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第十七話

 第十七話 ―狐―


「ほ、ほんとに来ちゃったよ・・・・・・」

「常夏の楽園、ハワイへようこそ〜」

 同じ北半球とは思えない季節の風景がそこに広がっていた。

「っていうか、ほんとに、ここ、地球なの?」

「当たり前じゃな〜い」

「で、ほんとにかりんさんと二人きり?」

「かりんさんだなんて〜、呼び捨てでいいのよ〜?」

 志隆ががっくりと肩を落とす。

「ごめん。生きて帰れないかもしれないよ」

「何も殺すまではしないわよ〜?」

「いいえ。その行為自体が人を精神的に殺すんです」

 今度はかりんがため息をつく。

「さ、行きましょうか?」

「え、え?」

 いつもの調子とは明らかに違う、かりんがいた。


「さてと、ホテルに到着〜!

 で、どこ行く?海?観光?買い物?」

「あ、あのさ・・・・・・」

 志隆が不安気に尋ねる。

「あ、ああ。そりゃ驚いても仕方ないわよね。

 私、本当はこういうキャラなの」

「いつもそれなら別にいいのに」

「今回は特別。

 それと場所とかでキャラ変えるのは私の特性・・・みたいなものかな。

 もしかしたら、反動で戻ったときにもっとすごいことになっちゃうかもね」

「・・・それは、それで困るね」

 このような口調に変わると、彼女もただのエロ女では無いことがよくわかる。

 もともと、美人でかわいいことに変わりは無いのだ。

「で、どこ?」

「う〜ん・・・どこか行きたい?」

「海か買い物!」

「じゃ、買い物で」

「じゃ、レッツショッピング!」


「うーん・・・これって・・・一緒に買い物してるのかなぁ?」

「荷物持ち荷物持ち!」

 両手にはぎりぎり掴みきれるか掴みきれないかわからないほどの袋の紐が引っかかっていた。

「そういえば、このお金ってどこから出てるの?

 さっきからずっとキャッシュだけど」

「国」

「・・・年金の無駄遣いってやつだね・・・・・・」

 かりんはまだショーウインドウを見てまわっている。

「大丈夫よ。どうせ予算は何百兆とあるんだから。

 一円玉が一億枚ある中から一枚取ったって誰も気づかないわよ」

「・・・そりゃそうだけどさ・・・・・・

 って、百万円も使う気なの?」

「もっちろん。

 あ、これ英子に・・・・・・」

 二人の動きが止まる。

 と同時に、二人が持っているものが地面に散らばる。

「「・・・え?」」

 志隆は散らばった袋を戻そうともしなかった。

「「覚えてるの?」」

 次々と言葉が溢れ出す。

「背中についてる青髪で」

「めがねをかけていて」

「十七歳で」

「女子で」

「エレクシエストパイロットで」

「防時局局員で」

「最後に」

「「水族館に行く約束をした人」」

 かりんが志隆へと飛び込んでくる。

「覚えてて・・・くれたんだ・・・・・・」

「覚えてたよ・・・ずっと・・・・・・」

「みんな忘れてて・・・・・・」

「誰も覚えてないと思ってた・・・・・・」

 第九番。

「もしもし」

「第二十二型死生物、モラがハワイ上空四十三kmに出現よ。

 残り三分十五秒で衝突するわ。

 ・・・誰か近くで泣いてるの?」

「かりん・・・だよ」

「・・・そう」

 無言で電話が切られると共に一型機と二型機が出現する。

 二型機が志隆に向かって手を差し伸べる。

「・・・行くよ」

「・・・死なないで」

「時野がいるから・・・大丈夫」

 手に乗ると操縦室へと手が向けられる。

 乗り込むと共に、二型機も立ち上がる。

「もう見てると思うけど、今回からは二型機も戦闘に加わるわ。

 その代わりにレオムは投下しないことにしたから」

「わかった。

 何か打ち返せそうなやつ頂戴!」

「ι、投下!」

 ビルほどもあるハンマーが投下される。

 下では大勢の旅行客がカメラのシャッターをしきりに押していた。

「敵衝突ルート変更!東へ約二kmずれました!」

「衝突まで残り三十秒!」

 二機が同時に走り出す。

「二型機でも間に合うかどうか・・・・・・」

「ハワイをただの海底火山には変えたくないわ。

 リミッター強制解除!」

「一型機リミッター、強制解除しました!」

 二機がほぼ同じ速度で走っていく。

「北へ約一kmずれました!」

「衝突まで残り十五秒!」

 一型機が方向を変えるが、二型機はその場でしゃがみこむ。

「何をしているの!」

「・・・・・・」

 地面を蹴った反動で上空へと飛び出すと、まるで飛んでいるようにモラに向かっていく。

 すでに肉眼で何かがあるのがわかる位置にあった。

「ジルが・・・飛んでる!!」

 二型機が両手を構える。

 モラと垂直に重なったとき、

 二型機の両手と反対方向にモラが水平にホテル街を貫通していった。

 一型機がようやく到着すると、レバーを戻し、リミッターを設定し直した。

 二型機は自分の腕を取りに走っていた。

「時野、大・・・丈夫?」

「・・・痛くは無い」

 右腕の肩の部分と右肩を倒れこむようにしてつけるとそのまま何も無かったかのように接合した。

 間接のおかしな部分を強制的に直すと、今度は左腕を左肩につける。

「・・・・・・」

「・・・私よりも二十二型に注意して」

 モラが瓦礫の中から姿を表すと、その小さな球体の中から無数の帯状の触手が生えた。

 触手によって二機までの間にある瓦礫を一撃で粉砕すると、そのままゆっくりと近づいてくる。

「私が足止めをするから、攻撃をして」

「・・・わかった!」

 急激にスピードが上がると一気に一型機を包み込もうとする。

 そこの間へ二型機が仁王立ちすると全ての触手があらゆる部位にまきつく。

 それを何とか解放されている右手でまとめる。

「・・・早く」

 一気に四脚で跳躍するとιを振りかざす。

 ιが柄から真っ二つに折れ、モラの本体にヒビが入った。

 柄をその場に放り出す。

「κより少しでかいやつ!」

「ψ、投下!」

 一型機にとっては手ごろな手斧が出現する。

「やぁぁぁぁあああああ!!」

 一型機がψを振りかざす。

「モラ、消滅!」


「いつ頃・・・わかったの?」

「次の日。

 茜に『どうして泣いてるの?』って言われた瞬間」

「茜?」

「ああ・・・オペレーターの人。

 何もわかるわけないのにビンタで返したから、しばらくは話せないと思うけど。

 それより・・・・・・」

 かりんが耐え切れなくなったように志隆へと抱きつくと、誘惑するような目で志隆を愛しそうに見つめる。

 しかし、志隆はそのままかりんがつい先ほどまでいた場所を見つめている。

「ねぇ・・・私と――」

「体で埋めるのは簡単だけど、そんなの自虐行為だよ」

 かりんが今、汚そうとしていた唇をゆっくりと離していく。

 そして、志隆から目を離す。

「ごめん・・・・・・

 こうでもしないと、潰れそうで・・・・・・」

「逃げちゃ駄目だよ。

 見つめないと・・・何にもならないよ」

「・・・優しすぎるよ。

 突き放したほうが、まだ楽なのに。

 受け入れてくれたほうが・・・まだ楽なのに」


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