ダ・カーポ
私はオーブというものの中から生まれたとき、親がいなかった。それはどうしてなのかはわからないけれど私が転生したからなのだと漠然と感じていた。前世のことは知識がある程度で思い出も何もないので本当なのかはイマイチわからない。
覚えていないものは仕方ないですし、そんなに重要でないようなので執着してないですけれど。
只今、マテウスさんにだっこされながら移動です。歩けますが、私の足では遅いのでマテウスさんに追いつけません。
「まてうしゅさん」
「なんだい、フロイデ。」
「ここがまてうしゅさんのおうち?」
「そう、そして君の帰る家でもあるんだ。…ようこそ、そしておかえり、フロイデ。」
やさしく私の髪を撫でてくれるのは保護者兼婚約者だというマテウスさん。700歳の魔族さんで私も魔族なのだとか。人間でいうところの14歳くらいの見た目で魔族は50年=1歳だと考えていいようだ。
彼の見た目は金髪に褐色の肌、緋色の目という古代から続く貴族さんの特徴を受け継いでいるのだとか。ちなみに彼には角はありますが私のように翼はないようです。まあ、見た目14歳の少年が自分の家を持っていて自分の職を持っているというのも前の世界ではおかしい話ですけれどこの世界の魔族は500で成人ですし。見た目10歳で成人とは、さすが長寿。
「あい、ただいまです。まてうしゅさんもおかえりなしゃい。」
「うん、ただいま。」
にっこりと笑うマテウスさんにほにゃっと笑い返しながらこれからの生活にわくわくしたのでした。