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第四話

 第四話 ―金―


 数百もある膨大な数のベッドの一つで、志隆は起きた。

「志隆〜起きた〜?」

 残念ながら美月ではなかった。

「聞いたことのある声」

「だ〜れっかな〜?」

 たいして数のない引出しの中から名前を見つけ出した。

「パイロットの人?」

「正解〜」

 やる気の無さが心から伝わってくる。

「じゃあ〜、せっかくベッドがあるから〜」

 かりんが上着を脱ぎ始めた。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

「ああ〜、そうだよね〜。脱がせたいよね〜。男なんだし〜」

 ベッドに身を投げた。

「いや、そういうことじゃなくて・・・・・・」

「着たまま〜?それはちょっと勘弁してほしいなぁ〜。

 それじゃあ、着替えてくる〜」

「だから!」

 志隆がかりんの腕を引っ張って無理やり座らせた。

「もしかして〜、したくないの〜?高校生でしょ〜?」

「はっきり言ってしたい気持ちは・・・存分にあります・・・が、

 いきなり初対面の人には・・・引く」

「自分が満足すればそれでいいじゃない〜。

 初対面だろうが〜、嫌いな人であろうが〜、友達であろうが〜」

 ・・・・・・

「他の男はそうかもしれないけど、とりあえず僕は違うよ」

「そ〜んなこといっちゃって〜」

「一応、僕を好きになってしまっている人が二人もいるんだし・・・・・・」

「三人よ。さ・ん・に・ん」

 思わず志隆はカリンを見つめる。

「まさか・・・・・・」

「ア・タ・シ」

 志隆は反射的にベッドぎりぎりまで後ずさりした。

「いや、あの、その、あ、え、あの・・・・・・」

「だから〜、い・い・で・しょ?」

 志隆は一日の内に二回も「初」を経験してしまうのであろうか。

「かりん!」

 救世主。

 今の彼は彼女のことをそういいたいであろう。

「何、人様の物に手をつけてるのよ!

 志隆は売約済みなんだからねっ!」

「いや、何もまだOKとは――」

「物でもなんでも、使ったもの勝ちじゃない」

 ・・・聞いていない。

「あなたたち!」

 こうなってしまえば、彼女も火に薪をくべるようなものである。

「美月指揮官!」

「さっさと仕事に戻りなさい!

