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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
701戦闘団始動
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Das erste Outing

始動編は、ここで終わりです。

ようやく戦闘団としての戦闘が始まりますね。

引き続きお付き合いをよろしくお願いします。




 5月に入りマジャロルサーグ王国の首都ブタペストの近郊の帝国軍第7軍団の基地には、50機の秘匿呼称StahlBirdmanとそのパイロット36名が到着した。

 秘匿呼称StahlBirdmanは、隼を意味するヴァンダーファルケという正式名称が与えられた。

 そして部隊名も【帝国国防軍直属第701試験戦闘団】となり正式に部隊として扱われるようになった。


 「総員、傾注!! これより第701試験戦闘団指揮官のレーベレヒト・エルンハルト少佐に訓示をいただく」


 副官のノルトマン・シュナイダー中尉が座を俺に譲って脇へと避けた。


 「諸君らにも説明があったことと思うが、この部隊は悪化する戦局を打破するために設置された部隊だ。我々の装備するヴァンダーファルケは、戦局を打破するのに十分な威力を持っている。機体の開発に関わった俺が言うのだから信じてもらいたい。そしてもう一点、我々に課された使命として宣伝プロパガンダがある。つまり実戦で素晴らしい結果を残さなければならないということだ。諸君らの奮闘に期待する。以上だ」

 

 正直、勝てる見込みのない戦争を続ける気は帝国国防軍にはない。

 あとから聞かされた話ではあるがヴァンダーファルケの真の目的は、その威力をもって講和の機会を作りだすことにある。

 総統や一部高官を除く軍首脳部の理想プランは、今となっては最良の敗戦を迎えることにある。

 勝てないなら、どうにか講和に持ち込みこれ以上の損害を出さないようにしたい。

 それが彼らの思惑だ。

 それに応えるためにも、この部隊は常に高成績を出し続けなければならない。

 すでに総統は今年の国家戦略基本方針を固めておりその中には、東部戦線における攻勢の案が含まれており、その中に第701試験戦闘団が投入される可能性があることはフリードリヒ・フォン・シュタウヘン少将から聞かされていた。

 合衆国軍、連合王国軍、亡命自由共和国軍によるノルマン上陸が噂されており、東部での反攻は立ち消えになる可能性が大きいが、それでもこの部隊が激戦地に投入されるのは明白だ。

 だから、訓練を手抜きにするわけにはいかない。





 


 連邦軍から鹵獲したT34戦車を用いての対戦車戦闘、探照灯を機関銃の射線としての回避機動、戦闘機との空中戦、爆撃機を用いての邀撃戦闘、離着陸、輸送機からの出撃、潜水艦への着艦など想定されうるすべての訓練を連日にわたって行い3か月の短期で部隊の養成期間が終わった。


 「今日で訓練が終わりを迎えるわけだが、今日の訓練内容は少し工夫を凝らしてみた」


 いつも同じでは、こちらも気が滅入ってしまう。


 「焦らされるのは苦手ですわ。早く教えてください」


 アナリーゼ中尉が熱っぽい視線を送ってくる。

 彼女は、狂姫きょうきの異名を持つ人物でその出自は、この中でも異質だ。

 もとは、大きな商家の一人娘だった。

 だが、商売上のトラブルで彼女の一家が襲撃を受けた。

 彼女は、親戚のもとで育てられたがある時、失踪――――――一家を襲撃した者たちを惨殺し逮捕された。

 事情聴取の際には、殺すたびに自分の嗜虐心が満たされ楽しかったなどと供述してほぼ終身刑の状態で服役していた。

 それをもの好き将官としても知られる――――――フリードリヒ・フォン・シュタウヘン少将が便宜を図って釈放し自身の諜報組織の一員としてあらゆる技術を仕込み戦闘狂へと育て上げていた。

 俺と同様に少将の部下なのだ。


 「少しは、考えて欲しかったが言ってしまおう。今日の訓練は、敵地への強行偵察だ。連邦軍は、すでにバルカン半島に進出し攻勢の用意をしているとの情報が入ってきた。仮にベオクラード攻勢と呼ぶが、友軍の偵察部隊がことごとく敵の哨戒線に引っかかり偵察ができていない。そこでこの任に抜擢されたのが我が隊だ」


 部隊の兵士たちは不安そうな顔をする者もいれば、訓練の終了に喜ぶ者もいて反応は様々だ。


 「我が隊の最初の任務となるわけだが俺は、これが初陣になると想定している」


 初陣になるということは、つまり戦闘が生起するということだ。


 「各員、油断の無いようにな、以上でブリーフィングを終わる。各員は直ちに出撃準備をしろ!!」

 


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