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幸せのあり方  作者: 人生依存
プロローグ
1/50

僕は、

















 僕は、生き物を殺すことで過去に遡る 。


















 殺す生き物は何でもいい。

 どんな生き物であろうと、殺した瞬間に僕は過去へと遡る。


 殺した瞬間と言っても、ナイフで人を刺しただけでは過去へ遡ることはできず、刺した相手の心臓が停止して初めて過去に遡る。

 ただ、殺した生き物によって遡る時間は変動し、人間に近い形の生き物ほど、殺した時に遡る時間は長くなり、より過去へと遡ることができる。


 もちろん、人間を殺すことで過去に遡ることもできる。

 その場合、殺す人間が自分に近い存在であるほど、殺した際に遡る時間は長くなる。

 通りすがりの見知らぬ人間よりも、家族や恋人を殺したほうが過去へと遡れるということだ。


 そういえば、ちゃんと説明をしていなかったけれど、『 遡る 』っていうのは、過去を『 振り返る 』という意味ではなく、世間一般で言うところの『 タイムリープ 』ということだ。

 もっと分かりやすくいえば、僕は生き物を殺すことで、精神を過去のどこかの時点での、自身の体へとタイムスリップさせる事ができ、人生をそこから送り直すことができるのだ。


 初めてこの事実を知った時から、僕は様々なパターンでたくさんの動物を殺し、たくさんの人間を殺し、僕の体に宿っている不思議な力について実験を繰り返した。

 実験の結果わかったことは、遡ることができる時間が殺した生き物によって変動することと、どの生き物を殺せば、より長く時間を遡ることができるのかってこと。

 そして、遡るために殺したものは、次の周の世界で殺すことがなかったのだとしても、『 遡る前に殺した日時と、全く同じ瞬間に死ぬ 』ということだ。

 何度遡って周を重ねても、僕が殺した者たちは一度目と必ず同じ瞬間に命を落としてしまう。


 僕によって命を奪われるものは周を重ねるごとに増え続け、僕のせいで死ぬ時間が決まってしまう者は必然的に増えていった。

 言わば、僕という人間は生き物の死の瞬間を操ることのできる死神だ。

 どんな生き物であろうと、自分が望むタイミングで殺してしまえば、次以降の周で同じタイミングで命を落とす。

 自分が生きて行く上で障害だと思ってしまった人間は、一度殺してしまえば自分の障害となることはなくなる。

 僕の障害となったものは必ず命を奪われることが保証され、未来という駅へと伸び続けるはずの線路は解体されてしまう。

 これを死神と呼ばずして何というのだろうか。


 この力の存在を知った僕は、力を乱用した。

 嫌なことがあれば人生をやり直し、嫌いな人間がいればすぐに殺した。

 誰かを殺したところで、僕は過去に戻ってしまうだけだから、警察に捕まるなんてこともなかった。

 そうして、殺して殺して殺し続けて、何度も何度も人生をやり直して。

 そうすることで、僕は満足できる人生を送ることができると思っていた。

 幸せになれると思っていた。


 本当に、何の疑いもなくそう思っていたんだ。


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