 し、志隆は・・・も、もう私のものだから!」

「指揮官まで・・・こうなったら徹底抗戦です!」

「あの・・・人の話を――」

「あなたたちはまだ言論に過ぎないでしょうけど・・・実行したから!」

 本人そっちの気である。

「手、速っ!」

「いや・・・さすがにまだそっちまでは・・・いってないけど・・・・・・」

「じゃあ、同じようなものじゃないですか〜」

「な、何を!」

「しちゃえばいいんでしょ?それぐらいなら」

 レナが志隆に覆い被さる。

「これで・・・おあいこですよ?」

「じゃあ〜、私も」

 されるがまま。

 三対一とはいえ、女にされるがままになっている志隆の身も考えてやってほしいものである。

「次はお先にいかせてもらいま〜す」

「し、しっ、しっ、しっ・・・・・・」

「くっ・・・そこまでやるか・・・・・・」

「どう?」

「やけくそ!」

 ・・・・・・

「くはぁ・・・・・・」

「指揮官に先を越されるわけにはい、いきません!」

 ・・・・・・

「・・・・・・」

「それじゃあ、次のステップへ、っと・・・・・・」

 かりんが少しずつ手をのばす。

「や・・・・・・」

「っ・・・・・・」

 美月が少しずつ手をのばす。

「やめ・・・・・・」

「く・・・・・・」

 レナが少しずつ手をのばす。

「やめてくれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

 三人の動きが止まった。

「ありがとうございます神様〜。

 今度からは500円玉投げさせていただきます〜」

 泣きながら手を合わせていた。

「・・・時計が止まってる?」

 秒針が止まっていた。

 電池切れではない。

「とりあえず出よう。ここから」


 茶髪の男子を見つけた。

「清輝〜」

 動かない。

「清輝?」

 動かない。

「動いてよ」

 動かない。

「これならどうだっ!」

 ・・・・・・

「・・・やらなきゃよかった・・・・・・」

 元に戻す。

「他の人たちも止まってる・・・・・・」

 瞬き一つしない。

「やっぱりあなたも私達の仲間だったのね」

「だ、誰!」

 黒い長髪をした青目の女子が立っていた。

「私の名前は時野神子。私はそれしか知らないわ」

「それしか・・・知らない?」

「いいから黙ってついてきて」


「何これ?」

「時間制御装置。時間を止めるための機械。

 これで時間を止めている間に人間の記憶を消す」

「へ、へ〜」

「次はこっち」

「まだあるの?」

「戻りたくないわよね」

「ま、まあね・・・・・・」


「ここって入っちゃいけない場所なんじゃ・・・・・・」

「時間を止めていれば誰にも気が付かれないわ。

 あなたにはこれを操縦する技術が必要になるの。

 だから私が教えなければいけない」

「どうして?」

「わからない」

「わからないのに、こんなことやって大丈夫なの?」

「知らない」

 エレクシエストの体から搭乗室が出てきた。

「入って」

「うん」

 中は見たことがあったとおりだった。

「起動させるにはそこのレバーを全て上げればいい。

 歩かせるには足元にある台。両方前に踏み込めば前進。後ろに踏み込めば後退。

 腕を動かすにはわきにある穴に手を突っ込んでしたいように動かす。

 とりあえず、これだけ覚えておけば戦えないことはないわ」

「わ、わかった」

「詳しい部分はこれから死生物が来るたびにやるわ。

 復習だけは怠らないで」

「わかった」

 神子は搭乗室から出て行った。

「と、時野!」

「何」

「す、好きな人とかいる?」

「いても邪魔なだけだわ」

 時野はさっさと行ってしまった。

「何なんだろう・・・あいつ。

 知らない、とかわからない、とか。

 気になるなぁ・・・・・・」

「戻りたくなくても元の場所にいたほうがいいわ」

 いないと思っていたのにいたら、驚くことは間違いない。

「あなたが動けるという事実が伝わったら、それはそれでやっかいなことになる。

 元の場所にいて。1mmも違わずに」

「1mmも!?」

「そうよ」

「無茶言わないでよ・・・・・・」


「やられるとわかっていながら何も出来ないっていうのも、嫌だなぁ」

 仕方がなく元の位置に寝転ぶ。

 時がはじまった。

 その時。

「防時局第三支部より西北西5km地点にAST反応!

 死生物第十三型、ムボです!」

 四人のいざこざが終わる。

「烈那英子はエレクシエストに搭乗し、待機!

 指揮室外にいるオペレーター、及び美月指揮官は戻ってきてください!」

「じゃ〜、私当番じゃないから〜」

「あんたも来なさいよ!」

 レナがかりんを引きずっていった。

「来たかったら、来てね」

 美月が走っていった。

「・・・行こうかな。じゃあ」


「状況確認!」

「現在ムボは第三支部に約時速60kmで向かっています!」

「いきなり根元を叩こうってわけね。いいじゃないの」

「地下ゲート開放完了!」

「四次元ゲート完了!」

「合図を!」

「エレクシエスト、投下!」

 エレクシエストが急降下し、また消えた。

「結局、四次元ゲートのこと教えてもらってなかったっけ・・・・・・」

「志隆ったら、そんなこともまだ知らなかったの〜?

