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第二十三話

 第二十三話 ―砂―


「・・・判強制だよね。これ」

「・・・そうだと思う」

 美月と志隆はいつものように指揮官室にいるが、志隆は机に向かい、目の前には紙が置いてあった。

 一番上には「エレクシエスト操縦者許可書」と書いてある。

「・・・記憶って、全員?」

「親も、家族も、友達も・・・よ」

「・・・みんなそういうことしてきたの?」

「局員であるにはそれしかない」

「・・・また会った時に悲しく・・・ないのかな」

「・・・・・・」

 志隆は朱印に人差し指を押し付けたままだった。

「おじさん、おばさん、小暮、鈴木、篠崎、

 お父さん、お母さん、お姉ちゃん・・・ごめん。

 僕・・・全部捨てることにするよ」


「順調すぎるほど順調ね」

 美月は横にある紙をちらりと見る。

「・・・・・・」

 そして再びパソコンをいじりはじめる。

「核シェルターに常駐自衛隊、兵装ビルは今までの十倍以上で最新機器。

 レールガンを六機も追加できるなんてね・・・・・・

 それに何より」

 一番下にある項目に美月の目が止まる。

「まさか今月中に全職員分の量産型が完成する予定・・・なんてね。

 しかも、二人の死生物指定は解除。

 挙句の果てに、一型機は志隆専用機。

 そして、三型機と神武姉妹の出現・・・・・・

 確実に何かある。

 新世紀がはじまる前に」


「・・・ふう」

 志隆は休憩室で紅茶を飲んでいた。

「あ・・・時野」

「・・・何?」

 時野はみかんをついばみながら志隆の少し横に座った。

「・・・好きなの?みかん」

「解放されてからはじめて食べたのもこれ」

「ふーん」

 志隆がみかんを食べる無表情な時野を見ている。

「ちょーだい」

「だめ。私の部屋にはあと294個しかない」

「・・・何箱分?」

「六箱。ちなみに愛媛みかん」

「・・・愛媛みかんの消費量の0.1%ぐらいは時野が担ってそうだね」

 時野がもう一つのみかんを取り出し、皮を卵のように剥いてみせた。

「・・・すごいね」

「一年に三千個食べる生活を三年続ければできるようになるわ」

「・・・遠慮しとくよ。

 ところで、僕・・・その・・・中に入ってみたんだけどさ」

「・・・・・・」

 時野はいつもどおり無言である。

「時野があの時言いたかったことが、なんとなくわかった気がしたよ」

「・・・そう」

 ・・・・・・

「・・・ちょーだい?」

「だめ」


 由佳里が若干神妙な顔つきでパソコンを眺めている。

 と、そこへ

「なーにやってるんですか?」

 由佳里が激しい痙攣と共に壊れるぐらいの勢いでパソコンの主電源を抜いた。

「・・・何も抜くことはないんじゃないですか?」

「・・・大丈夫だ。子供が見てはいけないものを見ていたわけじゃない」

「じゃあ、何を見てたんですか?」

「それは・・・・・・」

 由佳里が若干頬を赤くさせる。

「やっぱり・・・・・・」

「ち、違う!」

「大丈夫ですよ先輩。話しませんから」

「いや、ほ、本当に違うんだ。

 ただ・・・ただ、少し見てみたくなってな・・・・・・」

「・・・?」

 由佳里が一気に悲しそうな顔つきになる。

「ま、単純な話をしてしまえば、婚約者だった恋人の想い出だ」

「別れた・・・んですか?」

「・・・別れさせられた」

 今度は美月も悲しそうな表情になる。

「どちらかの両親とか・・・ですか?

