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第十四話

 第十四話 ―蝋―


「レオム格納ユニット装着完了!」

「エレクシエスト、投下!」


 志隆の携帯電話の着信「交響曲第9番」が鳴る。

「どうすればいいの?」

「とりあえずそこにじっとして。もうすぐ行くから」

 突如、上空からエレクシエストが出現した。

「ワイヤーおろすから待ってて」

 素早くおりてきたワイヤーの三角の部分に足をかけ、ゆっくりとのぼっていく。

「時野・・・・・・」

 そうつぶやかずにはいられなかった。

「同じ思いはしたくない」

 志隆は起動レバーをあげた。

 筒の中が周りの風景と同化する。

「ユニット解除!」

 エレクシエストの背中についていた箱が外れ、中からレオムが出てきた。

「レオムはエレクシエストの援護にまわって!」

「了解!

 よろしくね!志隆!」

「うん!」

 ジルが静かに山のふもとへと降り立つ。

 両手を軽く広げると、二本の爪がさらにするどく伸びた。

「剣!何でもいいから剣ちょうだい!」

「α、投下!」

 まさしく剣らしい剣が投下され、地面へと突き刺さる。

 それを抜き取ると静かに両手で構える。

「近接戦闘用武器、装備!」

 レオムが背中の箱のようなものに両腕をつけると取っ手が飛び出し、腕を覆うほどの剣が飛び出した。

 刃にレーザーがまとわれる。

「ジル!行動開始!」

 ジルが大股で駆ける。

「は、速い!」

 振り下ろした爪が剣の反動を受けて双方が仰け反る。

 すかさずレオムが胸へと剣を突き立てる。

「さっさと死になさいよぉおおお!!」

「だめだよ!時野が!!」

 ジルはレオムの頭を掴んで引き剥がし、そのまま握りつぶした。

「レオム頭部完璧に損壊!戦闘不能!」

「・・・このポンコツ!」

 レナがモニターを蹴り上げた。

「・・・くっ!・・・・・・」

 エレクシエストの足が地面を掘り下げていく。

「・・・あっ!」

 ジルが翼を使ってジャンプし、エレクシエストの右手を横に蹴る。

 αが無造作に転がっていった。

 エレクシエストの目の前に立つと左腕を振り上げる。

「うわぁぁあああ!」

 思わず操縦部から抜き出してしまった手が何かのスイッチに当たる。

「四次元フィールド簡易発生装置、起動」

「志隆が!?」

 ジルの左腕はあるはずの空間に届かずにどこかへと突き抜けた。

「切って!」

「四次元フィールド簡易発生装置、強制終了」

 空間で分断されたジルの左腕が血も出ずに切れた。

 異様な光景に唖然とする。

「今だ!」

 エレクシエストはジルの腹に手を突っ込んだ。

「時野・・・いて!」

 何かを掴み取るように手を引き戻す。

 ジルの目が青へと変わっていく。

 手の中の真っ黒な肉片の中に人の手が見えた。

「・・・よかった・・・・・・」

「ジル、停止」


「・・・意味も無く、私はまた戻ってきてしまった」

 廊下を駆ける誰かの足音が聞こえる。

「時野!」

 病室の扉を開けて志隆が入ってきた。

「・・・よかった・・・・・・」

 そのまま端にある時野のベッドまで近づいてくる。

「あなたがいいと思ったことが、私にもいいとは限らないわ」

「・・・よくなかったの?」

 わざと目を逸らす。

「ある意味、死ぬよりもつらいこと」

「中に入ったままなら死ぬんじゃないの?」

「永遠に生かされる。何があろうとも」

 志隆が軽い疑問を持つ。

「永遠に生きてられるんなら、幸せじゃん」

「閉鎖的空間の中で何もせずに苦楽を感じないで生活することなんて、死ぬよりひどいわ」

「・・・確かに」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 ・・・・・・

「あなたの言うとおり、まずはあなたから仲良くしようと思うわ」

「そ、それはよかったね」


 四人はホームルームの前のわずかな時間を楽しんでいた。

「そういえば昨日、仙台に旅行行ってたんだ」

「へ〜。お土産は?」

「無い」

 志隆が無表情で即答した。

「っていうか、お土産って旅話とかいろいろ話した後に『そうそう、そこでこれ買ってきたんだ』っていうつながりで出すもんでしょ?」

「「マニアすぎ」」

