドリア海の出口の敵を友軍航空機が撃滅。第二段階として、周囲の敵航空基地への友軍空挺部隊による夜間強襲。これらは第三段階への準備に過ぎない。第三段階は、第701試験戦闘団によるオデッサ、キシニョフの両都市への奇襲攻撃だ。目的は、集積された物資を破壊し、かつそれを運ぶための鉄道網を寸断することにある。質問はあるか?」
『遠雷』とはよく言ったものだ。
帝国領から遥かに離れた敵の後背を突くのだから。
「少佐、私たちの移動は、快適な空の旅でしょうか?」
質問をしてきたのはアナリーゼ中尉だった。
「残念ながら、快適な空の旅ではないが……喜べ、今回は潜水艦での船旅だ」
移動距離は優に1000㎞を超す。
船旅と言っても差支えはないだろう。
そこに6機のエンジンを持つ大型の輸送機Me323が2機、滑走路に滑り込んできた。
時間か……。
「ほかに質問はないな?これよりヴェネジアの港へ向かう。各員、装備等を積み込め!!」
帝国領サルディニア王国北部から多数のメッサーシュミット Bf109TやBf109F、艦上爆撃機Ju87Cや艦上攻撃機 Fi167が飛び立っていく。
それらの機体は、空母グラーフ・ツェッペリンに搭載する予定の機体であったが建造が中止されてから第16試験飛行隊として沿岸警備を主任務としていた。
Bf109tは、Bf109シリーズの機体を艦上戦闘機として使用できるよう改造したものだった。
『監視者03より敵艦船を発見せり。軽巡洋艦1、駆逐艦2、ブラチ島南東沖50㎞』
アドリア海からイオニア海にかけて放った十数機の偵察機のうち、1機が敵艦船を発見したのだ。
「艦種は分かるか?」
『巡洋艦は、リアンダー級と判断。駆逐艦は判断不可能』
さらに敵部隊発見の報告が続く。
『監視者09より、敵部隊を発見せり。ダイドー級軽巡1、駆逐艦3、バルレッタ東方沖150㎞』
リアンダー級は、連合王国の王室海軍が初めて建造した軽巡で旧型の軽巡洋艦であるが一方のダイドー級は、防空巡洋艦として列強各国の目を引いた艦艇だった。
その防空戦闘能力は、極めて高い。
「敵は複数群いるようだ。監視者各機は、引き続き索敵を怠るな」
帝国の南方海域である地中海は、連合王国海軍の艦艇が跳梁跋扈し帝国海軍のUボートやその他艦艇に対し目を光らせている。
帝国の内海とさえ言えるアドリア海にすら敵艦艇が出没しているのだ。
「指揮官機より通達。部隊を2つに分ける。第1中隊、第2中隊をヴィルヘルムと呼称。第3中隊、第4中隊をカイザーと呼称。ヴィルヘルム攻撃目標、敵第1群。カイザー攻撃目標、敵第2群」
指揮官が、指示を出すと総勢50余機の第16試験飛行隊の艦戦が艦爆が艦攻が二方向に別れてそれぞれの進路へと機首を向けていく。