表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せのあり方  作者: 人生依存
第5話:分岐点の修学旅行
13/50

第一節


「救急車だ! 誰か救急車を呼べ!」


「バカ! 救急車なんて呼んでも遅いだろ!」


「まだ分からないだろ! あと、警察も誰か呼んでくれ!」


 場が騒がしかった。

 どこの誰なのかも分からない通勤途中のサラリーマンたちが、慌てふためく。

 どうして彼らはそんなに必死になっているのだろう。

 変に冷静な思考で目の前の光景を見ている自分に嫌気がさす。

 駅構内には鼻が曲がりそうになるほど鉄の香りが充満している。

 いや、これは鉄の香りではなく、人の血の香りだ。


『 5番線に到着の電車は16時10分発の東京行きです 』


 様々な声や感情が目前で入り混じる中、自分は関係がないと主張するかのように、いつもと変わらない調子でアナウンスが鳴り響く。


 何だ。一体何が起きた。

 どうして周りの人間はこんなにも叫んでいる。

 臭い。鼻が曲がりそうだ。

 鼻をつん裂くような香りを放っている血は一体誰の血だ。

 僕は未だに状況が理解できない。

 違う。僕は状況を理解しようとしない。


「おい大器! お前どうして止められなかったんだ!」


 右隣にいた大輔が怒鳴りながら僕の右肩を掴んでくる。

 彼の問いに、僕は答える事ができない。

 僕はただ、駅のホームから目の前に停車する電車を見つめる事しかできない。

 電車を待っていた列の最前列で、加奈を轢き殺したくすんだ銀の車体を呆然と見つめる事しかできない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