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蒼空の鉄騎兵―斜陽の戦線にて―  作者: Karabiner
701戦闘団始動
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セレト郊外


 

 西暦1944年4月―――

 帝国とロシャス連邦との間に生起したカメネツ=ポドリスキー包囲戦は、佳境を迎えていた。

 帝国の東部戦線南方を管轄する約20個装甲師団、総兵力20万以上の南方軍集団をロシャス連邦は、倍を超える50万の部隊で包囲し殲滅しようとしていた。

 連邦軍が全戦線に渡って大規模な部隊移動を行っていることを南方軍団総司令部は察知していたが、同時に大規模な欺瞞活動が行われていたために攻勢の正確な位置や日時は掴めず、また戦略的撤退を総統が禁じていたことによって戦わざるを得なかったのだ。

 しかし、南方軍集団の損害の増加が急の度合いを増したことにより包囲からの脱出を、連邦領からの帝国軍兵力の撤退を総統が容認すると脱出作戦が始まった。


 ―――セレト周辺―――


 「目標、敵戦車部隊。各個にて砲撃開始!!」


 帝国軍の防御陣地に展開された対戦車砲、迫撃砲、高射砲が一斉に火を噴いた。

 対戦車砲や高射砲は、砲身が水平に近い角度にまで倒されていて敵との距離が十分威力を発揮できる距離になるまで耐え忍んでいたのだ。

 それに合わせて数少ない戦車部隊も砲撃を行っている。

 襲い来る連邦軍の第4戦車軍の強力な機甲部隊の戦車の前面、側面、後方に土煙が舞い上がる。

 対する連邦軍の戦車、T34も負けじと85mm戦車砲ZiS-S-53を撃ちながら前進する。

 今までの敗走の鬱憤を晴らすような帝国軍の砲撃は、多数の連邦軍戦車を撃破しているが損害を出しつつも連邦軍は物量に任せた突撃を止めない。

 エンジングリルに直撃弾を受けた戦車は、黒煙を噴き内側から爆発を起こす。

 履帯に直撃を受ければ擱座しその場で動きを止める。

 帝国軍の装備するティーガー戦車は、1130mの砲口初速で2000mで175㎜の装甲を貫通するのだ。

 絶対数は、少ないまでもその威力は絶大で自らも多数の敵弾を受けつつも確実に連邦軍戦車を撃破していた。

 特筆できる点は砲撃力だけではなく、40度の傾斜を持つ150㎜の装甲板は他に類を見ないものだ。

 正面装甲を打ち抜かれたT34の砲塔が上へと吹き飛ぶ。

 弾薬箱に火が回ったのか爆砕する戦車もいた。

 そして前方の戦車が撃破されたことでそれを避けようと速度が落ち側面をわずかに晒したT34が轟音と共に巨大な火柱を噴き上げた。

 しかし、T34は僚車が被弾し炎上し擱座しても前進することを止めない。

 距離が詰まったことにより、射撃制度が上がると帝国軍側のパンターや四号戦車にも損害がで始めた。

 ティーガーほどの装甲を持たない、戦車は側面や車体下部に砲弾を受ければ沈黙を余儀なくされるのだ。

 

 「各車両、煙幕を焚け!!。退却する!!」


 指揮官が麾下の戦車部隊に撤退を下令する。

 各車両に備え付けられたS-マイン発射器から発煙弾が発射され辺り一面が白煙に包まれた。

 見えない中では、距離が近くとも射撃制度は鈍り、被弾する戦車は減った。

 ティーガーや、パンター、四号戦車が履帯に逆回転をかけ後退し始める。

 対戦車砲や迫撃砲を扱っていた兵士たちは、一足先にトラックに乗り込み最大速度で退却を開始していた。

 白煙の中からの帝国軍戦車の突撃を警戒してか、T34は暫くその姿を白煙の向こうに留めていたがやがて、白煙が晴れると再び前進を開始したが帝国軍戦車が自身の装備する戦車が撃破しうる距離から離脱していることに気づくとそれ以上の前進を止め、戦車戦は終了した。


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