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第二十六話

 第二十六話 ―肉―


「キラカゼ内約三箇所にAST反応!

 第三十二型死生物リナ、第三十三型死生物イラ、第三十四型死生物キンです!」

「またまた演習中ね・・・全く。

 エレクシエスト、一型機、二型機、三型機、投下!」


「・・・・・・」

 白く、細長い八面体が六つ。

「・・・何か、強そう」

 巨大な目玉。

 脇から生えている無数の触手。

「「・・・?」」

 ビルの上にたたずんでいる白い発光体。

 他の二体と比べると、あまりにも小さい普通の馬であった。

 しかも、角が生えている。

「リナに二型機、イラに一型機、キンに三型機!」

「「「了解!」」」

 六体がほぼ同時に行動を開始する。

「ν、ちょうだい!」

「ν、投下!」

 小型のハンドガンが投下された。

 それをイラから放たれる触手へと当てていく。

「弾!」

 手馴れた手つきで再装填する。

「μ、ちょうだい!」

「μ、投下!」

 三又の長槍が投下されると、すぐさま眼球へと投げつける。

 裂け目から血が流れ出し、道路を真っ赤に染めていく。

「κ、ちょうだい!」

「κ、投下!」

 一型機がκを構える。

「一気に行く!」

 迫り来る触手を撃ち落とし、νを投げ捨てると、両手でκを眼球に突き立て、縦に思い切り引き裂く。

 肉片と思われる液状のものが中からあふれだす。

 しかし、μを突き立てた部分から新たな触手が生成される。

「・・・!!」

 触手はμを取り込みながら、一型機の左肩を突き刺した。

「・・・くうっ・・・!」

「志隆!」

「「しりゅーしゃん!」」

 一型機は左手でμを掴む。

「これは・・・これは僕なんかじゃないんだ!」

 一型機がμをかき回すようにして深く差し込む。

 そのとき、イラの背面のビルの屋上に、キンが立っていた。

「F−6地区のAST濃度が異常値です!」

「志隆!逃げて!」

 一型機がイラを踏み台にして逆側に跳ぶ。

 そして、志隆の視界は真っ白に包まれた。

「F−6地区を中心として半径約250m内の全施設からの反応がなくなりました!」

「イラ、残滅」

「そんな・・・・・・」

 キンを中心にして球状に兵装ビルと地面が削り取られていた。

 そしてキンは、ビルがなくなったその場所に、まだたたずんでいた。

「発射準備できました!」

「照準をキンに合わせて!」

「了解!」

 スコープがキンを真っ直ぐにとらえる。

「砕け散りな!」

 キンと同色の閃光が貫く。

 しかし、原型をとどめていた。

「そんな!」

「キンには確かに貫通しています!」

「一体、何が・・・!?」


 二型機は三人と離れた場所で互いの様子を見合っていた。

「・・・・・・」

 ゆっくりと回転する白色の八面体。

「・・・!!」

 リナが二型機に先を向ける前に、二型機はバク転を開始していた。

 ついさっきまでいた場所にリナが突き刺さっていく。

 バク転が終了すると、リナが目の前から消える。

 上空を見る。

「・・・・・・」

 大きく横に跳ぶと、立っていた場所にリナが突き刺さる。

 しかし、

「七・・・体目・・・・・・」

 リナの腹部より上の部分が真っ赤になり、下にも液体が垂れている。

 二型機はだらりと四肢を地面へとぶらさげた。

「二型機操縦者、心停止!」

「二型機、停止!」

 二型機の瞳の色が、消える。

「時野!」

 一型機が跳躍し、周りにいたリナを尾で薙ぎ払う。

 そして、二型機に刺さっていたリナを無理やり取り払う。

「時野!!」

 一型機が二型機を揺さぶるが、反応がない。

 白い体が真っ赤に毒々しく濡れていく。

「キン、移動を開始しました!」

「到着予測地点は・・・ここです!」

「地下移動エレベータを完全隔離閉鎖!

 全、対人人型防衛兵器の起動準備はじめて!」

「了解!」

「一型機は目標をキンに切り替え!

