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仮設風向計/詩集その3

X-day/『無題』

作者: 浅黄 悠

X-day


全てが変わる日は案外近いのかもしれない

止まない雨は無いと言いながら

平行線のような未来を信じて疑わない人間を見てきた



全てが終わる日は案外近いのかもしれない

明日でもなさそうで 明後日でもなさそう

けれど一か月後は……半年後は……



全てが変わる日は案外近いのかもしれない

昼飯に友人と伸びかけのパスタを食べて

いつもそうしているようにスマホを打って

一日が早く終わらないかと時計を盗み見て

また会おうと手を振った後帰途につき

家で一人寂しさに泣くような日々は



全てが消える日は案外近いのかもしれない

例えばこう考えることがある

暗闇でキャンドルの灯を大切そうに掲げる君がいて

私はライターのスイッチを必死で押し込み続けていて

トンネルの先から細く吹いてくる風を心から恨んでいる

小さな懐中電灯を手に入れて前を行くあいつだって

その背中は自信に溢れているようで

崩れていく時間を恐れているようにも見える

それぞれが一つの光源を命のように大切にして歩いていて

奪おうとする奴がいないか 替えをくれる奴はいないか

自分の灯が隣の灯がどれだけ素晴らしく輝くか

そういうことに執心しきっているから忘れている



全てが崩れる日は案外近いのかもしれない

トンネルが突然切れた先で白日の下に晒され

ライターもキャンドルも分からなくなってしまうような



全てが変わる日は案外近いのかもしれない

何が変わるのか どんな風に変わるのか

そこにいるのは私だけなのか

光に慣れてきた目に映るのは素晴らしい青空かそれとも

そんな瞬間がいつ訪れるのかさえ分からない

けれどその一瞬の眩惑

全てが宙に浮くように真っ白な一拍の中で

思わず口を開けて呆然と立ち尽くす様だけを

何となく身体が予感している



全てが変わる日は案外近いのかもしれない

変わったと思ったときには大抵

そんな気付きは価値を失くしている

全てが変わる日はいつか来るというのに




______


『無題』


言わなければ口に出さなければ 

相手には伝わらない と 

どれだけ言われただろうか

あまり何も喋りたくない

今日みたいな日はどうすればいいんだろうか


やっと僕の苦悩に僕なりの答えを掴んだと思えた

泥も水も釈然としないものを掻き回し続け


とても気分が良くて快晴のような

そんな時が一番危ない

今日はやけに明るい顔をしているね と

話しかけてくる優しい人が

例えば貴方(あのひと)のような


前々からお前が気づいていたように

本当に馬鹿なのは僕だ

誰かへ伝える端から腐っていくと分かっているのに

ようやく手にした物を嬉々として腐らしていく


言葉によって掬い取れるものなんて

たかが知れているというのに

言葉によって表せる真実なんて

どこにもないだろうというのに

それを簡単に忘れてしまう


誰かに伝われと思うのは

僕の驕りなのだろうか

だとすればこの衝動は

貴方(あのひと)が僕の真実に

僕の生き方の法則に従って生きて欲しいというエゴでできていることになる

お前はそれでも言葉を吐き続けるか


こんな戯言も終わりにするか


X-dayというのは和製語だそうです。

最近、誰かが誰かに向けた一対一のような詩を書くことが多いような気がしたのでモノローグの詩を書いてみました。

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