出会いの味
あれはいつ頃だったのだろうか?
あの日は、くすんだ空から目で確認出来るぐらい雨粒が降ってきて少しずつ
地面に水溜りが出来ていく。
その光景を眺めながら僕は学校の帰り道で立ち寄った本屋で雨宿りをしている。
雨は止みそうにもなくそれどころか強さが増しているようにも見える。
この状況にため息が零れ今朝の姉の言葉を思い出す。
「ねぇ、今日は夕方から降水確率が80%ってテレビで言っていたから傘持っていきなさいよ」
「雨?」
僕は空を見る、空は快晴で雲一つ見当たらない雨が降るとは考えにくい
「大丈夫でしょう。もう行くわ、行ってきます」
「あ、こら」
こうして僕は姉の助言を無視して今こういう状況に置かれている訳で…
「あの時、姉の言葉を信じて傘を持ってきていれば、まぁ今さらだけどね」
それから時間はどれぐらい流れただろう。
十分…二十分…一時間…
雨は止む様子はなく僕を嘲笑うかの様に勢いを増している。
「くそ-雨の馬鹿野郎!!」
以降に止まない雨にムカつき大声でやけになって怒鳴ってみる、結果は効果なく近くにいた通行人
の人達は僕を見てクスクスと笑っていた。
僕は徐々に恥ずかしくなり顔が熱くなり真っ赤に染まる。
僕に対して効果抜群。
徐々に冷静を取り戻してきて顔の熱さも少しずつ冷めくる。僕は早く家に帰りたくて
その手段としてズボンの右ポケットからスマートフォン取り出しある人物に電話を掛けた。
「出るかなぁ…あ、おねぇお願いがあるんだけど三丁目の本屋まで傘持ってきてくれない?
そこを何とか…本当にありがとう。うん、待っている」
通話を切り、姉が来るのを待つ。
ここから家までは歩いても十分も掛からないはずだ。十分も掛からないのであれば
走ればいいのだが、濡れるのが嫌なので姉が来るのを今か今かと待ち望んでいるのだ。
その時、僕の隣に雨に打たれびしょ濡れになった女が入ってきた。
綺麗な真っ黒の長い髪に身長はそこまで高くはないけどスタイルもよく
吸い込まれそうなぐらい透き通った黒色の眼をしている。
誰が見ても美人と断言できる外見をしている。
しかも、僕と同じ学校の制服を着ていた。
女は僕の視線に気づいて笑顔で振り返り
「私も雨宿りさせてね」
僕は女から顔を逸らしただ、黙って頷いた。
その僕の態度にクスっと笑みを浮かべ
「君も○○高校だよね」
「そうです」
女の問いに顔を逸らしたままで恥ずかしそうに答える僕。
「そうだよね、同じ制服だからわかった。君は何年生?」
「一年です」
「なら私が先輩になるのかぁ。私、二年の○○…」
突如空が、唸り光が奔った。その後、すごい音が空中に響き渡った。
「ははは、今の凄かったですね…ってあれ?」
僕は先輩の方見てみるとしゃがんで体を丸めビクビクと震えている姿が
そこにはあった。
「先輩…大丈夫ですか?」
先輩は未だに顔を青ざめ体を丸め怯えている。まるで小動物のようである
少しずつ落ち着き始め、立ち上がりスカートを手で払い僕を恥ずかしそうに
睨むと
「い…今のこと…その…誰にも言わないで」
顔を真っ赤にして僕に頼み込む。数分前の僕みたいだなと思い口が緩み
笑みが零れてしまう
「ああぁ!!今笑った」
「ははは、すいません。少し思い出し笑いを…くく」
「また、笑った。本当に恥ずかしいだから、もう」
雷のおかげだろうか先までぎこちなかったはずなのに今は何故か普通に
喋れている気がする。
先輩は赤面した顔で制服のポケットからアメを取り出し、優しく僕の右手の手を
触り手に持ったアメを置いた。
女に免疫なかった僕は心臓がうるさく鼓動を打つ
「本当に言わないで、約束だよ。これは口止め料ということで」
頬を少し赤く染めて右手の指を一本立てて口に当てながら笑顔で頼む先輩は
とても可愛く…僕の心臓は鳴り止まず、徐々に鼓動の音が早くなっていき顔も熱く熱を帯びてくる。
今の気持ちを隠すかのように下を向き
「だ、だだ、大丈夫です。誰にいいませんから」
それを聞くと先輩は「最後に確認」と言って指を立て
「本当だよ、これは君と私との秘密よ」
僕は緊張していることを誤魔化すかのように貰ったアメを食べた。緊張していた為か味覚がマヒしいているみたいでアメの味がわからなかった。
先輩はそれを見て笑顔を浮かべる。僕は恥ずかしそうにそっぽを向く。
その後も雨は止まず僕の心臓の音をかき消しくれているかのように降り続いた。
それから、僕は姉が来るまでの間、先輩と他愛もない世間話で時間を潰すのだった。
これが、僕と先輩の出会いである。