 三人とも、キンの本部衝突を絶対に避けるのよ!」

「「りょーかい!」」

「・・・・・・」

 志隆の答えがない。

「一型機!」

「・・・・・・」

「あなたは一型機操縦者よ!」

「・・・・・・」

「三型機、第二形態へと変体しました!」

 耐え切れず、美月が叫ぶ。

「志隆!」

「・・・・・・」

「い、一型機と二型機の融合がはじまりました!」

「何ですって!」

 二型機を支えている一型機の腕の境目がなくなり、灰色になって混じっていく。

「一型機のAST反応が、二型機と調和しています!」

「志隆!」

 リナが攻撃をしかける。

 一型機と二型機の背中に二型機の翼が生え、リナを蹴散らした。

「一型機、二型機、覚醒!」

 二型機の腹部に開いた穴が急速に修復されていく。

「二型機操縦者、心臓再起動!」

 リナが何とか起き上がる。

 一型機が尾で自らの翼をもぎ取り、先に装着する。

「キン、本部接触まであと300m!」

 襲ってくるリナを切り落としていく。

 最後のリナを切ると、

「リナ、消滅!」

 周辺の兵装ビルが少し吹き飛んだ。

「あああ・・・ああああああああっ!!」

「二型機、一型機との融合解除を開始!」

「二型機のAST反応が一型機からずれていきます!」

 一型機との融合を無理やり引き剥がすように、二型機が体を一型機との境目から引き剥がしていく。

「時野・・・!なんで・・・!!」

「・・・あなたと・・・は・・・まだ・・・だめなの・・・!」

「A−2地区のAST濃度が異常値です!」

「各局員、全員衝撃に備えて!」

 防時局が激しく揺れた。

 揺れが収まる。

 エレベーターの断面が少し見えていた。

「地上ビル、第一〜第三装甲完璧に損壊!」

「第四装甲も損壊大です!」

「キンが移動を開始しました!」

「次の一撃で・・・終わる・・・!」

 三型機がキンに全速力で近づいていく。

「A−1地区のAST濃度が異常値です!」

「二人とも、離れて!」

「「・・・・・・」」

 三型機の中心が四方に割れる。

 キンが三型機を見た瞬間。

 三型機がキンを食した。


「ぐふっ・・・がっ・・・あ・・・・・・」

 時野が廊下にうずくまり、彼らに腹部を中心的に蹴られている。

 神武里奈と神武累奈に。

「死ぬならまだしも、デギゥルとの融合をはじめるとは何事だ」

「お前をここに遣わせた理由がわかっているのか」

 二人はたまに同時に放ちながら、五歳の少女とは思えない速さで蹴っている。

「デギゥル・・・の・・・核・・・を・・・取り戻すこと・・・です」

 時野が痛さを我慢しながら何とか言う。

「わかっていながら、お前はなぜ神埼志隆などというものと無駄な交流を謀っている」

 蹴りが止まる。

「あれは人間である神崎志隆が勝手に――」

「言い訳を聞きたいわけではない」

 言葉には怒りを込めずに、蹴りに怒りを込める。

 時野の口から、再び血が飛び出す。

「ぐはっ!・・・・・・」

 里奈がしゃがみこむと、髪を掴んで無理やり顔を起こす。

 そして、首を右手で掴む。

「人間の状態であろうが、ジヴェルの状態であろうが、我々にお前を殺すことなど容易なことなのだぞ」

「・・・ん・・・ぐ・・・・・・」

 里奈の指が食い込んでいく。

「時野〜、どこだよ〜」

「「・・・ちっ・・・・・・」」

 里奈が右手を離し、床に時野の頭を叩きつける。

 そして、二人は近くの通路に逃げていった。

 志隆が時野を見つける。

「時野!」

 慌てて志隆が時野にかけよる。

「どうしたの!?何があったの!?」

 時野の口と口付近の床には赤いもの。

 首に絞められた跡。

 靴の跡が何個もついた服。

「・・・・・・」

「話してよ!お願いだから!」

「・・・・・・」

「話せない訳があったら話してよ!絶対に助けてあげるから!」

「志隆・・・・・・」

 時野がはじめて志隆の名前を呼ぶ。

「気をつけて・・・・・・」

「・・・?」

 その時、二人が来た。

「しりゅーしゃん?どうしたでしゅか?」

 二人が時野の元へと近づく。

「「ときにょにょおにぇーしゃん!!」」

 二人も時野のそばへとかけよる。

「だいじょーぶでしゅか!?」

「どうしたんでしゅか!?」

 そう言いながら、不敵に微笑む。

 もちろん、志隆からは見えない位置で。

「病室があるってことは、誰かしら医者っぽい人とかいるんだよね。

 時野」

 志隆が子供をおんぶするような格好になる。

「・・・・・・」

「お姫様だっこのほうがいいとは思わないよね!」

「・・・・・・」

 仕方なく、おぶさった。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 何もしないでただ元の学校にいる、三人がいた。

「・・・私達って、こんな三人だったっけ・・・?」

「・・・もっと、明るく話してたような気がするな」

「・・・なんでだろ」

 無理もない。

 彼らからすれば、いない存在の人なのだから。

 志隆は。

「いつもやってたはずのゲーセンも二人用のやつばっかりだし」

「余ってなかった、気はするんだけどな・・・・・・」

「やっぱり足りないのよ。今。誰かが」

 鈴木が急に大きな声で話す。

「誰の記憶にも無いのに?」

「だって私、幼稚園のころ一人しか友達がいなかった。

 それに記憶の中にはお互いに見合って話したりしてるはずなの。

 でも・・・その人を覚えていない」

「私も、一年ぐらい前に誰かと二人で帰った。

 確かに話し合ってるはずなのに、記憶の中に人がいない」

「そういえば昨日見つけたんだけどよ」

 携帯を取り出し、操作をはじめる。

「こいつ、知ってる?」

 神埼志隆という名とメールアドレスが書いてある。

「それって・・・・・・」

「もしかして・・・・・・」

 二人がほぼ同時に携帯を取り出し、操作をはじめる。

 そして二人の携帯に、同じ名前と同じメールアドレスが書いてあった。

「覚えて・・・ないんだよな」

 静かに二人が黙り込む。

「でも、これで名前は決まったよな。なぜか消えた人の名前も」

「探す・・・んだよね?」

「生徒だったんだから。

 私達の・・・何かだったんだから」


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