Begegnung
「これより、敵制空権内に入る。各員は警戒を厳にしろ」
何度か、友軍の基地に着陸して燃料補給をしてマジャロルサーグ王国の東の隣国ロムニ共和国へと入っていた。
ロムニ共和国は、すでにロシャス連邦軍の占領下となってしまっていたがマジャロルサーグに近い地域には、帝国軍の残存部隊が多数いて抵抗を続けていた。
連邦軍のパグラチオン作戦による攻勢を防ぎきれなかった帝国軍は1500㎞の長さを持つ東部戦線のどこにおいても後退戦を戦うことを余儀なくされており、すでにロムニ共和国を含むバルカン半島の支配権は帝国には無かった。
味方の部隊の上空を通過する―――――その多くが傷つき疲れ果てていた。
定数を満たしている部隊は無論無いし、装備を捨てて退却している部隊も見受けられる。
安全圏に逃れたい一心で退却してきたのだろう。。
戦況を知るべく、現地の司令部の通信の周波数に合わせて所属を名乗るがノイズしか聞こえてはこなかった。
すでに撤退してしまっていて機能していないととるべきか。
レーダーを避けるために低高度で飛んでいるが見えるのは友軍の痛ましい姿だけだった。
『少佐、右前方に煌めくものを確認』
敵機か―――――。
『爆撃機だけですわ』
アナリーゼが、Fernglas 08(帝国軍の装備する双眼鏡)を覗きながらそう言った。
護衛戦闘機がいないのであれば爆撃機を落とすことは、そう難しくない。
「各員に通達。敵爆撃機が接近中。後方には友軍部隊がいるため偵察任務ではあるが爆撃機を邀撃する」
燃料は、さっき補給したばかりで十分に余裕があった。
Fernglas 08でその方向を見ると双発の機体を確認することができた。
おそらく尾翼には赤星のマークが入っているのだろう。
「敵機の高度は目測1500だ。1800まで上昇して待機する。機種はペトリャコーフだ。一機撃墜すれば3ポイントだ。勲章を狙ういい機会だ」
ペトリャコーフpe―2爆撃機は、1941年のバルバロッサ作戦のときから姿を見せている高速の双発戦闘爆撃機で多数が東部戦線において目撃されている。
故障が多く稼働率は低いもののそれを補って余りある機数で味方部隊に対し猛爆を加えていた。
スロットルを倒してエンジン出力を上げて上昇する。
『視認にて敵機を確認。少佐の言った通りペトリャコーフです。機数、80!!』
ヘッドセットで聞こえた声は、緊張感を感じる声だった。
新機材で臨む初めての実戦だから、初めて戦場を踏む者ではなくてもそう言った感情を抱くのだろう。
「これより、攻撃を開始する。手前の梯団から第1中隊。2つ目の梯団を第2中隊。あとも同様だ。かかれっ」
敵は20機ずつ4つの梯団を組んでいる。
俺の中隊が一番手前の梯団に攻撃しつつ他の中隊が討ち漏らした機体を落とすのが無難だろう。
『了解』
各中隊ごとに散開していく。
そして第4中隊から敵爆撃機へ対しての攻撃が始まった。