 二人で駆け落ちすれば――」

「第五型死生物・・・チウだ」

「・・・!?」

 由佳里が細長いためいきをつく。

「お前が来る二年前の話だからな。

 知っているやつは、澪と・・・零がもしかしたら知っているかもしれないな。

 ま、三十路過ぎの馬鹿な女の話だよ」

「・・・ごめんなさい。私・・・・・・」

「いや、別にいい。

 それより、コンセントを入れてくれ」

「・・・はい」

 何回か無理やり抜いたことがあるのか、見るからに曲がっているコンセントをねじこんだ。

「一緒に見るか?汚い想い出ばかりだが」

「はい。お願いします」


「・・・あ、清輝」

「よう、レナ」

 レナは格納庫の物陰に隠れようとする。

「おいおい。お前がいい、って言ったときからずっとそれじゃねぇかよ。

 そろそろちゃんとしろよ。付き合ってんだしさ」

「ちょ、ちょっと!そんなこと大きな声で・・・・・・」

「・・・次の日に散々茶化されたのはレナのバカ声のせいなんだが」

「ご、ごめん・・・・・・」

 レナが少し顔を出した。

「それよりも、これ、知ってるか?」

 清輝が持っていた封筒を差し出す。

 レナが取りに来た。

「三型機操縦者報告書・・・ね。見たわ」

「例のガキ達だ。

 幼稚園に入っていないのは別にどうでもいいことだが、戸籍に載っているにも関わらず、親の存在がない」

「時々格納庫に様子を見に来ては、なぜかどの監視カメラからも判別できない位置と方向で何か言っているらしいし」

「ま、俺にとっちゃ、一型機に乗れなくなったのが最悪だったけどな」

 レナが報告書を返す。

「乗れなくなった?」

「一型機の装甲と機動部、操縦室が昨日完全に切除された」

「誰も乗れなくしたの?」

「志隆は乗れる。時野神子やガキ達と同じ方法でな」

「・・・・・・」

 清輝が後ろを向く。

 そこには三型機が物々しく立っていた。

「このただの壁が、レールガンさえも通さない鉄壁の壁とはねぇ・・・・・・」

「ぶちこんだ弾がそのままはね返って、銃口を貫通してビルを破壊。

 そんなこと、誰が思ったかしらね」

「・・・もしかしたら、お前が撃つことになるのか?ポジトロンライフルを」

「・・・・・・」

 レナが黙りこくる。

「もしそうなったら、その時は俺も一緒だ。

 AELがいつ来ても、お前とは最後まで一緒にいてやる」

「・・・清輝・・・・・・」

 レナが清輝にもたりかかりかける。

「な〜んて、俺が言うとでも思ったか?」

「・・・バーカ」


「「しりゅーしゃん!」」

「あ。累奈ちゃんに里奈ちゃん」

 志隆の部屋には、あの時以来、毎日来るようになっていた。

「いいよなぁ。僕もこんな妹がほしいよ」

「じゃあ『おにーちゃん』ってよびましゅか?」

「・・・それはだめ。踏み込んじゃうからだめ」

「「・・・?」」

 二人揃って、頭の上に「?」マークが浮かんでいるような風に、首を傾げた。

「・・・だめだ。要素の度合いが高すぎる。

 これでは私がおかしくなってしまう・・・・・・」

「しゃっきからおかしーでしゅよ?」

「まあ、いいんだよ。気にしないで。

 それより、何の用?」

「『くりしゅましゅ』のよてーって、ありましゅか?」

「・・・!?」

 志隆の頭の中に、あらゆる思考が走馬灯のように走る。

「・・・しりゅー・・・しゃん?」

「・・・ああ、ごめん。別に無いけど?」

「そうでしゅか。よかったでしゅ」

「じゃ、おーみしょかのよてーは?」

「大晦日?」

 少しへこみながら考え込む。

「N響の第九を聴くことぐらいかなぁ。もちろんテレビだけど。

 ところで、予定なんか聞いてどうするの?」

「べつににゃんでもにゃいでしゅ」

「しょーいえば、『びでお』かりにきたんでしゅ」

「ああ。わかったよ」

 そそくさとビデオデッキの扉を開けると、デッキの中からカセットを取り出す。

「はい、これ。十八話でよかったんだよね?」

「しょーでしゅ」

「ここらへんからちょっとわかりづらい展開になってくるかなぁ。

 がんばってね」

「ありがとーございまーしゅ」

 慌しく走っていった。

「本気で欲しいわぁ、あんな妹」


「しっかし最近、猛烈にここのロリコン人口が上がってきてないか?」

「そうかな?」

 二人はなぜか将棋を指していた。

「元からチビのせいでそれなりにいたことにはいたが、ガキ達のせいでさらに増加しやがった。

 いくら犯罪しても許される局員だからって、そういうことはよしてほしいぜ、っと」

「・・・・・・

 まあ実際、三人を見て妹に欲しくならない人は、人じゃないって言っても過言じゃないからねっ!」

「・・・・・・

 それは言い過ぎじゃないのか?」

「だって、あのかわいさと体格と性格だよ?」

「まあなぁ・・・・・・」

 清輝の指す手が止まる。

「女だったら、そういうことをほとんど躊躇なく言えるんだが・・・・・・」

「性の壁はきびし〜よ〜」

「王手」

 志隆の表情が変わる。

「いや、そこは待ったで――」

「もともと、待ったなし、って言ったのは志隆だぞ?」

「二度あることは三度ある――」

「仏の顔も三度まで、だ」

「・・・参りました」

 と言うと、駒をそそくさと片付け始める。

「で、言うことをきく、だったな?」

「は、初めてだから、や、やさしく――」

「バカ言え。

 でもなぁ、どうせなら、ある意味それより恥辱的なことをやりたいような気もするが・・・・・・」

「そういうことは・・・冗談で済ませて・・・ね?」

 清輝が少し考え込む。

「よしっ!

 ここは、保留ということで。

 使いたい時に使わせてもらう」

「・・・拷問より酷いや・・・・・・」


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