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女子高生、時間、死  作者: 那珂さん
3/3

答え合わせ

 約束の土曜日になったが天気は僕の内面と正反対でカラッとした晴れ、洗濯物がよく乾きそうだと思いつつ集合場所を目指す。

 改札を出てすぐに彼女とは合流できたし、一番驚いたのは彼女がいつも通り元気に振舞っていたこと。電車に乗りながらどんな顔をして会えばいいのかとずっと考えていただけに面食らった。

「ようこそ両舞へ!」

 ついてきて、といいながら歩き出す彼女の後姿を追いかけながらどこに行くのかと問う。

「私のお家」

 なぜ家にお呼ばれしたのか検討もつかなかったので困惑していたが彼女は「いいからいいから」とどんどん進んでいった。

「着いた!」

 大きめなサイズの一軒家、その中は派手とはいかない落ち着きのある気品あふれたインテリアになっている。彼女の部屋に通された。

「はい、お茶」

 礼を言ってから喉を潤す。

「それでね、本題なんだけど。まず最初に放送室のことね、あれは本当。鳴宮くんにあの場所を教えてもらったのは紛れもない事実」

 だったらなぜ鳴宮は知らないと言ったのか。聞く前に彼女が続けた。

「私が教えてもらったのはあの鳴宮くんじゃないから、今の鳴宮くんは知らないの」

「は?」

 開始数分で既に理解が追いつかない。

「私ね、この時間を何度も繰り返してるの。鳴宮くんと仲良くなったのはいくつか前の世界の話」

 聞けば彼女は死ぬと時間を巻き戻して生き返るらしい、巻き戻されるのは入学式の日。一番最初に巻き戻されたのはストーカーに殺されたとき、モデルを辞めたのはストーカーに会わないためなんだとか。

「それじゃあこれは何回目の世界なんだ」

「うーん、わかんない。数えるのは諦めちゃったからな」

 ははっ、と疲れたような笑みを浮かべる彼女を見て今までの壮絶な人生を想像する。死を何度も経験してなお、普通である風を装う演技ができることに彼女の強さを垣間見た。

「……俺は何人目の彼氏?」

「うっ、うん。七人目かな」

 思ったより少なくて驚いた、てっきり学年で最後の一人かと。

「最後の一人だと思った? 私だって彼氏を選ぶ権利はあるんだから」

「それでも七番目だけどな」

「いや、順位で言うと一番なんだよ」

 面白そうなやつだと思って目をつけていたらしい、前の彼氏はみなスポーツ系で、理由を聞いたら「守ってくれそうだったから」らしい。理由だけ聞けばくだらないが彼らが彼女の希望だったと思うと笑うこともできない。

「スポーツマンがだめだったから仕方がないから俺に来たと?」

「待ち焦がれてたんだからね! 何年も何年も」

 俺に文句を言われても困る。映画デートを断った理由もここにあるらしい、もう見飽きたとか。

「どうだった? 新しい彼氏は」

「楽しかった、彼氏の試合観戦とかそんな感じのキラキラした青春は無いけど、そんなのもう飽きちゃったし」

 俺がやることはなんでもかんでも風変わりで面白いらしい。そういえば授業で僕の発表をとても気に入ってたような。生き方がフリースタイルと評された僕にも需要はあったらしい。

「何回も同じ発表見てたのによく今回も楽しめたな」

「実は毎回毎回内容が変わってるんだよ、たまに同じときもあったけど」

「諸行無常ってやつか」

「うんみゃ、君だけがいつも大きく変わってるの」

 存在がイレギュラーだとも何度か言われたことがあるが本当にイレギュラーだとは思わなかった。

「そうか、それならお前の命を守りつつ飽きさせないように面白いこともしなくちゃいけないわけだ」

「その通り、よくわかってんじゃん」

「手始めに今まで付き合ってきたやつら全員教えてもらおうか」

 困惑と疑問が混じって変な顔になっている。

「それだけじゃなくて腹が立った友達とか教師とかも」

 すこし合点がいったような雰囲気。

「復讐しよう」

 今日一番の笑顔でうなずく、本当に楽しそうでなにより。

 彼らに非はないのかもしれないが不慮の事故も防げないようではトップ選手になれない。

 復讐ノートを作りながら身のない雑談を繰り広げていると彼女が気の抜けた声で話し始める。

「なんか全然驚かなかったね、正直嫌われてもしょうがないかなとか思ってたのに」

 生き返るだけでなぜ嫌われるのか良く分からなかったがきっとそういう経験があったのだろう。

「心の準備大変だったんだから」

「そうか、じゃあこの話して嫌われた奴は誰?」

「ふふっ、やっぱ最初から君と付き合ってればよかった」

 生きることに疲れた彼女のせめてもの癒しになれば、と。正統そうな理由を感じつつその裏では何も知らずに復讐される人々のことを想像して笑う。

 はたして彼女はどうしてこんな気持ち悪い男と付き合いたいと思ったか不思議でしかなかったが、それでも気持ち悪かったおかげで彼女に見初められたと思うと少し複雑な気分だった。

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