「ちょっと待て。お前、一人暮らしのくせに旅行行ってんのか?」

 危うい。

「いや、それは・・・その・・・・・・」

「はは〜ん」

 鈴木が一人合点する。

「もしかして志隆、一人暮らしとか言っといてちゃっかり同棲してたりするんでしょ?」

「え、え?そ、そんなこと・・・・・・」

「慌てているところがますます怪しい。

 旅行、二人でしょ」

「い、一応・・・・・・」

 別な意味で危ない。

「Aまで?Bまで?それともCまで?」

「え、えっ?ちょ、ちょっと話が・・・・・・」

「くそ〜、まさか志隆に先越されるとは思わなかったぜ。

 そろそろド真ん中に勝負かけてみるとするかな」

「ド真ん中なんていたの!?」

 話が煮えたぎらないままチャイムが鳴った。

 きっかりに担任が入ってくる。

「今日は転校生がこのクラスに入ってきたらしいので紹介しようと思いま・・・いない。

 ちょっと探してきます」

 扉が閉まると同時に全員の口が開く。

「転校生?二学期も終わるのに・・・・・・」

「いわいる謎の転校生ってやつだな」

「ジャムパンくわえて遅刻してくればよかった・・・・・・」

「それは転校生側だろうが。しかも女だとは限らないぞ?」

 扉が開くと同時に全員の口が閉じる。

「えー、では自己紹介と黒板に名前をお願いします」

「・・・時野神子です」

 なんとか聞き取れるぐらいの小さな声で彼女は言った。

「・・・それだけか?」

「・・・趣味などもありませんから」

「じゃ、じゃあ、空いてる席は・・・小暮の隣か」

 静かに志隆の左斜め後ろの席に座った。

「・・・付き合ってる人とかいる?」

「いないわ」

「じゃあ俺と――」

「却下」

 小暮の表情は見なくてもわかった。


「・・・ん」

 志隆が肩を叩かれて起こされる。

「と、時野!?」

「別におかしいことじゃないわ。クラスメイトだもの」

「そうか・・・クラスメイト・・・・・・」

 志隆の頭が一気に覚醒する。

「クラスメイト!?」

「・・・朝からずっと寝てたのね」

 志隆が時計を見る。

「どおりで腹が・・・・・・」

「食べる?」

 購買のジャムパンを差し出す。

「いただきますっ!」

 勢いよく取り上げると一気に口に押し込んだ。

「・・・分離時に思考が多く取られたのね。感情はそんなに取られたわけではなさそうだけど」

「ふぁにかいっふぁ?」

「・・・飲み込んでから話してくれる」

 志隆が無理やり飲み込む。

 が、予想通りつまる。

 時野が両手で握りこぶしを作り、背中を思い切り叩く。

 吹き飛びかけた体勢をなんとか戻す。

「そんなに強くやらなくても・・・・・・」

「あれくらいで起きなかったから、これぐらいがちょうどいいと思って」

「・・・つまり、これは痛くないはず、と?」

「そういうこと」

 志隆が感慨ぶかげに目を細めた。

「ところで、何で学校になんて?」

「まずはあなたから仲良くしようと思ったから」

「それはそうだけど、別に学校に来る意味あるの?」

「友情は時間をかけて作り上げられるものらしいから、出来るだけあなたと長くいようと自分なりに努力しただけ。

 本当は二十四時間いたほうがいいと思ったけど、それではあなたのプライバシーが無くなってしまうから」

「・・・懸命な選択だね」

 教室の蛍光灯にあかとんぼがとまっていた。

「ところで、ここの学校は馬鹿しかいないの?」

「僕と小暮以外はいなさそうだけど。どっちもペケかブービーだし」

「今日一日で愛の告白らしきものと手紙が何十通と入っているんだけど」

「まあ・・・当たり前だよ。うん」

「恋人なんて作る必要無いのに。時間とお金が無駄になるだけ」

 もっとも、といえばもっともな意見である。

「・・・もしかして彼氏いない暦=年齢?」

「そうよ」

「まあ、これで潔癖じゃなかったら・・・ねぇ・・・・・・」

 時野がカバンを持ち上げる。

「そういえば、あの三人は?」

「作戦会議、とか言ってあなたを残して帰っていったわ」

「・・・ははは」

 事態を把握したようだ。

「だったら、一緒に帰ろうよ。時野」

「・・・・・・」


「十六型に続く二十型の停止・・・か」

「ほどほどにしてもらいたいものですなぁ」

 防衛庁内。