 四次元ゲートっていうのは簡単に言えばワープゲートのことで〜、

 三次元から四次元へ移動させた後に〜、四次元の空間を磁力で移動させて〜、

 無理やりくっつけて三次元に出してやるってこと〜」

「・・・薄々わかったよ」

 日常から非日常へとまた戻される。

「σください!」

「σ、投下!」

 線の無いレールガンが投下された。

「出力80%!・・・発射!」

 ムボがその10倍はあろうかという爆風に飲み込まれた。

「す・・・すごい・・・・・・」

「これはまずそ〜な展開〜」

「何がまずいの?」

 かりんがモニターを見つめたまま答える。

「σにあんなに火力は無いわよ〜。っていうことは、

 ムボの皮膚か〜、体全体が爆薬っぽいものでできてるかもね〜」

「もしかして・・・・・・」

 かりんが志隆を見つめた。

「ここの付近に来たら自爆してここを一斉排除するつもりね〜」

「・・・死ぬの?」

「さぁね〜」

「τください!」

「τ、投下!」

 ロケットランチャーが投下される。

「ロックオン!・・・発射!」

 さらに凄まじい爆風が起こる。

「英子ったら、ここで全部燃やし尽くすつもりなのね〜」

「燃やし・・・尽くす?」

「危険な爆弾を処理する一番簡単な方法・・・・・・

 人のいない安全な場所で爆発させればいいのよ〜」

「χください!」

「χ、投下!」

 肩に担ぐタイプのガトリングガンが投下される。

「ずいぶんいろいろ使うな〜」

「英子は遠距離専門だから〜」

 リボルバーが回転をはじめる。

「発射!」

 爆煙でムボの姿が消える。

「もうちょっとよく考えなさいよ〜」

 AST粒子砲が爆煙を切り裂く。

「頭部直撃!損壊率50%!」

 エレクシエストの顔面がただれたようになっていた。

「可動に問題はありません!」

「ムボ、第三支部到達まであと3km!」

「υください!」

「υ、投下!」

 清輝が十一型に放った投げ槍が投下された。

「いきます!」

 υは顔の無い首に直撃した。

「γください!」

「γ、投下!」

 柄の長い斧が投下された。

「ていやああああ!」

 エレクシエストはその四脚で高々と跳躍するとムボに向かってγを振り下ろした。

「いけぇええええええ!」

 血しぶきが空を染める。

 柄は折れていた。

「υ、γ、ムボに取り込まれます!」

 埋め込まれるようにυとγが吸い込まれていく。

「切れた部分を修復していきます!」

 ムボの顔の無い口が開かれた。

 υとγがエレクシエストに放たれた。

「左肘部、完全に切断!」

「あと2km!」

「οください!」

「ο、投下!」

 銀色のマグナムが投下される。

 エレクシエストがγを再び投げつける。

「どうしようって・・・・・・」

「なるほど〜。でも、うまくいかなかったらお終いね〜」

 再び口が開かれる。

 右手でοを構える。

「当たれ!」

 モニターが砂嵐で見えなくなる。

「ムボ、消滅!」

「搭乗員の回収を自衛隊に頼んで。お疲れ様」


「一体、武器ってどのくらいあるの?」

「レオムのレールガンも含めれば25種類」

「すごいんだね!」

「全部見たい?」

「うん!」


 何十メートルもあるような武器が整然と並べられていた。

「左からα、β、γ、δ、ε、ζ、η、θ、ι、κ、λ、μ。

 でこっちは遠距離用武器で右からν、ξ、ο、π、ρ、σ、τ、υ、φ、χ、ψ、ω。

 作られた順番にギリシャ語で並べただけなんだけどね」

「全部使うの?」

「戦況とパイロットの好み次第だからわからない。

 ちなみにκはまだ一度も使われてないわ」

「こんなに短いんじゃね」

 せいぜい二人の身長を足したほどしかない刃渡りを見て志隆が言う。

「もし、パイロットになったら使ってあげてね」

「同じ、小さいもの同士?」

 美月がむっとする。

「どうせ小さいですよ〜だ」

「怒った怒った」

「おこってま〜せ〜ん〜」

「やっぱり怒ったところもかわいいや」

 一気に美月の顔が赤くなる。

「い、いきなりそ、そんなこと、い、言わないでよね!」

「照れてるんだ〜」

 多少むすっとしながら美月が言い放った。

「ほ、ほら、志隆もう帰んなきゃいけないでしょ!ほらほら!」

「はいはい」


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