「しかし、今回の停止は前回とは違い、我々に有益になるものだったと思います」

「・・・どういうことだね?滝綱君」

「前回のルエの停止ではエレクシエスト・・・いえ、デルが核を自らの体内に取り込んだため腐敗が進み、現在では一欠けらも残っておりません。

 ですが、今回のジルの停止では腐敗ははじまっておらず、エレクシエストと同じ脳波も検出されます」

「・・・ということは――」

「ジルをエレクシエスト二型機とし、同時にエレクシエストをエレクシエスト一型機と改めます」

 どよめきが起こる。

「君はあんなものを二匹も日本に置いておく気かね!?」

「現時点において、死生物は強さを増していく一方です。

 単体での攻撃も無くなるかもしれません」

「その前に一つ、聞いておきたいことがあるのだが」

 発言と共にどよめきがおさまる。

「何でしょうか」

「エレクシエスト内に操縦室を作る際に、前回は約一年かかったそうじゃないか。

 その前に・・・あくまでも私の仮説だが・・・最後の死生物がきたらどうするつもりかね?」

「・・・それは・・・・・・」

「改造の意味は無くなり、その前に防時局などの施設内で覚醒したら、デルどころか時間制御装置までもが壊されてしまう。

 そうなれば防時局の一番の意味が無くなってしまうではないか」

「・・・・・・」

 美月はただ押し黙っている。

「時間制御装置関連でいくと、作動者が中に取り込まれ、重要参考人によって助けられたそうじゃないか。

 なぜ、十九型に取り込まれたパイロットは助けられなかったのだ?」

「・・・・・・」

「このままだと作動者まで重要参考人になってしまうかもな」

「・・・・・・」

 防衛庁長官がまとめだす。

「ジルは今のところは防時局内で管理、保管しておけ。

 各名称は二型機が完成した後に話し合うこととしよう。

 それと、時野神子を重要参考人とする」

「・・・わかりました」


「この中に時野が・・・か・・・・・・」

 すでにジルの傷は消え、左腕は元通りになっていた。

「どうしたの〜?」

 反射的に身構える。

「大丈夫。私も一緒だから」

「・・・よかった・・・・・・」

 そのまま姿勢を元に戻す。

 二人が志隆を挟むようにして同じようにする。

「ところで、どうやって助け出したの?」

「手で掴んで・・・こう・・・がっ、と」

 志隆がエレクシエストの真似をする。

「そうじゃなくて〜、どうやって貫いたか、っていうことでしょ〜?」

「そう」

「どうやって貫いたか、って、だからそれは――」

 志隆がまた真似をしようとするのをレナが止めた。

「エレクシエストがリミッターブレイク無しで死生物の体を貫くなんて、到底考えられないわ。

 リミッターブレイク有りでも難しいかもしれないのに」

「え!?そんなに!?」

「だから〜、どうやって掴んだのかが不思議で〜、ちょうど探してたところだったのよ〜」

 志隆が深く考え込み始める。

「変なボタンとか触っちゃったからかなぁ?でも、別にそういうのじゃなかったからなぁ・・・・・・

 でも怪しいし・・・・・・」

「四次元フィールド簡易発生装置のこと?」

「何それ」

 思ってもみない答えが返ってきた。

「ま、無理も無いわね。やっぱり偶然だったのかぁ〜。

 四次元ゲートを搭乗者側からもっとも簡単に展開するための装置のこと。

 六年前から開発されてて、つい最近完成したばっかりなの。

 本当は死生物のAST粒子砲を防ぐために作られたんだけど、志隆みたいな使い方は誰も考えなかったみたいね」

「ふーん。

 そういえば、なんで四次元『ゲート』簡易発生装置じゃなくて四次元『フィールド』簡易発生装置なの?」

「ただ開発者がそっちのほうがよかっただけなんじゃないの?

 ちなみに開発者は私の先輩のオペレーターなんだけどね」

「へ〜」

 志隆がジルを見ながら答える。

「・・・正直、どうでもいいと思ってるでしょ」

「お、思ってないよ!」

「図星ね〜」

 レナが手だけで手すりにつかまり、足をぶらぶらさせる。

「・・・決めた!」

「何が?」

「来週、蔵王に行くことにしたわ。もちろん、上級者コースで」

「な、なんだってええぇぇぇぇぇええ!!」


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